概要
ギルティギアシリーズのアークシステムワークスが開発し、セガがリリースした業務用2D対戦格闘ゲームの通称。主にタグとして用いられている。使用基板はサミーのATOMISWAVE。
後述するようにゲームバランスが非常に不安定な事で知られており、それが原因で「一周回って面白い世紀末ゲー」という評価になるなどかなり珍しい扱いを受けたタイトル。
格闘ゲーム大会配信などにおける本作の人気から、バランスが著しく不安定なゲームが「世紀末ゲー」「世紀末バランス」等で呼ばれるきっかけにもなった。
また、ジャンルは後述するようなテクニックがある事から格闘ゲームではなくスポーツゲームであるという主張もある。
PS2に『北斗の拳 ~審判の双蒼星 拳豪列伝~』として移植版が販売されていたが、ACであった不具合を修正したにもかかわらず逆に元のゲーム性を損ねてしまい、移植作としてのクオリティは高いものの劣化移植扱いを受けている。
ただし、現在はAC北斗の拳の筐体は殆どの店で置いていないため現状で最もプレイのハードルが低いこともあり、中古市場で値段が高騰しており4000円~5000円程の高値で取引されている。
海外ではそもそも海外版が発売されていないこともありebay等では日本の2~3倍の値段で取引されている。
プレイアブルキャラクター
- ケンシロウ (CV:河本邦弘)
- ラオウ (CV:内海賢二)
- トキ (CV:土師孝也)
- ジャギ (CV:戸谷公次)
- シン (CV:古川登志夫)
- レイ (CV:千葉一伸)
- サウザー (CV:銀河万丈)
- ユダ (CV:島田敏)
- ハート様 (CV:飯塚昭三)
- マミヤ (CV:藤田淑子)
以上の10人。ケンシロウとレイ以外はアニメオリジナルキャストであり、ここまで揃い踏みの北斗作品は事実上これが最後になる。
アーケードモードでは、ラスボスとして拳王(ボス性能版ラオウ)が登場し、全キャラで固定。
家庭用版でのみ、条件を満たすことで拳王が使用可能になる。
プレイアブルキャラクターの数は格ゲーとしては十分揃っているが、多いとも言えない数。
発売当時はシュウが背景キャラになっている事や、アミバやウイグル、リュウガ、南斗五車星など印象的なキャラクターが登場しない事に不満の声が聞かれる事もあった。
システム
ラウンドコールやシステム、システム名称などはアークシステムワークスの平時の作品であるギルティギアシリーズ等と近く、横文字の名称が付いている。
- グレイヴシュート(A+C):相手を上空に打ち上げる技。上入れっぱなしで追いかけるようにジャンプする。ジャギのみ中段でハート様はない(代替技はある)。
- ヘヴィーストライク(A+B):出が遅いが、ガード不能+ヒットするとよろけ状態になり、更に七星ゲージを1つ奪う。
- バニシングストライク(C+D):七星ゲージを1つ奪う+敵を壁まで吹き飛ばす効果を持つ。
- ヘヴィーバニシングストライク:上記の最大タメ版。ガード不能になる。通称「溜めバニ」。
- ブースト(E):前方へ高速で移動する。ほぼあらゆる行動をキャンセルできるという類を見ない暴力的な性能をしており、本作における最も危険な要素。ハート様のみない。
- 世紀末体力ゲージ:回復可能ダメージと回復不能ダメージがあり、前者は地上に足を付いている間じわじわ回復し続ける。
- ガードゲージ:一部のキャラのみに存在。敵の攻撃をガードし続けるとガードクラッシュし、無防備になる。
全体的に見るとアークゲーシステムでよく見るものが多いが、発売当時は横文字のネーミングが北斗の拳の世界観にそぐわないのではないかという意見も多かった。
また、いわゆるコンボゲーであるため一撃一撃の威力は基本的にそこまで高くなく、コンボを決める事で初めて大ダメージを与えられる為にこれも原作の一撃必殺のイメージと真逆であるなどと、原作ファンに批判される事があった。
また、格ゲー化に伴い「地に膝を付かない」はずのラオウが普通にしゃがんで地面に膝を付いている事がツッコまれる事もある。しかし、過去にその設定を拾って再現したゲームはいくつかあったものの、そのしゃがめない・ジャンプできないという点が災いしてめちゃくちゃ使い勝手が悪かったり、別にそれが特に面白さにつながっていないというケースもしばしばあったため、格ゲーとしての体裁を優先したと考えると致し方ないのかもしれない。
