概要
カーレース競技車両がピットインする際、そこで行われるマシンのメンテナンスなどを行うスタッフ。
様々なレースカテゴリーごとに、1度に作業できる人数が定められている。
ドライバーと違い表に出ず目立つ存在ではないが、ドライバーやチームの勝利は彼らの活躍なしにはもたらされない。
タイヤ交換などのピット作業はまさに彼らの腕とチームワークの見せ所で、いかに短時間で・確実に作業をこなせるかが勝負を左右しかねない重要な要素となっており、モータースポーツの見どころの一つとなっている。
またもし車が壊れた時には場合によっては徹夜に近い作業で修復し、競技開始までに修復完了させて車を送り出してくれるなど、まさしく縁の下の力持ち的な重要な存在である。
レースカテゴリー毎のピットクルーの仕事
F1
一度のピットインで15~20人が同時に作業する。
タイヤ交換だけならわずか2~3秒で終えてしまうくらい素早いピット作業が特徴。
役割分担
・ロリポップマン(1人)
ドライバーに停止や発進の指示をボードで与える人。(トップ絵参照)
・ジャッキマン(2人)
車両の前後で車体を持ち上げる。F1カーは軽いのでてこの原理を使ったジャッキで簡単に持ち上がる。動力補助式のジャッキの使用は禁止。
・タイヤ交換(12人)
タイヤ1本につきインパクトレンチ担当、タイヤ外し担当、タイヤ取付担当の計3人がつく。ただしチームによっては1本に2人の場合もある。
・パーツ交換
状況によっては破損したパーツの交換や調整、ラジエーター掃除などを行う場合もある。
かつて給油が認められていた頃は以下の担当もいた。
・フューエルマン(3人)
1人が給油ホースの先端を持ち、残り2人はホースを支える。
・ファイヤーマン
燃料が漏れて火災が起きた際にすぐに消火できるように消火器を持って待機する。
インディカー
ピットロードで作業ができるのは最大6人までと決められている。ただし、ウォール外(アメリカのサーキットではピットロードとガレージの間にもウォールがある)からの補助は可能。
役割分担
・タイヤ交換(4人)
レンチのホースがマシンに触るとペナルティになるので注意して作業する。またフロントのクルーは発進指示も出す。
・ジャッキマン(1人)
マシンにエアーホースを差込み、車体をジャッキアップする。リアタイヤの交換の手伝いをすることもある。
・フューエルマン(1人)
NASCAR
NASCARでもタイヤ交換作業が行われる。作業人数は決められているが、インディカーと同様にウォール外からの補助が可能。
役割分担
・ジャッキマン(1人)
エアジャッキなどは使用禁止なので、油圧式のジャッキで片方ずつ持ち上げる。重い車体を少ないストロークで持ち上げなければならないのでかなりの重労働。
・タイヤ交換(8人)
タイヤ1本につき2人。1人はレンチとタイヤ外し。もう1人がタイヤ装着を担当。ホイールナットはセンターロックではなく普通車と同じ5穴タイプなので、非常に大変な作業である。負担を減らすためにホイールには予めナットが溶接されている。
・フューエルマン(2人)
燃料缶を使って燃料補給を行う。1本12ガロン(約37キロ)を担ぐ大変な作業。
・エキストラ
フロントウインドウのフィルム剥がしやゴミ落としなどを行う。
SUPERGT
SUPER GTでは作業できる人数が限りがある。また、全員が同時に作業をすることが認められていない。レース距離によるが、最低限ドライバー交代を1回は行わなければならないため、市販車と違って人の乗り降りがまったく考慮されていないGTカーでいかに素早く確実な交代を行うかも勝負の分かれ目となりうる。
役割分担
・ジャッキマン(1人)
マシンにエアーホースを差込み、車体をジャッキアップする。作業が終わるとホースを抜き、ドライバーへの発進指示とする。
・タイヤ交換(4人or8人)
タイヤ1本につき2人。なお、タイヤ交換は義務ではないため一部だけ交換、あるいは無交換という戦術も可能。
・フューエルマン(1人)とファイヤーマン
燃料補給とタイヤ交換は同時に行うことはできない。
・窓拭き
耐久レース
長時間走るというレースの特性上、頻繁なピットインが行われる。給油とタイヤ交換の同時作業は不可。
役割分担
・給油
同時にドライバーの交代も行われる。
・タイヤ交換(2名)
コース側から交換を行う。
・窓拭きなど
フロントガラスについた汚れを落とす。何回かに1回はフイルムを剥がす。(クローズドボディの場合)
厳密にはマシンを乗り換えるために以上に挙げたピットストップとは大幅に異なる。
フォーミュラEでは必ず1回以上のピットストップが義務付けられており、さらにマシンを乗り換えたことを明示しなければならない。ストップ時間にも制限がある。
乗換えをするのは、充電するとなると非常に長い時間がかかるため、現状での最適解として採用されているに過ぎない。
将来的には非接触充電なども検討されている。