曖昧さ回避
本記事では以下について解説する。
- インド神話に登場する蛇の姿をした魔神。
- テイルズオブイノセンス(テイルズオブイノセンスR)の登場キャラクター。
- カオスブレイカー(ダークアウェイク)のキャラクター。
- 女神転生シリーズに登場する悪魔。
- その他のフィクションでの扱い。
インド神話
概要
ヴリトラは「リグ・ヴェーダ」等の経典に登場し、その名は「障碍」「天地(宇宙)を覆い隠すもの」を意味する。姿形は巨大なコブラまたはヘビ型の龍であるとする。「リグ・ヴェーダ」において蛇の姿で描写されるが、後述のマハーバーラタ叙事詩等では人型の姿で登場する。
「リグ・ヴェーダ」においてはインドラの敵として両者は戦い、ヴリトラが倒される事で山中に閉じ込められた水が、インドラによって解放される様が讃歌として挙げられている。
またヴリトラ退治譚として、ヴリトラが降雨をもたらす“雲の牛”を捕えて旱魃を引き起こしていたが、誕生したばかりのインドラに対して人々が助けを求めた事から、インドラは祭儀の力による鼓舞とソーマ酒による活力を得て、ヴァジュラ(雷霆)で武装して戦車を駆り、ヴリトラに対決を挑んだと言う物語があり、ヴリトラが撃破された事で、雲の牛が解放され大雨が大地に降り注いだとされる。
ヴリトラは年毎に蘇る事から、両者の戦いは何度も繰り返されると言われる。
後代のプラーナ文献や叙事詩「マハーバーラタ」にはヴリトラの神話が複数挙げられ、
・聖仙カシュヤパは息子であるヒラニヤカシプをヴィシュヌに、ヴァラをインドラに殺された為に、祭儀を行って「インドラを殺すことのできる息子をお与えください」と祈った。
すると、カモシカの衣をまとって剣を持ち、巨大な牙と黄色の眼、黒い皮膚をした巨人が祭火の中から生まれ出でたので、カシュヤパはこの巨人にインドラを殺すことを命じた。この巨人こそヴリトラであった。
ヴリトラの力に恐れをなしたインドラはラムバーと言うアプサラスを送りこみ、バラモンの禁忌であるスラー酒を飲ませて意識を失わせ、ヴァジュラでとどめを刺した。(パドマ・プラーナ)
・インドラと仲の悪いトヴァシュトリと言う聖仙がおり、彼はインドラを倒す為にヴィシュヴァルーパと言う名の息子をもうけた。ヴィシュヴァルーパがインドラの地位を求めて苦行に打ち込んだ為、インドラは彼の力を恐れて殺害した。
息子が殺されたのを知ったトヴァシュトリは、8日間に及ぶ祭儀に打ち込んだ。8日目の夜、光り輝く鬼神が現れて自身の名と父親であるトヴァシュトリが悲しむ理由を尋ねた。更に彼は「父親の為になる事は何でもする」と言ったので、喜んだトヴァシュトリは彼にヴリトラと言う名を与え、インドラを倒すように命令した。ヴリトラはインドラを捕まえて呑み込む等、力の限り戦ってついにはインドラを退却させた。
ヴィシュヌはインドラに和平を結んだ後に策謀で撃破するよう指示し、ヴリトラの「乾いた物、湿った物、岩、木、武器、ヴァジュラによって、昼も夜も神々は私を殺してはならない」と言う条件を受諾して、両者は和解した。
そして、インドラは夜明け(夕暮れ)にヴリトラが海岸に居る時、海の泡を使って彼を殺した。(デーヴィー・ヴァーガバタ)
・ある時、ヴリトラは軍を率いて神々に戦いを挑んだ。インドラがブラフマーにヴリトラを殺す方法を尋ねたところ、聖仙ダディーチャの骨で作ったヴァジュラが必要であると言われた。
神々はダディーチャの下へ訪れて懇願すると、聖仙は了承の意思と共にその場で息を引き取り、骨からヴァジュラが作られ、インドラは軍を率いてヴリトラに立ち向かう
だが、自軍が次々と潰走する中でインドラは弱気になり、ヴリトラが上げた雄叫びに驚いてヴァジュラを投げると、命中の確認もせずに逃げ出した。尚、投じられたヴァジュラはヴリトラを見事に撃破し、悪魔の群れは壊滅する。(マハーバーラタ)