そもそも膝をつかないという台詞はラオウの意地を端的に言い表したもので、膝をついた拳法も普通に使用する。
なお、実際に触ってみると操作性がかなりシビアという点も特徴となっている。
コマンド入力はかなりしっかりとやらないと技が出ず、更に複雑なコンボ中にも正確に技を出さないといけないために格ゲーとしての敷居がかなり高い。
実際、上級者プレイヤー(通称修羅)たちでさえもコマンドミスして別の技を暴発させてしまう様が見受けられ(ユダのダムが伝衝裂波に化ける、ケンシロウでレバー入れ通常技の岩山両斬波に化けるなど)、当初は後述するゲームバランスの悪さ等と合わせて「対戦ツールとしてはいまいち」というような評価になっていた。
北斗七星ゲージ・一撃必殺奥義
上記で一撃必殺性が低いと書いたが、本作ではその部分を再現するために北斗七星ゲージと一撃必殺奥義というシステムも存在する。
- 七星ゲージ:特定の技ヒットにより減少していき、0になると死兆星が点灯する
- 一撃必殺奥義:相手に死兆星が輝いている時のみ使用可能な技。ヒットすると相手の残体力にかかわらず即死で、しかもコンボに組み込める(ハート様はできないが、1F投げという超性能)。
『ギルティギア』シリーズでも一撃必殺技は存在していたが、実戦で当てる事が非常に困難もしくはコンボにしても相手の協力が必要など魅せ技・舐めプなどという位置づけだったのに対し、本作では普通にコンボに組み込めるために、実戦でも十分に戦略に入りうる。
稼働当初はコンボに組み込めてしまう事について、プログラムミス・設計ミスの類ではないかとまことしやかに囁かれていたものの、後に開発陣が言及した所によると「そうなるように製作した」ようである。
発動すると「YouはShock」おなじみクリスタルキングの名曲「愛をとりもどせ!!」のBGMが流れるこだわりっぷり(通称「テーレッテー」)で、一撃必殺技を当てると専用BGMが流れる格ゲーの走りとなった。
ツッコミどころ・ネタ扱いされるポイント
原作を再現しすぎている系では
- ケンシロウの北斗残悔拳が決まると即死までの秒数が表示される(本当に3秒ではないが0になると死ぬ)
- 原作通りサウザーのみカウントが0になっても高笑いするだけで死なない。
- 「秘孔よろけ」という状態異常は秘孔を突かれにくいハート様とサウザーのみ短い。
- レイの断己相殺拳に対してラオウの秘孔新血愁を返すと絶対にラオウ側が勝つ(それぞれの技の仕様による偶然の一致)。
- レイがマミヤを一撃必殺奥義飛翔白麗で倒すと、マミヤの服を切り裂くというサービス要素。
- レイがユダを飛翔白麗で倒すと、原作のユダの最期が再現される。
- ユダが「俺を利用したのか~!」で反逆状態になったダガールを原作通り「南斗鷹爪破斬」で真っ二つにできる。そのラウンド中ダガールが使えなくなるが、ゲージを回収できる。
- シンに自殺技がある。しかも自殺成功すると七星ゲージが回復するので、普通に有用。
- ジャギにシン相手のみ出せる「今は悪魔が微笑む時代なんだ!」がある。実用性皆無。
- ジャギは空中でしか北斗千手殺が出せない。
- ジャギは挑発で銃を捨て、その近くでダウンした時のみ出せる技がある。発動すら至難の業。
- ジャギが「俺の名を言ってみろ」を発動すると実際に答えさせる(3択)。
- 外すと原作通りの流れになるが当てられると「なぜだー!」と頭を抱える。
など。
格ゲー化の都合で変わっているものは
- ケンシロウの天破活殺がどうみてもMVC系の真空波動拳のようなビーム。
- トキが攻撃技として勝手に相手の刹活孔を突く。しかも性能は鬼強く、敵が強化される要素もない。
- 北斗羅漢撃の最後にジャギが疲れる演出が入っている。
などがしばしばツッコまれる。
ゲームバランス
上で述べたように、本作はゲームバランスが著しく悪い事でも有名。
稼働当初からトキの異常性が認知されており(正確に言うとロケテ段階からだったという話もあるが)、トキのコンボを完走できるプレイヤーであれば何も知らない相手を鬼のような固め・崩しから一気に殺しきる事も可能など、まさに世紀末の無法バランス。
本作は現在のアーケードゲームのようにオンラインでのアップデート、修正が当たり前のように行われるようになるギリギリ前の作品であり、こうしたバランスの悪さにもかかわらずアップデート版を出すことすらも出来なかった(ATOMISWAVEはネットワーク機能こそ標準対応なのだが、ソフト供給がROMカートリッジであったことと、AW-Net自体があくまでオンライン対戦システムに特化したものだったのもこれに起因している)。
