敵を引き裂き、屠り、喰らえ! お前たち煉獄の修羅が飢えから逃れ生き延びる術は他に無い!!
概要
『真・女神転生Ⅲ』(2003年2月発売)と平行して進められていた「新・女神転生」プロジェクトで、従来のシリーズの続編ではない完全新作として開発された。
女神転生の代名詞ともいえる悪魔合体・仲魔システムがなくなり、プレイヤーキャラ自らが悪魔に変身する異色作である。インド神話と仏教の思想が物語の土台となっていて、プレイヤー達の変身後の悪魔の名前や作中に登場する用語(アートマ、ニルヴァーナ)などにも色濃く現れている。
また豪華な声優陣に、板野一郎演出によるフルボイスのムービーが随所に挿入されているのも見所。
ストーリー
サーフ率いるトライブ「エンブリオン」は、ジャンクヤード(本作の舞台)の覇者のみが到達できるニルヴァーナを目指していつ果てるとも知れぬ抗争に明け暮れていた。
ある日、謎の物体“ツボミ”を巡って隣接トライブと戦闘していた彼らはツボミから放たれた光に侵されて悪魔に変身する力“アートマ”に覚醒し、感情と共に他者を喰らわねば生きていけない業を背負うことになる。そんな中、彼らを助けに来たと悪魔化を抑制する力を持つ黒髪の少女、セラが現れた。時を置かず、ジャンクヤードを管理する「カルマ教会」から、「黒髪の少女を連れてジャンクヤードの覇者になったトライブにのみニルヴァーナの門を開く」という掟が発せられる。
雨と硝煙に煙る煉獄ジャンクヤードの抗争は、セラを巡って激化の一途を辿っていく···。
登場人物
朽ち、錆びついた建造物が墓標のように立ち並ぶ荒廃した世界。
晴れることのない雲に閉じられた鉛色の空から止むことのない雨が降り続け、トライブ同士が果てることのない戦いを繰り返している。降り続ける雨は“死者の雨”と呼ばれ、ジャンクヤードで死んだり壊れた者は雲に昇り雨となって降り注ぎ、再び新たな命の源になると言われる。また、多くの遺跡がジャンクヤードの下に埋まっており、中には意味不明な物も存在する。
エンブリオン
主人公。六大トライブの一角「エンブリオン」のリーダー。
エンブリオンのアタッカー。
エンブリオンのスナイパー。
エンブリオンの参謀。
エンブリオンの主要メンバー。
ヒロイン。記憶喪失の黒髪の少女。
ジャンクヤードでの敵対組織
六大トライブで第五位の勢力を持つ「アサインメンツ」のリーダー。
六大トライブで第四位の勢力を持つ「メリーベル」のリーダーの女性。
右目の周りに星のようなペイントをしている「メリーベル」の№2。
ミック・ザ・ニック 〔Mick the Nick〕CV:江川央生
六大トライブで第三位の勢力を持つ「ソリッド」のリーダー。
六大トライブでは第二位の勢力を持つ「ハウンズ」のリーダー。
現時点で最大勢力を誇るトライブ「ブルーティッシュ」のリーダー。
その他(DDSAT)
ポイント136の新たなキングを称する悪魔で、最上階の「姫の寝室」の上に陣取っている。
部下のジャックランタンに分け前を与えることを条件に宝箱の鍵を探させており、サーフ達はその鍵探しをさせられることになる。しかしお宝の分配は真っ赤な嘘で、部下のジャックランタンを始末した後、その場にやって来たサーフ達も“ヒー法”の下に始末しようと襲いかかってくる。
作中でキングフロストが主張するヒー法は『第一条:キングの物はキングの物 お前の物はキングの物』、『第二条:逆らう奴はとりあえず死刑』であり、ジャックランタンは前者に、サーフ達は後者に抵触したものと思われる。
蠅の王ベルゼブブのアートマを得た元アサインメンツ構成員。
意識が完全に悪魔化しており、かつて自身を“魔王”と称して敵だけでなく味方まで殺した為にスワディスターナの地下に幽閉されていた。新たなボスとなり自分の所に来たサーフに対して弱肉強食の掟を説き襲いかかるが返り討ちにされ、一度は敗走する。サーフに対して復讐の念を抱き、更なる力を得る為に多くの者を喰らったことで人間に近かった姿から巨大な蠅の姿に変化し、その意識は完全に魔王ベルゼブブと化す。
魔王ベルゼブブの意識はジャンクヤードの秘密を看破しているらしく、“まがいもの”、“仮初の煉獄”、“現世”という言葉を用いてニルヴァーナを目指すことを宣言する。
大天使メタトロンのアートマを持つニュービーの青年。
ローラという恋人を捜してジャンクヤードを彷徨い、住人の間で噂になっていた。アジュニャーにおいてサーフと対面するが、サーフが持っていたタグリングがローラの物であることを見抜き、仇を討たんと襲いかかってくる。彼の発言の中で、元々ローラとはなんらかの理由で現世で結ばれぬ関係にあり両者とも既に一度死んだということをほのめかされる。
悪魔化がかなり進行しているらしく、青年の意識と大天使メタトロンの意識がせめぎ合う姿が戦闘中見られる。美青年であり、エンブリオンの女性構成員が話題にする場面がある。
コウリュウ、四聖獣
ツボミが破裂した後のジャンクヤードに現れたニュービー。
コウリュウをリーダーに、セイリュウ、ビャッコ、スザク、ゲンブがジャンクヤード各地に散らばっており、それぞれがエンブリオン構成員へ攻撃を仕掛けていたことからサーフ達と交戦することとなる。全員が感情と現世での記憶を持っており、ニルヴァーナに到達する真の意味を理解しその為に、勝ち残った最後のトライブ・エンブリオンを打倒しようとして行動している。