時代が降るにつれて、ヴリトラはインドラを凌駕する存在として描かれ、叙事詩中で『アスラシュレーシュタ(アスラ中の最上のもの)』『アスレーンドラ(アスラの王)』『スラーリ(神々の敵)』等の異名を戴くようになる。
またインドラの策謀を巡らす姿が目立ち、上記の物語の最後の大体はヴリトラの撃破に際して、『バラモン殺し』や『協定反故のタブー』を犯したインドラに罪が下ると言うのが大まかな流れである。他には武勇に優れるインドラが卑劣な策謀を用いた事を他の神々に非難され、インドラ自身も認め「この事だけは語りたくない」と恥じている。更に「マハーバーラタ」のヴリトラ退治譚は、後日悪魔の残党狩りに際して海が消滅すると言うオチがついている(色々あってガンガー女神とシヴァ神がなんとかする)
ヴリトラが象徴するもの
インドラとヴリトラの戦いの物語は多くあるが、それが象徴するものとして「繰り返される自然現象」が挙げられる。
ヴリトラが水を封じ込めている山を、雨を蔵する雲であると解釈して『雲』や『旱魃』を象徴するという説や、また夏季に太陽の熱が強まってヒマラヤ山系の大雪を溶かして満たされる西北インドの河流として解釈して『冬』を表す存在とする説がある。いずれにしろ、ヴリトラの撃破によってインドラが降雨の支配を得たことで、アスラの長であるヴァルナ(司祭階級)に対してインドラ(戦士階級)がイニシアチヴを取るという神話内の力関係の変異を表徴しているとされる。
また、宗教学者ミルチャ・エリアーデはヴリトラを露わでないもの、形ないものの象徴、開闢以前のカオスを表す存在として、両者の戦いには宇宙の創造・維持の意義が秘められているとしている。
源流を遡ると、インドラとヴリトラの戦いは、アーリア人が北インドに勢力を伸ばす際のインダス人との関係を背景に成立した神話とみなされる。
また、インダス人はインダス川支流にダムを作って灌漑に利用し農作物の栽培を行っていたが、アーリア人はそれらを破壊して征服したことから、『灌漑のシステム=ヴリトラ』の図式が産まれたとする説がある。
関連イラスト
(Pixiv上に限らず、日本の文化作品では本来のコブラ型よりも、ドラゴン的な姿をしたものが多くなってしまっている。これは例えばバハムートも同様である。)
ヴリトラ(TOI)
CV:松岡由貴
『テイルズオブイノセンス(テイルズオブイノセンスR)』の登場キャラクター、エルマーナ・ラルモの前世。
古から天上界を見守っていた龍の一族で、巨大で強靭な肉体を持っている。原典とは違い、ネバーエンディングストーリーのファルコンのような善龍である。
転生後のエルマーナ同様、世話好きな性格であり、生まれたてのアスラを立派な戦士に育て上げた。
しかし、強靭な肉体が仇となり、天上界が崩壊した後も長い年月を孤独に生き続けていた。
関連タグ
ヴリトラ(カオスブレイカー)
『カオスブレイカー(ダークアウェイク)』のキャラクター。プレイヤーキャラの一人として選択できるダークエルフの剣士。
主人公ラムダの一族を滅ぼした張本人という、ストーリー的にも重要な位置に付いているが、
ゲーム中の性能も「(AC北斗の)トキとレイを足して2で割らない」というすさまじい表現をされるほどの強キャラ。
ヴリトラ同士の対戦なんてのもよくある光景である。すなわち、「ふたりはヴリトラ」。
画面端を往復しながら相手を蹴り続ける永久コンボも存在し(割とリズム感を要求されるが)、「リフティング」等と呼ばれ恐れられ(あるいはある種の達観した方々からは親しまれ)ている。
関連タグ
ヴリトラ(女神転生)
初出は「デジタル・デビル・ストーリー女神転生Ⅱ」で、種族“怪獣”の上位悪魔として登場している。