しかしその後、後述するようなプレイヤーたちの研究により様々なキャラのテクニックやコンボ、更にバスケと呼ばれる事実上10割コンボになるテクニックの開拓などが起こり、明らかにバランスがおかしくぶっ壊れているのだが、全キャラがぶっ壊れ要素を持つ事でワンチャンつかめば逆転勝利も可能である事が発覚した。
これにより、「めちゃくちゃおもしろいクソゲー」「一周回って神ゲー」等と言われるようになり、長年愛されるゲームとなった。
中野TRFをはじめとするニコニコ動画やニコニコ生放送を使用した対戦動画や試合の動画の投稿及び生放送と、大会参加者や実況のぶっ飛んだ言動。
そしてワンチャンから全てかっさらっていくほどの壊れたゲームバランスから今なお愛されており、現在でも大きな大会が開催される他、コンボが開発されたりバグが発見されたりしている。
世紀末スポーツアクションゲーム(主なバグ)
本来のジャンルは対戦格闘ゲームなのだが、AC北斗の拳については世紀末スポーツアクションゲームと言う異名がファンの間では用いられている。
現在では修羅勢のやりこみの果に様々なコンボ・バグ技が開拓されており、理論上は様々なキャラで以下のようなテクが使えるという事が発覚している。
それどころか、様々な「新発見」のバグが出てきたり、バグ技とバグ技が組み合わせ可能である事が発覚するなど、尽きる事ないバグ技の大鉱脈状態。
多数のバグがあるが、本項では代表的なものを述べる。
バスケ
「連続技のヒット数が一定を越えると、なぜか地面にぶつかった相手がボールのように大きく跳ねる」という現象の事で、この状態になる事を「空気が入る」等と言われる事もある。
最初に発見されたのはラオウで、ラオウの外見がスラムダンクの魚住に若干似てる事、ラオウのペチペチした動きがバスケのドリブルっぽかった事などからバスケと命名された。
当初はこの現象は何らかのバグによりベクトルが反転してしまっているのではないかと言われていたが、
実際はバグでもなんでもなく仕様通りの挙動である。
現在の格ゲーでは一般的に永久コンボを防止するために、コンボ数によって硬直時間が短くなったり、落下していく速度がどんどん上がっていくという仕様が存在する場合が多いが、本作の場合、地面に衝突した後の跳ね上がり速度が落下速度の約30%に固定されているために、一定以上の速度で地面に衝突した場合、追撃が可能なぐらいの高さまで打ち上がってしまう。
そうなってしまうと、落下速度はリセットされないどころか更に早くなり続け、長時間バスケされるとどんどん高く跳ね上がっていく・・・というおなじみの珍現象が起こるのである。
このバスケが見つかった当初はラオウだけ、その後一部のキャラだけで可能だと思われていたが、修羅たちによる研究が進んだ結果、実は全キャラ一応可能である事が発覚した。
難易度で分けるとマミヤ、トキ、ユダ、レイが普通、ラオウ、ケンシロウ、サウザーがやや難しく、ジャギ、シン、ハート様がかなり難しいという具合である。
ハート様の場合普通に殺した方が速いため完全に魅せ技の域。
なお亜種テクニックとして、
- 百烈:他のコンボでヒット数を稼いでおき、移動ブーストで滑りながらバスケに持ち込む
- ドリブル:35HITほど+やや高めから開始し、微ダッシュを挟んで百烈のようにバスケに持ち込んでブーストゲージを節約する
- トラベリング:60HITほどからバニ>小足すると何故か小パン連打が当たるようになる
といったものが発見・開拓されており、理論上様々なキャラで可能である事が発覚した。
蓄積バグ
目に見えないバグという一番厄介なもの。
本作ではコンボが長くなるにつれ、攻撃を当てた時のゲージ増加量や気絶値の蓄積が多くなるという仕様が存在し、「10ヒット目以降は強制的に気絶値加算は0」になるはずが、起き上がりに攻撃を重ねるとその加算されていないはずの気絶値がまとめて加算されるという恐ろしいバグ。
しかも、ガークラ値やブーストゲージの増加にも関連しており、長いコンボの後にわざと落として起き上がりに何らかの攻撃を重ねると、数発で相手がガークラしたり、攻撃を当てた側のブーストゲージが一瞬で2本ぶん増加したりと、奇妙な現象が起こる。
結果として、蓄積狙いの起き攻めという新たな攻防が生まれた。