- セイリュウ:アジュニャーに潜伏するニュービー。メンバーの中でもとりわけニルヴァーナへの到達に強い執着心を持ち、戦闘中に「生き返る」という発言をする。
- ビャッコ:マニプラに潜伏するニュービー。戦闘開始直後は強気な発言をするが、追いつめられると打って変って投げやりな態度を見せる。
- スザク:アサインツに潜伏するニュービー。メンバーの中で唯一の女性で、ニルヴァーナへの到達に対しての執着が薄い。しかし自身(特に悪魔形態)の容姿に気を使っているらしく、攻撃されて羽根を傷つけられると逆上する。
- ゲンブ:アナハタに潜伏するニュービー。直前に交戦した構成員いわく「オモロイ奴」で、変身すると亀と龍の頭同士で漫才を始める。戦闘中の発言が多くダジャレを飛ばしたり、こちらがカジャ系スキルを使用するとサーフ達の変身悪魔の容姿を含めて説教をする。
- コウリュウ:サハスララに潜伏するニュービー。四聖獣にエンブリオンを攻撃させた張本人で、トライブを新たに設立するのではなく最後に残ったトライブに奇襲をかけることでニルヴァーナに到達しようとした。ガードの制止を力尽くで退けてカルマ協会内に隠れ家を作るだけあり、四聖獣とは段違いの実力を誇る。
人修羅〔Demi-Fiend〕
アナハタ最奥地にてサーフ達が遭遇した存在。
言葉を交わすことなくサーフ達に襲いかかり、尋常でない実力と召喚する仲魔との連携で猛威を奮う。本編の隠し要素(クリア後前提のやり込み要素)であり、隠しを含めたボスの中でもぶっちぎりで強い。前作「真・女神転生Ⅲ」の主人公と同じ姿・声をしているが、必殺技2種の名前が入れ替わっていたり、特性が間違っているなど、別人を思わせる演出がある。協会が保有している悪魔の情報リストの中にたまたま混じっただけと推測できる。撃破した直後はガスによる幻影として処理されるが、二作目において“アマラリング”というアイテムが作中に登場しているため、これが本物であれば人修羅がジャンクヤードに存在していたことが証明される。
DDSAT2のストーリー
ジャンクヤードの互いを喰らいあう壮絶な戦いの末に、煉獄の覇者となったトライブ「エンブリオン」。
しかしニルヴァーナに繋がる門の直前でジャンクヤードは消え去り、サーフは仲間達とも散り散りになってしまった。何処とも知れぬ場所に放り出されたサーフが目にしたものは、彫像のように石化した人々が乱立する廃墟と黄色くぎらつく空、そして頭上に禍々しく輝く黒い太陽だった。この場所こそ楽園ニルヴァーナであり、カルマ協会という組織に選ばれた者達がそれ以外の人間を狩る新たな地獄であった。
明かされる謎と渦巻く思惑と共に、ニルヴァーナを舞台にしたサーフ達の新たな戦いが幕を開ける。
DDSAT2の登場人物
ローカパーラ
地下街を拠点とする反協会ゲリラ組織。
インド神話における護世神にちなんでおり、「世界を守るもの」という意味を持つ。
グレッグという男によって建てられた組織であるが、物語開始時には既に他界しているため、現在はロアルドが二代目リーダーとして指揮をとっている。メンバーはグレッグの戦死と長い地下生活に疲弊しきっており、さらに地下街居住区を協会に奪われ、じわじわと敗北への道を辿っている。
反カルマ協会組織「ローカパーラ」の二代目リーダー。
組織を作った人物であるグレッグの友。頭はキレるのだがリーダーとしての責任を全うできないストレスから酒浸りになっており、組織内のメンバーからはダメな大人と言われている。
フレッド 〔Fred〕 CV:進藤尚美
地下街に住む少年で「ローカパーラ」の初代リーダー・グレッグの息子。物語の冒頭でアルジラによってカルマ協会兵士の人間狩りから助けられ、サーフ達にローカパーラの存在を教えた。性格は年相応に生意気でお調子者だが、しっかりとした考えと強い意志を備える。協会の攻撃に対して防戦一方のローカパーラと飲んだくれるばかりのロアルドを目にして、大人に対して強い不信感を抱いていたが、誇りを忘れずに戦うエンブリオンメンバーの姿やゲイルとの絆を通して成長し、彼らの意思を継いだ人物である。
アディル 〔Adil〕 CV:置鮎龍太郎
右側の人物。「ローカパーラ」の構成員。ロアルドへの忠誠心が強く、組織では彼の補佐を務める。当初はサーフ達をAI風情となじり、人喰いの化け物と忌み嫌っていたが、サーフが仲間の為に犠牲なったと知らされた時は彼を「英雄」と呼び、「同朋の死には己の命で報いる」とエンブリオンメンバーを仲間として認めた。カルマシティ潜入後、エンブリオンメンバーを先に進ませるために協会兵と交戦し、動力プラントではロアルド達の盾となる。
グレッグ 〔Greg〕
「ローカパーラ」の初代リーダー。ロアルドの親友で、フレッドの父親。勇敢なリーダーで仲間からの信頼も厚かったが、数年前に仲間を助ける為に戦死した。協会と戦う一方で、フレッドには平和の象徴であるオリーブの葉を与えていた。
カルマ協会
マルゴ・キュヴィエ 〔Margot Cuvier〕 CV:江森浩子
