概要
大阪府と和歌山県を結ぶ鉄道路線。現在全線をJR西日本が保有・運営している。
路線カラーはオレンジ、路線記号はR。ただしJR西日本の路線カラーの常として、この路線にも現在オレンジ色の列車は1本も走っていない。
天王寺駅~和歌山駅間(61.3km)の本線と、鳳駅~東羽衣駅間の支線(1.7km、通称「羽衣線」)があり、本線は大阪環状線や関西空港線・紀勢本線(きのくに線)との直通列車も多く設定されている。一方、羽衣線は専用の103系3両編成が終日往復し続けるダイヤとなっている。
南海本線(南海電気鉄道)への対抗として建設された経緯から、完成以来ほぼ全線に渡って競合関係にある。そのため多数の優等列車を設定するなどしてスピード勝負を繰り広げてきたが、その後の発展は大阪市・堺市を中心とした短距離の通勤・通学移動が牽引しているという、ある種のジレンマを抱えた路線でもある。
東海道・山陽本線でイメージリーダー的存在となっている「新快速」が、阪和線では定着せずに終わったという過去はその一例で、「高速列車を作ってはニーズに合わず、廃止や停車駅増加で有名無実化」という事を定期的に繰り返してきた。
現存する多数の快速列車も、減速方向で分化させていった結果という趣が強く、スピードアップは21世紀に入ったあたりからほぼ放棄した状態となっている。近年は有料の特急列車すら例外ではなくなってきた。
代わって元国鉄ならではのネットワークを活かした、広域の直通運転でサービスに差を付ける取り組みを強化しているが、これもスルッとKANSAIの横の繋がりによる他社連絡切符等で対抗されており、(こちらが後発なので因果応報と言えば因果応報なのだが)決して安定した環境にはない。
複雑な運転形態と列車の飽和によって、トラブルが発生した際にはその復旧が特に困難な路線となってしまってもおり、「ドジ路線」「また阪和線か!」という不名誉な合言葉さえ存在している。
こうした背景から、運行車両も個性的なものとなっているが、それ自体が複雑化の一因となってきた側面も強い。その詳細も先方記事を参照のこと。
現在運行されている列車
- 特急「くろしお」(環状線~きのくに線直通)
- 特急「はるか」(環状線~空港線直通)
- 快速(無印):主に線内完結かつ、全線を快速運転するもの。
- B快速:熊取駅以南に各駅停車するもの。名称としても本数としてもかなりレア。
- 区間快速:鳳駅以南に各駅停車するもの。天王寺駅~日根野駅間の運転が多い。
- 関空快速(環状線~空港線直通)+紀州路快速(環状線~和歌山駅):日根野駅以北では基本的に両列車を連結して運行する。
- 直通快速:関空・紀州路快速のうち、環状線内を各駅停車するもの。上りのみ存在し、下りは通常の関空・紀州路快速として帰ってくる。
- 普通:各駅停車。
駅一覧
本線
駅ナンバー | 駅名 | 区間快速 | B快速 | 関空快速 | 紀州路快速 | 直通快速 | 快速 | 接続路線 | 備考 |
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JR-R20 | 天王寺 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
JR-R21 | 美章園 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R22 | 南田辺 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R23 | 鶴ケ丘 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R24 | 長居 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | 大阪市営地下鉄御堂筋線 | |
JR-R25 | 我孫子町 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R26 | 杉本町 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R27 | 浅香 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R28 | 堺市 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
JR-R29 | 三国ケ丘 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | 南海高野線 | |
JR-R30 | 百舌鳥 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R31 | 上野芝 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R32 | 津久野 | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R33 | 鳳 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | 羽衣線 | |
JR-R34 | 富木 | ● | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R35 | 北信太 | ● | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R36 | 信太山 | ● | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R37 | 和泉府中 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
JR-R38 | 久米田 | ● | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R39 | 下松 | ● | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R40 | 東岸和田 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
