概要
2003年~2012年にかけて開催されていた大規模な格闘ゲーム大会。
当初の主催はエンターブレインで、各社が協賛する形で参加していた。
2000年前後、「冬の時代」と呼ばれるほど冷え込んでいた格ゲー、ゲーセンを盛り上げ滅びの運命を回避すべく企画された大規模大会。「格ゲーの裾野を広げる」「格ゲー・ゲーセンを盛り上げる」をコンセプトに、2003年以降毎年開催された。
00年代中頃からは、ネット配信サービスの普及、格ゲー配信の人気の高まりを受けて闘劇も配信に乗り出し多くの視聴者を獲得した。大きな話題性のあるイベントとなっていたものの、運営システム上の問題や第9回の不祥事、そして第10回がトドメとなり幕を閉じた。
2015年以降はニコニコ主催の「闘会議」として開催されているが、2020年に新型コロナ対策で中止されたのを最後に、翌年はオンライン開催、2022年以降はニコニコ超会議に吸収される形で消滅した。
エンターブレイン→角川への吸収合併でGzブレインに→KADOKAWA Game Linkageに名称変更という流れがあったため、実質的にドワンゴとのコラボでイベントを継続していた形である。
早期から格闘ゲーム大会の有料配信を行っていたことでも知られており、本戦部分が有料だった(しかし、これについても後述する問題が指摘されることがあった)。
システム
競技人口の多いタイトルの場合、希望するゲームセンターを地区予選会場とし、その地域から代表プレイヤーを選出する。本戦出場するためには大会本部から発行される切符を獲得しなければならない。赤切符と青切符の2種類が運用されていた。
赤切符は地区予選を勝ち抜くことで獲得でき、赤切符持ちによるブロック決勝(チーム戦)が行われる。勝利チームの参加者には青切符が与えられ、本戦への出場権を得る。
ブロック決勝で青キップを獲得できなかった場合でも、赤切符持ちチームは当日予選に参加できる。当日予選で勝ち上がることで、本戦の出場権を得る事ができる。
なお、参加者が少ない(応募店舗)が少ないタイトルの場合は地区優勝時点で青切符が与えられるケースがあった。他の大規模大会の優勝・上位入賞選手などにも招待選手枠として青切符が与えられることもあったが、こちらに関しては後述する大会運営上の問題点として指摘されてもいた。
選定タイトル
その年に遊ばれていた格ゲーということで、対戦ツールとして人気の定番タイトル+その年の新作という格好が多い。
カプコンタイトル、SNKタイトル、「メルティブラッド」シリーズ、「ギルティギア」シリーズ、「鉄拳」シリーズ、「バーチャファイター」シリーズなどが主要タイトルだが、『北斗の拳』『戦国BASARA X』なども選出された事がある。
問題点・不祥事・終焉までの流れ
地方狩り(転校生)問題
上述したように、予選会で優勝し赤切符入手→ブロック優勝することが青切符入手の条件となっているが、この予選・ブロック決勝の参加回数や地域には縛りが無かった。そのため、東京や大阪などの超強豪チーム当たりやすい地域を避ける、予選会のスケジュールが早い地域で負けた後に別地域への遠征を行うという行為が横行していた。
こうした行為は大会初期から問題視されていたが、開催を重ねても運営が目立って対処することはなかった。有償配信を行う都合上有名・競合選手が本戦出場してくれたほうが視聴者も食いつくという商業上の理由などからわざと放置しているのではないかという疑惑の声もあり、「地方のゲーセンを盛り上げる」という当初のテーマに反している点が批難された。
第7回以降になると、当時「アルカナハート」シリーズで強キャラとして猛威を振るっていた犬若あかね、犬若なずな姉妹が転校生として追加されたキャラことになぞらえて、「転校生」「転校生戦法」などと言われることもあった。
過剰演出・無理なアングル
格ゲー、ゲーセンを盛り上げるというテーマで始まったはずの大会だったが、真剣勝負を演出しようとするあまり、過剰なアオリ、実力主義アピールを組み込んでしまう事がしばしばあった。
壇上で敗北した選手に対して実況が「敗者は去れぇーっ!!」という罵声にも近い一言を浴びせて早々に退場させようとするなど、一般常識、出場選手に対する敬意を欠いた言動行動が見受けられる一幕もあり「格ゲーの裾野を広げる」というテーマに反した印象を与えてしまっていた。
また、プロレスで言う「アングル」のように、有名プレイヤー間の確執の捏造、そうした演出に役立ちそうなプレイヤーに前述の招待選手枠として青切符を渡している一面もあり、大会の不公平さを感じさせる部分として参加者・視聴者からは不評だった。
第9回:運営陣のミスと海外勢への対応