カルマ協会の長を務めるフランス人女性。身体が石のように結晶化する奇病キュヴィエ症候群の発見者で、環境破壊に警鐘を鳴らし滅びに向かう人類を救う為にカルマ協会を設立させた。黒い太陽により死にかけた世界において人類の種を未来に残す為の方法を模索しており、ジャンクヤードの実験から悪魔化ウイルスによってアートマを得た人間は狂った太陽の下でも石化せず生きていけることを知る。そして絶対的な秩序の下、選ばれた優秀な人間のみを悪魔化し、それ以外の人間を悪魔化した人間の食料として(文字通り糧として)切り捨て管理する「ニルヴァーナ計画」を推進する。悪魔化した人間の発作(暴走)を抑える為にテクノシャーマンであるセラの歌が計画に必要だったため、実体化したサーフ達に交渉、仲間に引き入れることでセラを操ろうとした。
ジェナ・エンジェル 〔Jenna Angel〕 CV:富沢美智恵
カルマ協会の技術部総責任者。
セラ 〔Seraphita〕 CV:桑島法子
カルマ協会の要であるテクノシャーマンで、ジャンクヤードに現れたセラの現実世界での姿。
本名はセラフィータで、エンジェルの卵子と精子から生まれた実子である。神と唯一交信できる存在であり、彼女が行う交信から獲得した神の情報はEGGに蓄積され、それを解析することによってカルマ協会は高い科学力を得ていた。しかし神の情報を浴びる副作用により肉体が異常成長しており実年齢7歳なのに対して外見は17歳ほど、内臓の老化はさらに激しい為減速剤を使用していた。
テクノシャーマンとして生活する中で、遊び場となる仮想空間と主治医など周囲の人間をモデルにした仮想自我を持つ人格プログラムを遊び相手として作り出した。しかしこれが軍の目にとまり、現実の兵士にインプラントする戦闘用AIを作り出す「アスラ・プロジェクト」の基礎に採用されてしまい、この際に仮想空間はジャンクヤードとなり、セラの遊び相手だったAIサーフ達も戦闘用に書き換えられてしまった。
ある事件で哀しみにとらわれて神を狂わせ、太陽の黒化を引き起こしてしまう。作中では、EGG施設にてエンブリオンメンバーに救出されるも目の前で再びサーフを失い、その時のセラの激しい哀しみによって神の最終審判を引き起こしてしまう。だが、サーフの力を受け継ぎゲイルに命の意味を伝えられたことにより、神の暴走を止める為に命を賭して戦いの場に赴く。
アートマはサーフと同じ“ウォータークラウン”で、変身悪魔は“ヴァルナーニ”、印は右頬にある。セラの歌はエンジェルによって伝えられたものである。
収容所所長
カルマシティにある捕虜収容所の所長で、本名は作中登場しない。
捕虜収容所は表向きではただの倉庫として入り口周辺に大量のコンテナなどが置かれてカモフラージュされているが、地下はカルマシティの外に住む人間を拘置する施設で、捕えた人間を材料に缶詰に加工する悪魔化した兵士の食糧確保の為の工場である。
彼の変身悪魔は“クヴァンダ”で、悪魔の姿で過ごす、人肉嗜食の傾向(“15年ものの赤”という缶詰を好んで食べる)、司令室の壁に血肉が大量に飛散しているなど、既に精神状態が尋常でない域に達している。所長として一般兵士と一線を画す「惑いの墨縄」という相手を捕縛する能力を持つ。またサーフを“阿修羅の王”、ジャンクヤードを“ガラクタの玩具箱”と揶揄したことから、協会内でも中心に近い人物と思われる。
ゲームではクヴァンダの追跡を受けながらMAPを探索することになるのだが、クヴァンダの足の速さ、墨縄による足止めトラップ、接近の際の喘ぎ声、そして選択肢中でも問答無用で接触するなどDDSAT中最恐のステージの呼び声が高い。
警備部部長 CV:置鮎龍太郎
カルマ協会警備部を統率する人物で、本名は不明。
サーフ達が交戦する協会兵士は大部分が警備部所属であり、ジェナ・エンジェルと同等の地位に立つ人物で、マルゴ・キュヴィエに直接報告を行う姿が見られる。CVと物言いから動力プラントで戦うことになる“ナーガ・ラジャ”が彼の変身悪魔と思われ、それを裏付けるように戦闘中多数の警備部兵士を投入し、強力な連携攻撃を繰り出してくる。
トリブヴァーナ
カルマ協会兵士の中でも特に凶暴な三人組の士官。
協会も厄介者扱いするほど気性が荒く、ロアルドにキラーエリートと呼ばれる。三士官・天(CV:伊倉一恵)、三士官・地(CV:江川央生)、三士官・気(CV:小野坂昌也)と表記され、変身悪魔はそれぞれ“ガンガー”、“ウベルリ”、“カーシー”。戦闘では各人が己の長所と短所をフォローし連携する強敵である。アートマを得ながらも「人間の力」という点に強いこだわりを持ち、AIであるサーフ達やある人物に強い対抗心を持っている。
しかし二度にわたってサーフ達に敗れたため、人間の勝利を得る為に三士官・地が恐るべき手段で雪辱に打って出る。
テレンス・E・ベック 〔Terence E. Beck〕 CV:銀河万丈
カルマ協会と手を組んだ軍の人物で、階級は大佐。
セラの作り出した仮想空間と人格プログラムを見て軍事転用することを発案し、市街戦を想定した仮想空間で戦闘用AI同士を戦わせてより強力なAIを選別し開発する計画「アスラ・プロジェクト」の責任者となる。プロジェクト進行中にセラの哀しみで神が狂い、サーフ・シェフィールドが悪魔化した場面に偶然立ち会ってしまった為、彼に喰い殺されてしまう。
彼の意識は神の下に帰ることなくEGGに取り込まれ、ジャンクヤードのバロン・オメガに宿る。
