概要
ナス科ナス属の多年草。デンプンを蓄えた地下茎(芋)を食用とする。デンプンの採取や酒造にも用いられる。またの名を「馬鈴薯(ばれいしょ)」。
ジャガイモの芽にはソラニンなどのアルカロイド類が含まれるが、品種改良により毒性は弱められた。
現在では小麦、米、トウモロコシと共に「 世界四大作物 」の一角を占め、アイルランド、イギリス、ベルギー、中欧、北欧などでは主食として扱われている。寒さに強く、比較的長期の保存も利くため方々で重宝され、世界史にも影響を与えた。
普及
南アメリカ大陸のアンデス山脈原産で、インカ帝国では農作物として広く栽培されたが、当初は野生に近く毒性の強いものだったため、毒抜きし乾燥させた「チーニョ」を保存食として利用していた。
16世紀、インカ帝国を征服したスペイン人によりヨーロッパにもたらされ、花を観賞するために植えられていたが、気候が厳しく土地の痩せたアイルランドでは17世紀に農作物として普及した。
三十年戦争(1618~48年)で荒廃したドイツでも栽培が奨励され、プロイセン王国のフリードリヒ2世(フリードリヒ大王)は家畜の餌とされていたジャガイモを自ら食し、普及に努めた。
フランスの農学者アントワーヌ=オーギュスタン・パルマンティエは、七年戦争(1754~63年)でプロイセン軍の捕虜となり、そこで与えられた食事にジャガイモが出た経験から、帰国後はジャガイモの栽培と普及に努めた。
貴重な作物であるというイメージを植え付けるため、畑に見張りを立てた上で、夜に農民がジャガイモを盗みにくるのをあえて無視させたという。また、著名人を招いた晩餐会にジャガイモ料理を供し、王妃マリー・アントワネットにジャガイモの花束を贈るなど広報活動に努めた。
日本へは17世紀頃、オランダ商人により持ち込まれ、ジャカトラ(現在のジャカルタ)を経由して伝来したため、「ジャガタライモ」と呼ばれ、次第に「ジャガイモ」となった。江戸時代後期には北海道や東北地方などの冷涼地で栽培が広がり、アイヌの食文化にも取り入れられた。
明治維新以降、外国から優秀な品種が移入した。日本の過半のジャガイモは北海道で生産されているが、長崎県も主要な産地として名が挙がる。
主な品種
男爵 : アイリッシュ・コブラー種の日本名。普及に努めた川田龍吉男爵に因む。
メークイン : 細長い形状で肉質が固くねっとりして、煮物に多く利用される。
キタアカリ : 男爵を線虫(ジャガイモの大敵)に強くした品種。
とうや : 「黄爵(こうしゃく)」とも(男爵の上位の公爵と、黄色いことをかけている)。
インカのめざめ:アンデス産の小粒で食味が良い種と、アメリカの品種の半数体を交配させ、日本の長日条件下で栽培できるように開発した2倍体の品種。食味は良いが収穫量、生産量は少なくジャガイモのなかでは高価。
デジマ:長崎県で交配・育成された品種で、長崎県を中心に九州で多く栽培される。品種名は江戸時代に外国への窓口であった長崎の出島にちなんだもの。
関連イラスト
関連タグ
フライドポテト ポテトチップス ポテトサラダ じゃがバター コロッケ 肉じゃが
西田敏行/一時期、ジャガイモイメージで語られたこともある。
ジャガイモ警察/ファンタジー系創作品(というよりなろう系)のある意味熱心なファン。
外部リンク