概要
ローマ帝国支配時代のユダヤ人貴族ユダ・ベン・ハーの数奇な半生を描いた大スペクタクルロマン。イエス・キリストを始めとする新約聖書ゆかりの人物たちが物語の要所に絡んでおり、キリストの受難劇と秘跡を描いた宗教物語の側面もある。
発行直後から大ベストセラーとなり、1936年の『風と共に去りぬ』までアメリカの最高発行部数の頂点であり続けた。
三度に渡って映画化されているが、1925年に公開された二作目はサイレント映画ながら12万人ものエキストラを動員した超大作であり、1959年に公開されたウィリアム・ワイラーが監督した三作目はアカデミー賞にて11部門を獲得し、いずれも歴史的名作として映画史にその名を輝かせている。
CG技術の無かった時代に数多のエキストラと大規模なセットを使って撮影された戦車競走シーンは圧巻。
あらすじ
紀元26年、ローマ帝国支配時代のユダヤ。
エルサレムに暮らす貴族ユダ・ベン・ハーは聡明かつ武勇に優れ、目下の身分の者にも分け隔てなく接する若者であった。
ある日、ベン・ハーはローマから司令官として派遣されてきた幼馴染みのメッサーラと再会し、喜びを分かち合う。しかし、メッサーラはローマで暮らしていたうちに支配者の毒に取り憑かれていた。ローマの治安を乱す者の処罰に協力しろといわれたベン・ハーが「同郷の人々を裏切ることはできん」と言ってかたく断ったことで二人の友情には亀裂が入ってしまった。
その折、新総督の赴任パレードでベン・ハーの妹が寄りかかっていた屋上の瓦が偶然落下して危うく総督にぶつかりそうになるという事件が起きたことで、ベン・ハーはメッサーラに総督暗殺未遂の濡れ衣を着せられ、家族離散に追い込まれてしまう。メッサーラはベン・ハーへの躊躇無い仕打ちをもユダヤ支配に利用するつもりだったのだ。
当時奴隷以下の扱いであった罪人として護送される中、乾きと疲労に苦しむ彼に一杯の水をくれた男がいた。その男こそがイエス・キリストであるということをベン・ハーはまだ知らなかった。その水を飲むとなぜかベンは体力を取り戻し、再び生きる気力を取り戻したのであった。
罪人としてガレー船の漕手として三年服役していたベン・ハーはある海戦において司令官アリウスの命を救うという大殊勲をあげ、彼を見込こんだアリウスは養子に取り立てる。
アリウスの庇護の下、戦車競走の新鋭騎手として活躍し人々から注目されるようになっていたベン・ハーだったが、母と妹を探すことを望んでいたベン・ハーはアリウスに見送られ、ユダヤへと帰ってきた。家族を探していたベン・ハーは再会した元召使の娘エスターから彼女達が死んだと知らされる。
復讐の鬼と化したベン・ハーは旅の道中で知り合ったアラブの商人イルデリムの協力を得て、エルサレムでの戦車競走で不敗の王者であるメッサーラに挑むことを決める。ベン・ハーの挑戦を知り、凶悪なギリシア式戦車でもって彼を迎え撃とうとするメッサーラ。
命がけの戦車競走で激闘を制するのは果たして誰なのか。