サーフ・シェフィールド 〔Serph Sheffield〕 CV:野島健児
セラの精神面のケアを担当していた主治医の一人。
ヒート・オブライエン 〔Heat O'Brian〕 CV:緑川光
セラの肉体面のケアを担当していた主治医の一人。
アルジラ(現実世界) CV:冬馬由美
セラの担当看護師を務めていた金髪の女性。セラの仮想空間で作られたAIアルジラのモデル。
看護師としてセラに優しく接していたことから、彼女によく懐かれていた。しかしアルジラ自身はテクノシャーマンとしての異能を備え、異常成長を遂げるセラに対して恐怖と嫌悪を感じていた。サーフ・シェフィールドに好意を持っていた為に彼の心理操作にかかり、ヒート・オブライエンにシェフィールドが銃を突きつけられた際に彼を守る為にオブライエンを射殺してしまう。だが直後に悪魔と化したシェフィールドに襲われ、最初の犠牲者として喰い殺されてしまう。
その他(DDSAT2)
ディビッド 〔David〕 CV:堀秀行
エンジェルが国際環境保健機構に所属していた頃の同僚で、金髪碧眼の青年。
エンジェルの恋人で共にキュヴィエ症候群の研究を行い、人を救う為の自身の研究を誇りにしていた。だが、ディビッドもキュヴィエ症候群を発症し隔離病棟に身を置くことになるが、感染を恐れ暴走した大衆によって施設を襲撃され、巻き込まれて命を落とした。死の直前に、エンジェルに「誰も恨むな」と言い、治療法を発見し「光になれる」と励まして彼女の腕の中で息を引き取る。しかし、エンジェルは彼の遺言を歪んで遂行することになってしまう。
エンジェルはゲイルにディビッドの面影を感じており、またゲイル自身も自分の中にある彼の存在を理解したことで神の正体と怨念にとらわれたエンジェルを止める決心を得る。
サーフ(AI) CV:野島健児
サーフ・シェフィールドをモデルとして、セラに作り出された人格プログラム。
性格はセラの願望を反映したもので、他のAIと同じく基本はセラのことを第一に考えて彼女に尽くすというもので、主であるセラがいなければ何もできず、ただ彼女を探し求めてさまよう人形のような存在でしかない。「アスラ・プロジェクト」の進行によって戦闘用プログラムを上書きされ、セラの手によってジャンクヤードに隠された。彼らセラに作られたAIこそがエンブリオンメンバーの前身であるが、現在のサーフ達はジャンクヤードで触れた絆やセラに従うのではなく互いを“仲間”と認め合ったことを経て、かつてのAIとは別の存在になっている。
彼が変身する悪魔は、白を基調とした体色の“フェイクヴァルナ”。
シエロ(現実世界)
テクノシャーマンによる神との交信実験が本格化する以前に、被験者として南米から連れてこられたテレパシストの少年。
明るい性格でセラがとても懐いており、仮想空間で作られたAIシエロのモデルとなった。しかし実験の過程で強すぎる神の情報に耐えられず、狂死したという。
メーガナーダ 〔Meghanada〕
五年前の神が狂った日にヴァルナや四大天使と共に顕現した最凶の喰奴。
「インドラジット(インドラに勝利した者)」という別名を持つ。
四本の腕に昆虫の羽根のような装甲と腹背にそれぞれ五つずつ備わった口を持つ異形の悪魔。意識は完全に悪魔化しており、「GURARA」という不気味な唸り声しか発さない。神話中で打ち破った神の名「インドラ」に異常に執着しており、たまたまインドラの変身能力を身に着けたロアルドに対して尋常でない敵意を露にする。ヴァルナは殺すしかなかったのに対してメーガナーダは封印することに成功した為、EGG施設の悪魔研究室に厳重に保管され、エンジェルはメーガナーダの情報から悪魔化ウイルスを作り出した。
作中、動力プラントに立て篭もるローカパーラを攻めあぐねたカルマ協会兵士に対して、エンジェルがメーガナーダの封印を解くことを命じる。解放されたメーガナーダは瞬く間にローカパーラを全滅させ、エンブリオンメンバーを先に行かせる為に囮となったロアルドに瀕死の重傷を与えた。
しかし、ロアルドとアルジラの命を賭けた策の前に動力プラントごと吹き飛ばされ死亡した。
四大天使
五年前の神が狂った日にヴァルナ、メーガナーダと共に顕現した喰奴達。
構成はミカエル、ガブリエル、ラファエル、ウリエルの四体で、その凶暴性から長らく封印されていた。しかし、エンジェルの命令で解放されカルマシティ中に散らばってしまう。四大天使達の意識は当初から変質の兆候が見え、飢えとエンブリオンメンバーとの交戦により完全に悪魔化し、天使としての意思に従って地上の浄化と神の千年王国設立を目指す。
- ウリエル:EGG施設、キュヴィエ症候群研究室に潜伏。キュヴィエ症候群患者の石化した姿から異世界において裏切り者を粛清した記憶を誘発され、大天使ウリエルの意識を覚醒させる。
- ラファエル:収容所内に潜伏。人肉加工プラントから異世界において千年王国意地の為に住人に苦役を強いた場所・ファクトリーの記憶を誘発され、大天使ラファエルの意識を覚醒させる。
- ガブリエル:カルマ協会本部ヘリポートに潜伏。カルマシティの姿から、異世界において画策した救世主を造り出す計画の記憶を誘発され、大天使ガブリエルとしての意識を覚醒させる。他の大天使がミレニアム設立に執着するのに対し、ガブリエルのみは己を仲間共々倒すように伝え、さらにサーフ達に救世主のこと、“愛”のことを説く。
