“ファンタジー(Fantasy)”という言葉自体は英語での「幻想的・空想的」と言う意味合いだが。欧米で一般的に「ファンタジー」と言った場合には概ね、
日本でも広義では超自然現象を扱う作品一般をさすが、狭義には中世ヨーロッパを舞台とし、上述のような特徴を有する作品を指す。超自然現象を扱う作品一般をファンタジーとすると、大きく分けて日常世界で起こる超自然現象を扱うエブリディ・マジックと超自然現象が当たり前に存在する異世界を扱うエピック・ファンタジーからなる。この記事ではエピック・ファンタジーのうち、主に中世欧州を舞台とした狭義のファンタジーを扱う。日本、あるいは東洋的世界を舞台とした作品はそれぞれ以下の別記事を参照のこと。
エブリディ・マジックのうち最も知名度が高いのはいわゆる魔法少女モノであり、次に異世界からヒロインが主人公の住む現実世界にやって来るいわゆる落ちモノが挙げられる。魔法少女は別記事がある。
概要と歴史
遠い過去におけるファンタジーの源流を探せば、ギリシアや北欧等の神話にさかのぼることになる。またホメロスらが作ったとされるギリシアの叙事詩はエピック(叙事詩的)ファンタジーの語源にあたる。すなわち英雄たちの事績を叙する物語である。中世に入ると『アーサー王物語』などを源流とする騎士たちを主人公とした叙事詩が吟遊詩人たちによって歌われ、あるいは小説として物語の形を成していった。一方で民衆の中には神話やキリスト教の影響は受けつつも独自の民話や伝説が語り継がれ蓄えられていった。J・R・R・トールキンはこれらの伝統を背景としてはじめて体系化されたエピックファンタジーの物語を創作したと評価されている。特に1950年代の後半に小説の『指輪物語』が発表されると、その人気と共に「妖精や異形のモンスターが登場し魔法が日常に使われる世界」という意味でのファンタジーという概念が成立していった。
その後、1974年に世界最初のTRPGである『ダンジョンズ&ドラゴンズ(Dungeons & Dragons)』が発表されると、欧米では前述の『指輪物語』に描かれる様な世界観と「ファンタジー(Fantasy)」と言う言葉を関連付けて語るようになった。これら2つの作品がいわゆる“ファンタジー物”と言う言葉の持つイメージを決定付けたと言って良い。また近年では、小説『ハリー・ポッター』の発表により再び西欧社会でファンタジーブームが再燃し、新たに「ネオ・ファンタジー」と呼ばれるジャンルを生み出している。
ファンタジーの派生ジャンル
主な用語の派生として、
- ハイ・ファンタジー(High-Fantasy)
- ロー・ファンタジー(Low-Fantasy)
- ヒロイック・ファンタジー(Hiroic-Fantasy)
- ダーク・ファンタジー(Dark-Fantasy)
ハイ・ファンタジー
ハイ・ファンタジーは様々な意味で用いられており、エピック・ファンタジーと同義で用いられることもある(この場合エブリデイ・マジックをロー・ファンタジーと呼んで区別する)。もう一つ多い用法は「軽薄・価値が軽い」ライト・ファンタジーと区別された「高尚・価値が高い」ファンタジーのあり方という価値判断である。1990年代以降、特に日本では若年層向けの読みやすさを重視した小説を「ライトノベル」と呼び習わす習慣があるため、このような「ライト」ファンタジーより優れたファンタジーという意味合いが多く用いられることになった。だが、欧米でもロバート・アスプリンやピアス・アンソニーのような軽妙さやユーモアを活用したファンタジー小説は決して少なくない。またあくまでも価値判断である以上、ライト・ファンタジーと表現されても内容が薄いという客観的な評価につながるとは限らない。
典型的なハイファンタジーの例は、
ロー・ファンタジー
童話のような世界観を強調してそれらの由来に一切の科学的根拠を求めていない作品群。森には妖精たちが遊び、山の洞窟にはドラゴンが潜んでいる様な、いわゆる「メルヘン」とほぼ同義語と考えても良い。
典型的なローファンタジーの例は、
ダーク・ファンタジー
主として中世時代のヨーロッパの暗い部分や負の側面を強調して描かれた作品群。中世の“魔女狩り”や、呪術的な物の見方、王侯貴族による絶対的支配の封建社会の閉鎖的な考え方などを題材に描く場合が多い。また単純に結末が悲劇的な、いわゆるバッドエンドになるファンタジー物の事を指す場合もある。
普通のファンタジー物が「夢溢れる子供向け作品」と言う解釈で、その逆に「大人向け作品」と言う解釈から「アダルト・ファンタジー」と言う場合もある。
典型的なダークファンタジーの例は、
ヒロイック・ファンタジー
別の言い方として「剣と魔法(Sword and Sorcery)」という別名もあり、一般にはこちらの方が通りがよい。おおよそはハイファンタジーと同じジャンルと考えてもいいが。特に主人公が超人的な能力を有し、悪の勢力を討ち果たしていくといったスタイルを取る作品群の事を言う。いわゆる「英雄譚」のこと。
ヒロイックファンタジーの始祖の1人であるディ=キャンプ(アメリカの作家/Lyon Sprague de Camp)の言葉を借りれば、
「男は全て強く、女は全て美しく。
人生は全て冒険に満ちている。
そこでは誰も所得税だの、落ちこぼれだの、公共医療制度だのを問題にしない。」
~という夢と浪漫溢れた世界を描いた物である。
恐らくほとんどの人が「ファンタジー物」という響きに抱くイメージに最もぴったりなジャンル。他にも「ビキニアーマー」や「ドラゴンスレイヤー」など、ファンタジー物の定番の多くはここから生まれた。今ではすっかり日本人の原風景とも言える『ドラゴンクエスト』の世界観もこれに該当する。
特に言及がない場合、ファンタジー物と言った時の多くはこの「ヒロイックファンタジー」である事が多い。
典型的なヒロイックファンタジーの例は、
以上4つに大きくサブジャンルとして分けられるが。明確な線引きは難しい場合が多く、読み手によって解釈は変わる事も多い。
日本のファンタジー
日本におけるファンタジーは、『グイン・サーガ』のように1970年代から発表され、ベストセラーとなっていたものもある。また、『指輪物語』の翻訳もやはり1970年代に公刊されていた。だが、世間的な知名度を上昇させたのは、1980年代のコンピュータRPG、特に『ドラゴンクエスト』の発売の効果が大きい。こうして世間的にファンタジーの知名度が急上昇する中、より本場のファンタジーを日本に紹介したいという意図を持たされて『ロードス島戦記』が世に出ることになった。TRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のルールに従ったリプレイとして始まった『ロードス島戦記』は、それゆえTRPGの背景をなす指輪物語的ファンタジーの紹介という意義を有することになった。その後『スレイヤーズ』や『魔術士オーフェン』のように指輪物語的なファンタジーとコンピュータRPGの世界をつなぐような作品が次々とヒットすることになる。
しかし逆に、それらは安易なライト・ファンタジーであってハイ・ファンタジーとは呼べないといった批判も呼ぶことになる。とはいえ『スレイヤーズ』は魔法と魔族を中心とした大規模な設定体系を有しており、『ロードス島戦記』に至ってはアレクラストやクリスタニアも含めれば分厚い世界設定と神話や歴史、世界観の解説書を何冊も擁する情報量となっていることも書き添えておこう。必ずしも場当たり的な世界観で日本のファンタジーが発展してきたわけではないということである。
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