JR-R41 | 東貝塚 | ● | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R42 | 和泉橋本 | ● | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R43 | 東佐野 | ● | ㇾ | ㇾ | ㇾ | ↑ | ㇾ | ||
JR-R44 | 熊取 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | ||
JR-R45 | 日根野 | ● | ● | ● | ● | ● | ● | 関西空港線 | |
JR-R46 | 長滝 | ● | ● | ○ | ↑ | ㇾ | |||
JR-R47 | 新家 | ● | ● | ○ | ↑ | ㇾ | |||
JR-R48 | 和泉砂川 | ● | ● | ● | ● | ● | |||
JR-R49 | 和泉鳥取 | ● | ● | ○ | ↑ | ㇾ | |||
JR-R50 | 山中渓 | ● | ● | ○ | ↑ | ㇾ | |||
JR-R51 | 紀伊 | ● | ● | ● | ● | ● | |||
JR-R52 | 六十谷 | ● | ● | ● | ● | ● | |||
JR-R53 | 紀伊中ノ島 | ● | ● | ○ | ↑ | ㇾ | |||
JR-R54 | 和歌山 | ● | ● | ● | ● | ● |
※:●=停車、○=一部を除き停車、ㇾ=通過、↑=矢印の方向にのみ通過。
羽衣線
沿革
元々は1929年から1930年にかけて阪和電気鉄道という私鉄が建設した路線であった。天王寺駅の阪和線ホームが環状線や関西本線(大和路線)から離れた所で行き止まりになっているのはこの名残りである。
先述の通り、南海への対抗からかなりの高速路線として開業しており、既存のどの特急よりも速い「超特急」や現在の「くろしお」のルーツとなる「黑潮號」の運行はもはや伝説の域となっている。
しかし、そのためのコストもまた桁外れなものであり、阪和間での競争自体、当時の都市規模からすれば供給過剰もいいところであった事から経営は芳しくなく、1940年には南海に吸収合併されて同社の「山手線」となってしまう。
その後も太平洋戦争の勃発によって国単位での経済状態の悪化が続き、交通網の統制を強めたい国の思惑もあって、1944年に南海からの分離・国有化が行われる。
敗戦によって戦時体制が終了すると、阪和線の帰属を巡って阪和電鉄の旧経営陣および南海との間で三つ巴の争いが繰り広げられたが、国が手放す事はついに無く、「国鉄阪和線」として運営を継続した。
一方で、料金不要の特急・急行列車が1950年代後半まで(その後は他線に合わせて快速系に再編)、阪和電鉄からの継承車両が 1960年代後半まで(同世代の国鉄純正車よりは早い処分であったが、この手の車両としてはかなりの長寿)走行するなど、私鉄色も随所に残存した。
純正車が投入されて以降も、度々塗装を独自色にするなど国鉄全体の流れから逸脱する場面が見られた。元々中央からの独立志向が強いと言われた関西圏であったが、その中でも特に異質な存在として地位を確立したようである。なお、この中の1色がオレンジ色であった。
1987年には国鉄の民営化に伴い、全線をJR西日本が承継する。
JR西日本は環状線への連絡線の新設と特急「くろしお」のハイグレード化を始め、1989年より東海道本線に抜けて京都駅まで延長運転する「スーパーくろしお」を新設した。
反面、それ以外の列車への対応は他線に比べて遅れ気味で、空港線が開業する1994年まで大きな変化が無いまま推移した。それも同年に新設したのは関空快速(と特急「はるか」)のみであり、和歌山方面の輸送改善は紀州路快速の運行が始まる1999年までずれ込む事になる。
特急列車としてはその間の1996年に、「スーパーくろしお」の更なる上位互換的な存在として「オーシャンアロー」を新設している。余談だが、阪和電鉄が遺した速達記録を更新したのはこの年だったりする。
その他、いわゆる通勤ライナーである「はんわライナー」や観光用の客車列車「きのくにシーサイド」といった列車を走らせた事もあったが、いずれも定着しなかった。貨物列車の運行も無くなり、それ用に杉本町駅から分岐していた貨物線(扱いは大和路線の支線)が廃線となっている。
2008年以降は従来関空・紀州路快速に集中的に用いていた223系を大量増備して、それ以外の系統にも積極的に投入するようになる。また、南海への対抗のために行っていた大和路線JR難波駅への乗り入れを中止するなど、運行体系の単純化にも取り組み始める。
この傾向はモデルチェンジした225系でさらに加速し、2011年には区間快速の増発と紀州路快速の熊取以南各駅停車化によって、鳳以南における日中の普通列車を廃止。体質改善の遅れていた普通列車を、快速系車両で強引に置き換え始めた。同時に快速系の減速傾向が顕著になる。
翌2012年には「くろしお」の車両取替を開始。従来カーブの高速通過用に取り付けていた「振り子装置」を省略した車両が投入されているが、最高速度や走行性能の向上及び低重心化によるカーブの通過速度の確保(但し対381系比で概ね10km/h減)により、所要時間の増加はきのくに線を含めた全区間通しで見ても5~10分程度の誤差に収まっており、新車となったことで概ね好評を得ている。その一方でオーシャンアロー車両の所要時間が年々遅くなっており、天王寺駅~新宮駅間のそれぞれの最速列車の所要時間がオーシャンアロー車=3時間47分、非振り子車=3時間48分と僅か1分差に過ぎず、将来の振り子式車両全廃を匂わすダイヤ編成となっている。
同時に「スーパーくろしお」「オーシャンアロー」の愛称を使用中止。車両自体はしばらく残存するが、観光路線・ハイグレード路線からの脱却も鮮明にする。
そして 2016年、普通列車用として225系を直接投入し、残存する旧型車を全廃する方針を決定。完了の暁には快速・普通系が223系と225系の2形式に揃えられ(早朝深夜の113系を除く)、両者は混用も可能である事からトラブルからの回復がかなり早まるものと期待されている。運行面でも予備車の大幅削減が可能となり、103系・205系時代と比べて20両以上配置車両が削減される。
なお、「普通列車でも快速仕様の車両に乗れてお得」と思われるかもしれないが、置き換え前と同じ両数で運転される場合、座席数が減って座りにくくなるので、サービス面での過度な期待は禁物である。
関連イラスト
関連タグ
JR西日本 紀勢本線 関西空港線 大阪環状線 関西本線(大和路線)
223系(0・2500番台) 225系(5000・5100番台):関空快速+紀州路快速他