概要
バチカン市国の神父であり奇跡調査官の平賀とロベルトが世界中の『奇跡』を調査し、その裏に隠された事件を解決していく歴史ミステリー。
元々は角川書店からの単行本出版だったが、後に角川ホラー文庫として再出版。既刊の2巻も表紙イラストを一新し(表紙イラストは共にTHORES柴本氏)、現在は短編を含む9巻が刊行されている。本編は基本書き下ろしで、短編(番外編)は『小説屋sari-sari』にて連載されている。
金田榮路作画の漫画が2012年1月より『コミック怪』にて連載され、「黒の学院」と「サタンの裁き」のコミカライズ版2巻が刊行されている。
主に宗教に関する歴史が多く登場する事が魅力なのだが、主人公の平賀とロベルトの親友にしてはやや一線を超えてしまっている様に見えるその親密な関係も人気に拍車をかけている。
もう結婚しちまえよおまえら……。
あらすじ
キリスト教、カソリック信仰者の聖地バチカン市国。
その中に世界中から申告された『奇跡』を調査、審議し『奇跡』の真偽を確かめる機関がある。
その機関を『聖徒の座』と言い、その機関に属する神父・枢機卿達を奇跡調査官と呼ぶ。
奇跡調査官の一人である天才科学者の平賀・ヨゼフ・庚神父と、友人であり相棒の古文書・暗号解読のエキスパート、ロベルト・ニコラス神父はあらゆる『奇跡』を調査し、その裏側に隠された事件と陰謀を暴いていくのだった……。
登場人物紹介
平賀・ヨゼフ・庚(ひらが・よぜふ・こう)
日系アメリカ人の青年神父。24歳。ほっそりとして色白、女性にしても良いくらいの美貌の持ち主。
ロベルト曰く『存在自体が一つの美術品のよう』。
敬虔なカソリック教徒で、いつか科学でも実証できない奇跡に出会いたいと考え奇跡調査官の任についている。天才的な頭脳をもつ科学者で様々な事件の謎を解いていくが生活能力は全くの皆無で家事も出来ない。またかなりの天然。
夢中になりすぎると周りのことがまったく目に入らなくなり、バチカンの中でも浮世放れした変わり者として知られている。家の中には常に雑誌や新聞の切り抜き、無数のメモの他、地球儀や甲冑などよく分からない物が溢れかえっている。
骨肉腫を患う12歳の弟・良太がいる。
イタリア人の青年神父で男らしい体つきの精悍な美男子。平賀とは3歳違いの年上。
古文書と暗号解読のエキスパート。解読の際は右目に愛用の片眼鏡(モノクル)を装着する。
神父とは思えないほど世慣れていて、きちんと自分の人生を楽しむタイプ。少し皮肉屋で冗談を言う一面も。
世俗に疎い平賀のことを兄のような気持ちで守ってやらねばと考えている。
平賀の良き相棒として強い信頼関係で結ばれており(少々友情とはかけ離れている様な気もするが……)様々な事件解決のサポートをする。
2巻では自身の過去について明かされる。
ジュリア司祭
本名はジュリア・ミカエル・ボルジェ。初登場は2巻。
プラチナブロンドの髪とグリーンの瞳をもつ美貌の青年神父。
アフリカのソフマ共和国の教会で貧しい人々を救う聖者のような司祭。
平賀はその献身的な姿勢に、非常に感銘を受けるのだが……。
刊行
バチカン奇跡調査官 黒の学院
第1巻。アメリカの寄宿男子校と修道院で、聖痕を浮かべる生徒や涙を流すマリア像といった奇跡と、巻き起こる連続殺人について調査する。
バチカン奇跡調査官 サタンの裁き
第2巻。アフリカのソフマ共和国で、1年半前に死んだ預言者の腐敗しない死体の奇跡と、ロベルトの死をも預言していた預言詩の謎を調査する。
バチカン奇跡調査官 闇の黄金
第3巻。イタリアの小村で、教会に角笛が鳴り響き虹色の光に包まれる不可思議な奇跡と、村に伝わる『首切り道化師』の伝説について調査する。
バチカン奇跡調査官 千年王国のしらべ
第4巻。ルノア共和国で、多くの重病人を奇跡の力で治癒したうえ、自らも死亡した3日後に蘇ったアントニウス司祭の奇跡について調査する。
バチカン奇跡調査官 血と薔薇と十字架
第5巻。英国の吸血鬼伝説がある田舎町で、実際に目の当たりにした吸血鬼こと『屍者の王』の謎について調査する。
バチカン奇跡調査官 ラプラスの悪魔
第6巻。アメリカのゴーストハウスで行われる降霊会に、悪霊が憑いていたと噂される次期大統領候補の変死の真相を探るべく潜入する。
バチカン奇跡調査官 天使と悪魔のゲーム
第7巻。短編集。平賀、ロベルト、サウロ、ジュリアの過去をえがいた計4編が収録されている。
バチカン奇跡調査官 終末の聖母(ディー・ゲニトリクス)
第8巻。メキシコで、出席した式典の最中に突然宙に浮いた十字架の奇跡と、町を断絶した光の道について調査する。
バチカン奇跡調査官 月を呑む氷狼
第9巻。ノルウェーの研究都市で発生した、北欧神話のラグナロクを彷彿とさせる出来事と、氷狼の仕業と噂される怪死事件の謎について調査する。
その他
二十の悪夢 角川ホラー文庫創刊20周年記念アンソロジー
こちらに収録された藤木稟著の短編「母からの手紙」は、第8巻「終末の聖母」とクロスオーバーしている。
「終末の聖母」を読まなくても楽しめるストーリーになっているのだが、藤木稟ワールド全開なので、読んだほうが内容は理解しやすい……かもしれない。「終末の聖母」終盤に登場する彼に何が起こったのか気になる人は、短編を読んでみてはどうだろう。