- ミカエル:カルマシティ外に潜伏。四大天使をまとめる者としてミレニアムを作ることを宣言する。己の主である「神」への思いが強く、サーフ達への殺意を顕わにし、神の名の下に強大な力を振るう。
ブラフマン 〔Brahman〕
梵天。この世界において「神」と呼ばれる太陽の意思が形をなしたものである。
その姿は五つの相(顔)を備えた機械的な存在で、額には真・女神転生Ⅲのアマラ転輪鼓が付いている。また登場シーンでは巨大な脳のイメージで現れている。太陽は膨大な情報の集積体であり、太古の昔から地球環境に影響を与え続けた。「神」は全ての始原であり終着点、輪廻の輪そのもので、死んだ者の情報は神の下に帰り情報の循環の果てに再び地球に戻って来る。そして真の悟りとはエンジェルの言う生物的進化ではなく、神そのものを理解した先で何が一番大切かを知ることである。太陽中心部に辿りついたセラフ達に「自分と戦え」と告げ、五つの相を通して彼らに最後の問い掛けを行う。
テクノシャーマンによる神との対話は両者が言葉を交わすようなものではなく被験者がただ神の情報に包まれるというもので、明確な意思があるかもわからないという。しかし、一方で温かさに満ちており、かつての環境異常やキュヴィエ症候群の蔓延は人類自身の行いに原因があるとセラは感じていた。
情報となり太陽に向かうサーフとセラの思いが一つになった時に生まれた、完全なる人間。変身悪魔は“アルダー”で、アートマは“クラリオン”、印は額にある。
銀と黒半分ずつの髪と男女両方の肉体的特徴を備える。精神はまだサーフとセラが共存している状態だが、やがてそれも融合し一つになるという。転生を繰り返して複数の精神が混在した情報が作中登場するが、セラフは転生を経ずして男女二者の精神が融合した異例の存在であり、そこに人間の持つ無限の可能性と真の解脱に至る鍵が秘められている。それを現すようにシュレディンガーから「君に感じられないことはない」と言われ、また太陽に集まる情報達から特別視される。
そして人の可能性を神に伝える最後の旅の果てにセラフは一つの答えを見つけ出す。
シュレディンガー 〔Schroedinger〕 CV:野島健児
銀色の眼を持ち右耳だけ銀色の謎の黒猫。首にはセラフのアートマに似た形の鈴をつけている。
一作目はジャンクヤードの各所に現れ、時にはサーフ達の危機を間接的に救うような行動をとり、最終的にジャンクヤードの異常さを彼らに教える決定打となった。
二作目ではサーフ達を追うようにニルヴァーナに現れる。サーフ達の考えていることを察しているような雰囲気を持ち、事実エンブリオンの仲間が死んだ際は哀しみに暮れる姿を見せた。EGG内部ではサーフと対面し、初めて名を名乗る。そこで神と輪廻のこと、解脱の真の意味と五年前にあった出来事をサーフに見せた。そして太陽において仲間と共にセラフを出迎え、神の下に行く道中で度々助言と情報体の姿を通して生きる意味を教えた。
ブラフマンとの戦いの後に答えを見つけたセラフの下に訪れて真の姿を現し、仲間のこととセラフがこれから行く先のことを語る。
シヴァ〔Siva〕
太陽第六層で待ち受ける強大な情報体。
この世界ではナタラージャの相(シヴァの神格)をとっている。セラフ達が梵天とまみえる資格があるか、そして彼らが守ろうとする世界の存続を賭けて戦うことになる。戦闘中、終末をしめす言葉やセラフが変身する悪魔アルダーを指して「我がアバタール」と呼びかけ、シヴァの逸話や別名のトリローチャナ(三つの眼を持つ者)になぞらえたスキル『サードアイ』を駆使するなど、種族同様に破壊神の性格が強い。
ヴィシュヌ〔Vishnu〕
太陽第六層で待ち受ける強大な情報体。
この世界ではクリシュナの化身(ヴィシュヌの地上での顕現)をとっている。地上を人の心がアダルマ(悪)に覆われた汚れた世界とみなして浄化の意思を示し、ヴィシュヌを凌駕するセラフ達のダルマ(正義)を己に見せて浄化を止めてみせるように要求する。ヴィシュヌが“ヴィシュヴァルーパ(宇宙的姿)”で描かれるように「我と我が世」という発言をし、破壊によって秩序を再生させるという化身の一つカルキに似た行動を見せる。なお『チャトゥルプジャ』という専用スキルを使うが正しくは『チャトゥルブジャ(Chaturbhuja)』である。
セト〔Seth〕
太陽第五層で待ち受ける強大な情報体。
サタンの半身として、セラフを“裁く者”と真逆の存在であると見止め襲いかかる。己の神性である悪、戦、嵐を最上のものとする、『砂漠の風』『妬みの暴圧』の名を冠するスキルを駆使するなどエジプト神話本来の性格が色濃い。
サタン 〔Satan〕
異なる世界から流れてきた情報。
半身であるセトと共に太陽に来ており、神の裁きを体現する存在としてセラフをかつて自分の前に立ちふさがった“神に抗う者”と認識し襲いかかる。『神の裁き』『神の息吹』という“神”の名を用いたスキルを使用するという女神転生シリーズの性格と共に、『誘惑の果実』というキリスト教における悪魔としての側面を持つ。
最後はセラフがどこに行くのかを問い掛ける情報(ことば)を残して消滅するが、この問い掛けを通してセラフはシュレディンガーから目指すべき“答え”の片鱗をほのめかされることになる。