インド神話でたびたび言及される悪神としてインパクトのある存在だったためか以降のシリーズでもかなりの登場率を誇り、「真・女神転生」や「魔神転生」シリーズ二作では赤い龍の姿、「真・女神転生Ⅱ」以降はマハーバーラタの説話のように人型でデザインされている。また、種族も上記の怪獣を嚆矢に龍神、龍王、邪龍など神話中の立ち位置の変化を表すように作品ごとに変遷を重ねている。
しかしながらストーリーに絡むことは少なく、下記の「デジタルデビルサーガ」シリーズの夜叉鬼ヴリトラや「デビルサマナー葛葉ライドウ対アバドン王」の“印形の儀”第四の試練で交戦する程度である。
「真・女神転生DEEP STRANGE JOURNEY」では旧作からの追加悪魔として龍王ヴリトラが登場しており、EXミッション『ロキの仲魔要求』ではトールに勝てそうな悪魔としてロキがヴリトラの名前を挙げ、主人公に連れてくるように依頼している(後にヴリトラが敗北したとロキから語られる)。
デジタルデビルサーガのヴリトラ
夜叉鬼ヴリトラとして登場。主人公のサーフに致命傷を与えながらも道連れにEGG内へ墜落したヒートがセラによって引き起こされた神の暴走によって“神の情報”に侵された結果生じた存在で、作中、神の暴走を止めようとしてEGGの操作を試みるセラ達の前に、EGGを取り込みヴリトラと化したヒートが立ちふさがる。そして激闘の末、セラ達の前にひるむヴリトラの腹部を裂いて死亡したと思われたサーフが現れ、両者の戦いは決着する。
ヴリトラは龍を思わせる三つの口、ヒートのアートマであるアグニの形質を持つ二本の触手、卵型のEGGを体内に収めるために膨れ上がった胴体という異形の姿である。
ヴリトラ本体への攻撃は触手が防御するために触手の撃破が勝負を分けるが、触手の本数によって行動形態が変わり、触手がある状態では氷結属性スキル“憎悪の暴流”、触手がない状態では万能属性スキル“極熱の咆哮”を使用するので、毎ターンの攻勢によってHPの運用やウェイトスキルによる的確な対応が要求される。
デジタルデビルサーガは他作品に比べて神話的要素が強いが、特にヴリトラ戦はEGG(宇宙卵)の障碍者という役割、体内に水(ヴァルナ)を蔵する、過去の亡霊の打倒によるサーフの復活等、象徴的なイメージが色濃く漂うシーンである。
ヴリトラ(Fate/GrandOrder)
サーヴァントの1人として登場する。
初出は、期間限定イベントの「栄光のサンタクロース・ロード~封じられたクリスマスプレゼント~」。
龍の角や尻尾が生えた、金髪褐色の女性の姿での登場。再臨段階が上がるにつれ龍の意匠がより濃くなっていく。なぜこの姿なのかは、本人も理解していない。文献によっては女性が原因で殺されてしまったというものもあり、それが原因だとする声もある。もっとも姿形にはあまり執着がなく、龍や蛇というところも人間の勝手だとしている。多面的なところは、元ネタからイメージされる部分でもある。
性格は享楽主義、ドSで、「悪龍」と言っていいような性格。だが、人間がどんな目にあっても、逆境を超えていくところをとことん評価しそれを楽しむという、ある種の「人間好き」な面がある。下戸で酒は飲めず肉が好き、人間のように体を洗ったりすることは嫌い(水浴びは毎日している)。
宝具は、『魔よ、悉く天地を塞げ(アスラシュレーシュタ)』(ヴリトラの異称:アスラの中の最上のもの)
その他のフィクションでの扱い
- パズル&ドラゴンズに登場する同名のモンスター→ヴリトラ(パズドラ)
- ロマンシングサガ2の蛇系モンスターの最上位
- サンサーラ・ナーガ2のラストダンジョンに登場する、クリティカル攻撃「ウルトラ」を繰り出すモンスター。
- アゼル パンツァードラグーンRPGに登場する帝國軍の設計に難がある空中城砦艦。
- サモンズボードに登場するユニット。「ヴリトラ」と「天地を覆うヴリトラ」がいる。