概要
19世紀後半にカール・ベンツ(ベンツの創業者)が水平対向エンジンを発明した。
クランクシャフトの位相角は180°で、対の気筒同士が振動を打ち消しあう。
エンジンの形状は横に広く、基本的に平らなので、フラットエンジンともいわれる。
また、ピストンの動きがボクサーがグローブを打ち合わせるところに似ているため、「ボクサーエンジン」ともいわれている。
種類
水平対向2気筒 ←2CVなど初期の大衆車に用いられた。オートバイ用としては、BMW Rシリーズの代名詞。
水平対向4気筒 ←現在スバルが製造する主力エンジン形式であるEJ型はこのレイアウト。小型航空機でも広く使われる。過去においては大衆車に広く採用され、フォルクスワーゲンのエンジンが有名(ビートルのエンジン)。
水平対向6気筒 ←スバルのEZ30やポルシェ911のエンジンは有名。ホンダが製造する一部の2輪に採用している。
水平対向8気筒 ←航空機のエンジンとしての採用例が多いが、自動車用としては現在製造されていない。
水平対向10気筒 ←後述する180°V型エンジンを別にすれば開発例はほとんど無い。
水平対向12気筒 ←国鉄のDML30系エンジンなど、鉄道用・バス用ディーゼルエンジンとして採用例あり。この項目のイラストがスバルで試作された12気筒エンジンである。
水平対向16気筒 ←開発された例は非常に稀。ポルシェのレース用エンジンが有名。
現在
水平対向エンジンはエンジンの振動バランスと車体重量バランスに優れ、空冷形式との相性が良いため過去には広く大衆車に採用されたが、現在では多くのメーカーは低コストかつエンジンを横置きできる並列エンジンに移行し、現在水平対向エンジンを搭載する四輪自動車を製造する会社はポルシェとスバルのみである。
特にスバルが自社製造する自動車は水平対向エンジンのみとなっており、自社で製造する水平対向エンジン車に4WDを積極採用していることで有名である。
ちなみに二輪車ではもっぱらBMWのイメージで、水平対向2気筒エンジンは戦前からずっと続いている伝統のスタイルである。左右に突出したシリンダーが非常に特徴的であり、BMW二輪のアイデンティティと言える。ホンダでも水平対向6気筒が一部の車種で採用されている。
180°V型エンジン
180°V型エンジンはV型エンジンの一種で、水平対向エンジンと同様、シリンダーが横に寝ているため、外見上の見分けは難しいが、内部構造はまったくの別物である。
例を挙げると、クランクシャフトの位相は水平対向エンジンが180°なのに対し、180°V型はクランクシャフトが同位相である。このため、振動を対の気筒間で相殺することはできない。
要するに、腕をシリンダーと見立てた場合片腕を伸ばしたらもう片方も伸びるのがボクサーエンジンで、片腕を伸ばしたらもう片方は縮むのが180度V型エンジンである。