関連イラスト
DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー A's TEST Server
2006年にアトラスモバイルコンテンツ「メガテンα」で配信が開始された携帯アプリで、ジャンルはRPG。後に売り切りアプリとして配信される。大まかなシステムはPS2版に準じるが、マントラシステムが大きく変更されたり、配置替えや戦闘中の変身解除不可、スキルの装備数が最大六個など差異が見られる。
- あらすじ
主人公サーフは人が人と喰らい合う「カルマの塔」内部の一室で目を覚ました。そこで暴漢に襲われていた黒髪の少女セラを悪魔変身能力で助け、カルマの塔から脱出することを目指す。その中で出会った仲間や敵、そして謎の言葉から次第に真実が解き明かされる···。
- 登場人物
サーフ
悪魔“ヴァルナ”に変身する銀の髪と瞳の青年。
セラを助ける際に暴走しかけるが『歌』によって正気を取り戻したことから、以後彼女と行動を共にし、カルマの塔からの脱出を試みる。今作はサーフ視点の選択肢が多く、怒りを露わにしたり仲間を励ます姿が見られる。
アルジラ
悪魔“プリティヴィー”に変身するピンクパープルの髪と瞳の女性。
他者を喰らうことや悪魔の力を使うことに強い抵抗を感じており、カルマの塔の頂上を目指す理由も「人間に戻ること」である。男らしい口調で、当初はかなり刺々しい態度を見せるが、ミック・ザ・ニックの罠に嵌ったところをサーフに助けられて以降は行動を共にする。喰らうことに執着するヒートに嫌悪を示し衝突することもあるが、いつしか互いに仲間として認め合う。
ヒート
悪魔“アグニ”に変身する赤い髪と瞳の男性。
飄々とした性格でサーフを『兄ちゃん』、アルジラを『姐さん』、セラを『お嬢ちゃん』と呼ぶ。トライブのリーダーになることを目指してカルマの塔の頂上を目指しており、サーフ達に同行した理由も「戦い易い」というもので、かなり好戦的である。強さを求めるが故に倒した敵を貪欲に喰らったり、セラを「足手まとい」と呼ぶなどしてアルジラと衝突することがあった。しかし、物語中盤でアルジラがヒートを庇って怪我を負ったことから、「仲間」を意識するようになり、トライブに関する野望も少しずつ変化していく。
セラ
黒い髪と瞳の少女で、“歌”により悪魔の力を抑えることができる。自身の名前以外のことを覚えておらず、サーフと共にカルマの塔からの脱出を目指す。
シュレディンガー
サーフ達の前にたびたび姿を現す黒猫。
アルジラいわく“化け猫”。人語を喋って意味深な言葉をサーフ達に投げかける。その発言は階層を上がるごとに謎を増し、カルマの塔の正体をほのめかす言葉をもたらす。
ミック・ザ・ニック
カルマの塔の低階層を牛耳る男。頂上を目指す者を襲って喰らうことから、塔内部の人間から恐れられており、計略も用いる。ただし、実際に戦うことになるのは彼の部下である。
シエロ、ゲイル
カルマの塔のある階層で出会うことになる人物。シエロは初対面でありながらセラと面識があると発言し、ゲイルは同行していた人物としてある男の名を挙げる。
That's catch22
メディアワークスから刊行された『デジタルデビルサーガ〜アバタールチューナー〜ザ・マスターガイドI・II』に前・後編で収録された里見直作の小説。後期の原案小説『クォンタムデビルサーガ』とは独立したゲーム版準拠の作品である。
- あらすじ
舞台は21世紀に入って十三年ばかり過ぎた2014年のイェール大学。学生のヒート・オブライエンが巻き込まれたヘンリー・ハリス教授殺害事件を通して、彼とサーフ・シェフィールドとの接触が語られる。ヒートとサーフの事件推理を主軸にした作品であるが、背景描写や遺伝学の言及を通して、ゲーム本編との繋がりがほのめかされている。
タイトルは“八方ふさがりの状況、ジレンマ”を意味する慣用句と作中語られるある言葉のダブルミーニング。
- 登場人物
ヒート・オブライエン
イェール大学医学部進学過程の二年で、一年飛び級している。
姓はアイルランド系移民の母方のものである。幼い頃に『22q11・2欠失症候群』を患っていた妹を亡くしたことで遺伝病と“神”に対しての憤りと不審を抱き、医学——遺伝学を志すようになる。
サーフ・シェフィールド
イェール大学の二年で、学内最年少(二年飛び級)。
正体定かならぬ面があるが、事件に巻き込まれたヒートを助け共に真相を追う。カウンセラー志望という本人の談の通り、パワープレイなどの心理テクニックや巧みな弁舌を駆使し、相手を自分のペースに巻き込むことを得意とする。
ヘンリー・ハリス
先端遺伝学を専攻しているイェール大学の教授。四十八歳の若さで教授職に就いており、医科大一の伊達男と称される偉丈夫である。彼の殺害事件とそれにヒートが鉢合わせたことから物語が始まる。
アレン・ハーヴェイ
FBI捜査官。ヘンリー・ハリスおよび彼と親交のあった人物にある容疑がかかったことから事件捜査に関わる。
マルゴ・キュヴィエ
奇病『キュヴィエ症候群』の発見者である世界保健機構所属の博士。イェール大学で講演を行う予定で、そのブッキングを行ったのがヘンリー・ハリスだった。
