概要
ハヤグリーヴァの名は「馬の首(を持つ者)」の意で、聖仙カシュヤパとダヌの間に生まれたダーナヴァ(アスラ族の一つ)である。
カルパ(劫)の終わりによって世界が海に覆われていた時、ブラフマーは眠っていた。眠るブラフマーの口から出たヴェーダをハヤグリーヴァは盗み取るが、それに気づいたヴィシュヌ(またはブラフマー自身)によってハヤグリーヴァは殺され、ヴェーダは再び元の場所に戻される。
ハヤグリーヴァは上記『悪魔に盗まれたヴェーダの奪還』を基本形態とする話にしばしば登場し、同時にヴィシュヌと強く関わりを持つ存在である。
特に有名なのは「バーガヴァタ・プラーナ」におけるヴィシュヌの化身の一つ、マツヤ(魚)に関連する物語で、
・ブラフマーの口からハヤグリーヴァがヴェーダを盗んだことに気づいたヴィシュヌは魚の姿になってサティヤヴラタのところへ行き、彼の庇護のもとで巨大に成長した。成長しきった魚はサティヤヴラタに七日後に起きる大洪水のことと、洪水に備えて自分が用意した船に七人の聖仙と全ての生物を乗せることを伝えた。こうして洪水から救われたサティヤヴラタにヴィシュヌは真理を説き、新しいカルパのマヌ(始祖)の資格を与えた。
そしてブラフマーが眠りから目覚めると、ヴィシュヌはハヤグリーヴァを殺してヴェーダを取り返した。
上記の話はサティヤヴラタ(ヴィヴァスバタ・マヌ)を救った魚をヴィシュヌと同一視すると共に、ヴィシュヌのヴェーダ奪還物語を結び付けたものである。
一方でハヤグリーヴァをヴィシュヌと同一視する説もあり、
・ダイティヤ(アスラの一種)のカイタバとマドゥがヴェーダを盗んで海に隠した。ヴェーダを取り返す為にヴィシュヌはハヤグリーヴァの姿に化身して二体の悪魔をそれぞれ六つに引き裂いて殺し、ヴェーダを取り返した。
という物語が「マハーバーラタ」に書かれている。なお化身としてのハヤグリーヴァはハヤシラス(馬の頭を持つ者)と呼ばれる。
さらに特殊な形態の物語としては、ハヤグリーヴァは苦行に打ち込んだ結果“馬の首を持つ者(ハヤグリーヴァ)以外の誰にも殺されない”という身体を獲得するが、ヴィシュヌは馬の首を頭の代わりにつけてハヤグリーヴァを殺したという。
以上の関連からヒンドゥー教のヴィシュヌ派では、ハヤグリーヴァを知能・知識、探求を司る存在として重要な神格とみなしている、
また、仏教の馬頭観音はハヤグリーヴァが取り入れられたものである。
女神転生シリーズのハヤグリーヴァ
初出は「デジタルデビルサーガ」で、種族は“阿修羅”、作中の登場キャラクターの一人ハーリー・Qの変身する悪魔である。
名前の意味からシマウマをモチーフにしたデザインが採られ、アートマのバーニングステークも競馬とかけている。
戦闘では頭部から引き出したブレードを用いて攻撃を行う。また胸の羽根に似た装飾には両腕が隠されており、一部攻撃モーションで露わにする。火炎属性に特化した防御相性とスキルを持ち、特に全体攻撃の“バーンストーム”と単体攻撃の“くし刺し”は火炎弱点のサーフが被撃すると厳しい威力を持つ。
作中ではアサインメンツアジトの最奥に追いつめられたハーリー・Qがジャンクヤードの新たな掟を自覚すると共に変身する形で登場する。恐怖にかられて逃げ回っていた直前までの行動の裏返しのように精神の均衡を著しく欠いた凶暴な言動を見せ、馬の嘶きに似た叫びや相手を焼き殺すことに執着するような言葉を放つ。
「デジタルデビルサーガ2」では太陽の第二層で情報体となった姿で再戦する。能力が全体的に引き上げられており、プレスターンを増やす“ギガバイオレンス”を所持しているためウェイトスキルによる防御をおろそかにすると痛い目を見ることになる。
「真・女神転生IMAGINE」では“幻魔”種族の悪魔として登場しており、『敏捷なハヤグリーヴァ』は「デジタルデビルサーガ」同様に“バーンストーム”を実装している。
トライブリーダーが変身する悪魔の一番手で、そのため冒頭のムービーにも登場しており、ラジオ番組『ATLUS presents めぐみゅうの神楽坂ハッピーチューナー』内のラジオドラマでは対ハヤグリーヴァ戦の開始から決着までが描写されている。