なお、ユダのみ所持技にバグがありそれが起き上がりに勝手に影響を及ぼすため、下手にリバサ技を出さない限りはこの蓄積が乗らないという不思議な現象が起こる。
ムテキング
シンで起こるバグ技。グレ→J仕込み南斗千手斬(2369+EずらしC)→弱南斗獄屠拳と入力し、成功するとシンがその後も完全無敵になるというとんでもないバグ技。
ただし弱点もあり、投げ・当身投げを喰らう、シンが無敵のある技を出すと消失する。
投げのないマミヤはこれを使われると詰む。
現実的な難易度でできる事、完全無敵になれるという点から他ゲーで見れば間違いなく反則級の技なのだが、本作の場合狂った当て身投げ・投げ性能を持つキャラが数名居ることや、シンの側も使う技に縛りが出てくる事などから、闘劇ですら使用が容認されていたりした(フリーズしないという理由により)。そもそも実戦でできるといっても難易度が非常に高く、普通に殺しに行く方がまだ安上がりなのが実情である…
バグ昇竜
通称トベウリャ。
A+C>923EずらしCと押すだけで出来てしまう凶悪な技で、通称の通りにボイスが再生されれば成功。
難易度が低いのに対して複数の意味で危険な面があり、これが発生した場合、レイの側が意図的に打ち切らない限り南斗撃星嚇舞がヒットし続け、バーストのない本作ではレイ側の勝ちが確定する。
しかし、これで敵をKOしてしまうとそのままヒットし続けて試合が終了しなくなり、最終的に筐体がフリーズする。こうなると強制終了せざるを得ないので、最悪筐体や基板にダメージを与える可能性がある。
バグ技の発動とその後のキャンセルをあわせてブーストゲージが1.5本ないといけないため、それ以下でこの状況に入ってしまった場合は強制終了不可避である。
あまりに危険+進行妨害になりうるため、北斗の聖地である中野TRFにおいても当初は「1.5本以上ある場合のみ可、フリーズさせたら出禁」として自己責任で使う事を容認していたが、後に禁止技となっている。
なお、恐ろしい事にこれ以外にも筐体がフリーズするバグは複数ある。
見た目にインパクトが抜群な事から、連続ヒット判定を伴うアッパー系の技が「バグ昇竜」と俗に言われたり、同人ゲーなどにおいても本技をパロディした演出があったりする。
空中で地上技が出る
グレ仕込みから一撃技を出す事で、本来地上でしか出ないはずの技が空中で出てしまうというバグ。
また、ケンシロウの場合北斗有情猛将破の3段目をブーストキャンセルすると1Fだけ地上判定になるというバグがあり、そのタイミングで仕込んでおいた技を出すと空中技を出せるというバグもある。
3段目の瞬間にACEを同時押しすると地上でしか出せないグレが空中で出せるというお手軽かつ楽しいコンボルートがあるため、ブーストゲージさえあればリバサや対空からグレ始動のコンボに行く事も可能である。
研究によりトキ、ラオウなども空中地上技を出せるバグが発見されており、空中から有情破顔拳を撃つトキ、空中で地上版のサイを出すラオウなどシュールな光景が繰り広げられる。
家庭版
AC版稼働から約1年3ヶ月後の2007年3月にPS2版が発売された。(その翌年には廉価版も発売されている。)
本作が話題となった後、急激に需要が高まり一時期中古市場などから消えるほどだった。
なお、仕様の関係で一部アーケード版とは細かい部分で技性能が異なるために練習に使えないキャラもいる点は注意が必要である(ユダ・サウザーなど)。
また、ムテキングとバグ昇竜は修正されている。
また、家庭版追加要素としてヒストリーモードという申し訳程度のストーリー要素が追加されているが、プレイアブルキャラの数が限られている為に実質アーケードモードとあまり変わりなかったりする。
このモードの全課題をクリアするとラオウのボス性能版である拳王が使用可能になる。
もうひとつおまけモードとして、「指先一つでダウンモード」というオーラゲージ・ブーストゲージMAX、両キャラ死兆星点灯(七星ゲージ0)の状態からスタートするまさに一撃必殺のモードが存在しており、某ダイブしてキックするゲームめいて盛り上がる・・・かもしれない。
※但し、隠し要素扱いのためオプション設定で特定の項目を設定しないと使用できない。また、アーケードモードでは強制的に無効となる。
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