クォンタムデビルサーガ アバタールチューナー
五代ゆうによる『DIGITAL DEVIL SAGA アバタール・チューナー』の原案小説。
第一巻は2011年2月18日発行で、“煉獄(前、後)”“辺土”“楽園(前、後)”の全五巻の三部構成。世界観とキャラクター、大まかなエピソードはゲームと共通しつつ、人物・悪魔の能力、各種設定の追加や変更があり、覚醒のタイミングなどのストーリーの展開もかなり差異がある。“辺土”篇に顕著であるが、SF色が強いのも特徴である。
用語
※以下ネタバレを含む
DDSAT
トライブ
ジャンクヤードの覇権を巡り、そこで戦闘を繰り返す集団の総称。
それぞれのトライブは色で区別されており、トライブ構成員は色にあわせたボディペイントを行い、支配下に置いたエリアには旗を掲げる。現在、六つのトライブが六つのエリアにわかれている。彼らはカルマ教会が制定した“掟”に従っており、“掟”には「トライブ同士の抗争はリーダー打倒をもって終了」「敗れたトライブの構成員は、勝利したトライブの長に従う」「全ての者はニルヴァーナをめざさなければならない」などがあり、各トライブにはカルマ協会の示達を受ける為の機械がある。
カルマ教会
ジャンクヤードの活動を監視し、覇者たるトライブの出現を待つ機関。
トライブ間の抗争には一切干渉せずただ淡々とその審判をつとめるが住人達に掟を課し、聴聞機を通してルールを改変する強大な権力を持っている。サハスララが本部であり、ベンダー、カルマ端末、マントラなどの様々なサービスをジャンクヤードの人間に提供している。
タグリング
ジャンクヤードに住まう全ての人間が持つ個人情報認識票。
IDナンバーから戦績まで全てが記録されており、タグリングを通してカルマ教会のサービスが提供される。タグリングには“マッカ”という戦績点も記録され、戦闘において効率よく敵を撃破することによって加算される。そして貯蓄されたマッカを使用することで上記のサービスが利用できる。
ニルヴァーナ
悟りの境地、涅槃の名を持つ約束の地。
ジャンクヤードの全ての住人が目指すことを掟とされている地で、覇者たるトライブのみが到達できる。しかし住人はそこがどんな場所か知らされておらず、「楽園」という漠然とした認識しか持っていない。
アートマ
悪魔化ウイルスを受けた人間が覚醒する悪魔化能力および、その能力者の体に刻まれるアザのこと。
悪魔化した人間は通常の人間を遥かに上回る強大な力を持ち、他者を喰らうごとにその力は増大していく。だがそれゆえに能力者は人間を喰らい続けねば生きていけない身体になってしまい、喰らい続けるうちにやがては人間性や自我を失い、最後には敵味方の見境なく屠り喰らう悪魔そのものとなる。また喰らわなかった場合も上記の様に意識が変質して悪魔化してしまう。さらに変質した意識や変身悪魔を器にして、より特異な存在が宿ることもある。
アートマによって発現する悪魔は元々人間および全ての存在の中に備わる情報因子で、いうなれば人間を人間たらしめる本質、業そのものであり、ウイルスは起爆剤に過ぎない。悪魔化能力者の呼称についてはジェナ・エンジェル派が“喰奴”、マルゴ・キュヴィエ派が“アバタールチューナー”と呼んでいる。人間に備わる隠れた本質の発現には、既存の女神転生作品で言えばペルソナシリーズにおけるペルソナ能力に近いものがある。
自我
ジャンクヤードの住人は元々戦闘や日常生活に関する知識以外は持たなかったが、アートマの獲得を境に感情を発現し“前世”の記憶を取り戻す者が増えた。記憶、感情、自我は強く心を動かされることで発現し、その際に目の色に光が宿る。
また、自我とジャンクヤードにおける肉体にはあまり関連がなく、青年の肉体に壮年や老年を思わせる記憶が宿ったり、女性の肉体に男性の意識が発現したりすることがある。そして自我が発現した者の中には、一度自分が死んだ記憶やジャンクヤードに存在しない事象を口にする者がいる。
生体マグネタイト
あらゆる構成情報に微量ながら含まれる物質で、特に人間と悪魔に膨大な量が宿っている。アートマを得た者は生体マグネタイトを急速に消耗する体質になるため、不足分を補う為に人間や他の悪魔を喰らって多量に摂取しなければ生きていけなくなる。
生体マグネタイトが枯渇すると死ぬと言われているが、大体はその前に凶暴化してしまう事が多く、
理性が無いまま周囲の人間や味方を構わず喰らい尽くす存在となる。
ソーラーノイズ
情報雑音。一定周期で変動する太陽からの干渉で、悪魔の身やセルの質に影響を与える。
女神転生シリーズにおける、月齢に当たる。
ニュービー
既存のトライブに属さないジャンクヤードの新参者。
どこからともなく現れ、トライブに加わることで新たな構成員となる。ニュービーが集まって新たなトライブを興すことも可能だが、既存のトライブを撃破してエリアを支配しなければトライブとしてカルマ教会に認められない。アートマが出現した後に現れたニュービーの中には、それ以前の住人が知らないジャンクヤードやニルヴァーナについての知識を持つ者がいる。
DDSAT2
ニルヴァーナ
現世。サーフ達ジャンクヤードの住人が目指した楽園とはかけ離れた荒廃した世界。
黒い太陽
ニルヴァーナを照らす、空と大地を不気味な黄色に染める黒い太陽。
かつては生命を象徴する赤い輝きに包まれていたが、五年前突如としてその表面は黒点に覆われ現在はソーラーノイズの元凶として地上を睥睨している。アートマを得た人間は黒い太陽の下でも生きていけるが、通常の人間は光に含まれる有害な情報に侵され瞬く間に結晶化してしまう。
キュヴィエ症候群
20世紀末に世界中で続発した身体が石のように結晶化する奇病。
名は発見者であるマルゴ・キュヴィエの名にちなんだものである。ニルヴァーナの人間はこれによって地上での生活を追われ、地上において国家体制を確立しているのはカルマ協会のみである。カルマ協会では発症した者の身体を基にキュヴィエ症候群を研究する施設を擁していたようだが、現在は研究自体凍結されたようである。
アトラス発の作品である魔剣Xには“石死病”という人体が石になっていく奇病が存在する。
カルマ協会
マルゴ・キュヴィエを長とする、太陽の黒化現象とその後の戦乱と荒廃によって滅亡に瀕した人類をまとめ上げ、その存続を目的とする団体。
地上において唯一の国家機能を維持する組織で、選ばれた超一流の頭脳を持つエリートによって構成されている。協会はカルマシティと呼ばれる都市を支配している。シティ全域は天に張られたドームによって黒い太陽の有害な情報から守られている。シティ住人はかつての人類そのままに栄華を楽しんでおり、その意識は選ばれたエリートとして自分達以外の愚かな人間は生きる価値がないという選民思想に染まっている。また悪魔化ウイルスの研究が進んだことで、警備部を中心にアートマを獲得した人間が増えている。
EGG
テクノシャーマンが“神”と交信する為の装置。
テクノシャーマンによる交信は人間が神の情報を取りだすことが可能な唯一の手段であり、その情報を研究・利用することによってカルマ協会は高度な技術を獲得しているいわば協会の心臓部にあたり、研究施設の最奥部において常に厳重なセキュリティに守られている。EGG本体は名の如く卵型をした巨大な機械で、内部のテクノシャーマンにHAARP施設を通して神と交信させるという手法をとっている。
地下街
黒い太陽によって地上を追われた人類が作り上げた生活拠点。
海を挟んでカルマシティにほど近い所にあり、アートマを得たシティ住人の食糧確保のために“人間狩り”の対象とされている。地下街の資材だけでは生きていけない為、住人達は日光の影響を受けない夜間に地上へ赴き物資を調達して糊口をしのいでいる。公式ガイドブックでは世界中にこのような地下街が点在していることが言及されている。
アスラ・プロジェクト
カルマ協会と軍が立てた戦闘用AI開発計画。
計画概要は、市街戦を想定した仮想世界において戦闘用AI同士を戦わせ勝ち残った優秀なAIを選別し、チップとして取りだすというもの。チップを現実世界の兵士にインプラントすることで戦闘能力を上昇させることが目的である。サーフ達が居たジャンクヤードの正式名称は「アスラ・プロジェクトステージ1」で、上記の選別の為の“闘技場”である。
ただし、戦闘用AIである仮想プログラムはもとよりジャンクヤードを構成するシステムを人の技術と知恵だけで造り出すことは不可能であり、神と交信できるテクノシャーマンの能力によって開発された。
アスラAI
「アスラ・プロジェクトステージ1」に投入された戦闘用AI。
本来は戦闘と生活を営む為の最低限の知識以外は持たず、ただ管理側の命令に従って、戦い勝利することのみを目指す。戦闘用AIであることから、飛来するボウガンの矢を銃で撃ち落としたり、素手で石床を叩き割ったりなど超人的な戦闘技能や身体能力の高さを見せる。また彼らが仮想空間において収集した情報セルには、管理側が解析することで新たな技術を生み出す素材の役目がある。
作中アスラAIが変身する悪魔を総称して“阿修羅”と呼んでいる。
悪魔化ウイルス
ジェナ・エンジェルが五年かけて構成した複雑な波長パターンの電磁波。
照射されたものは悪魔の力、アートマを身に宿すことになる。ウイルスと銘打たれてこそいるがアートマ保持者から他人に感染するということはなく、生体の構成情報に侵入し変質させるという性質そのものが“ウイルス”に近い。エンジェルがジャンクヤードにおいて悪魔化ウイルスの実験をした理由は、仮想空間・現実世界どちらも情報によって構成されていることから本質に差はないと判断した為である。
この世界における“輪廻”の起点であり終点である、巨大な情報集積体。
太陽の外部はプロミネンスのような情報の嵐が吹き荒れているが、その内部は無数の蓮華と光が舞う穏やかな対流層を始めとしたいくつもの層に分かれている。太陽の各層には植物の根の様な通路、オーロラや星雲が広がる疑似宇宙空間、様々な情報体が集う無数の球状空間などの幻想的な世界が存在し、それぞれが神経細胞の様な管と花に似た門によって繋がっている。そして中心核に鎮座する巨大な蓮華から吹き上がる情報の渦の果てに「神」が存在する。太陽内で乱舞する金色の花弁はそれぞれが地球から吸い上げられた情報であり、物質として存在した者もデータとして存在した者も等しく太陽の中心核に吸い上げられる。
そして各層の間では、真実に気付けない為に悲しみと苦しみの輪廻に縛られてしまった情報体(今までに倒してきた登場人物たち)がセラフ達に牙を剥き襲いかかる。