2011年に開催された第9回での事務手続き上のミスと、それに関連する一連の対応で発生した騒動。32枠しかない出場枠に対し、33枠が招待されているというあまりにも単純すぎるミスだったうえに、その事後処理があまりにひどかったことから炎上が発生。
運営側は当日朝になってから急遽アメリカチームとクウェートチームを対戦させ、敗北チームを不戦敗にして解決しようとしたうえにその際に「クウェートチームの遅刻」という嘘の説明、アメリカチームへの説明時にクウェートチームを侮辱した…という事がアメリカチームメンバーによって暴露されたことで発覚した。
なお、海外から参加していた選手を自分たちの都合で敗退させたにもかかわらず交通費・滞在費などの補填金は一切支払われなかった。そもそも闘劇の賞金は個人で5万円、3人チームで15万円と(日本の法律の問題があるとは言え)非常に低額のため、ほとんどの選手はリターンなど望めるべくもなく自腹を切って参加してくれているという構図になっているが、その中でも特に高額を使っている海外勢にすらこの扱いな点が積年の不満に火をつける格好となった。
第10回:屋外闘劇
前年までの失策で権威が揺らいでいた闘劇のブランド価値を完全に破壊した回。悪い意味で伝説の回となっており、後々の語り草となっている。
今までは幕張メッセ、ディファ有明、JCBホールなど、首都圏内といえる範囲で開催されていたものが、突然この回で大きく都心から離れ、千葉県は成田市にある下総フレンドリーパークなる会場となった。この会場は屋外公園のような施設で、都心からの所要時間は2~3倍。一旦東京を経由しないといけない地方勢にとっては移動の負担が従来以上に激増することとなった。
運営によればゲーム音楽ライブ、ステージイベント、STGやパズルなどの大会と合同開催になった為とされるが、参加者や観覧車の都合は全く考えられておらず歴代の中でも最悪の回となった。運営担当が地元青年商工会議所にあった為にトラブルが頻発したが、観覧チケットは大幅に値上がり、しかし入退場がまともに管理されておらず不正に出入りし放題など問題点は多岐にわたった。
しかもこれが8月開催である。夏の某屋外ロックフェスのようなイベントを目指したのかもしれないが、あまりにその運営がお粗末すぎて参加者・観覧者から不評が相次いだ。
- 炎天下でのプレイのため、直射日光で画面が見えないという自体が頻発。対応の為にブルーシートで急遽日除けが付けられたが、そのせいで観覧席から筐体が一切見えなくなるという本末転倒な展開。
- 酷暑により、筐体が熱暴走してダウン。ゲームの挙動がおかしくなる、通信が切れて対戦が強制終了するなど対戦に支障を来す事態に。
- 家庭用ゲーム部門では野試合台が用意されていない、持ち込みの入力機器仕様不可という無茶苦茶な状態。
- 準備段階で無印と拡張版の区別が付いていないタイトルがあった(UMV3とMVC3など)。
- 日が暮れると筐体や観覧席の明かりによって、虫・カエル等が突っ込んでくる。
- スケジュール調整が全く出来ておらず、行き帰りの足のバスが遅れまくり。行きはエントリーが間に合わ無かった人が多数。1日目は全種目が完了したのが深夜0時を越えており、大量の帰宅難民が出た。
以上のようにゲームプレイ・観覧に支障を来すレベルの問題が続出。招待されていた海外選手にも「今まで来た中で最悪の大会」と言われ、参加者の一部はあまりの惨状とグダグダっぷりに酒盛り、ジェンガ、カブトムシとりなどに興じ始める始末。視聴者・観覧者からも「もはやただの夏休みじゃねえか」というツッコミが続出した。
なお、劣悪な環境とグダグダの進行ながら選手達は至って真剣に大会に取り組んでおり、名勝負という言える試合も数多くあった。前述の海外選手たちからも「大会運営は最悪だったが選手たちは素晴らしかった」というコメントが残されている。
こうした惨状から、出展作品に関わるクリエイターからも苦言が呈される事態となり、有料配信視聴者からも低評価が続出した。また、開会式で地元のお偉いさんと思われる人物が延々紹介&挨拶という一幕もあった為に、会場変更自体が何らかの癒着によるものなのではないかという疑惑の声も挙がることとなった。
裏塔劇
東京秋葉原にある「トライアミューズメントタワー(現:エターナルアミューズメントタワー)」にて開催されていたパロディ大会。正確には同ゲームセンターで行われていたソウルキャリバー大会「塔(タワー)劇」の裏大会だが、ネーミングは結果として闘劇のパロディとなっている。
第1回は2010年に行われ、2013年の第10回まで行われた。なお、この第10回を最後に発案者であるHK氏が降板し、リニューアル版として松井店員による「第1回正塔劇」(実質第11回)が開催されたが、第11回優勝者の権限により再び「第○回裏塔劇」にタイトルが戻され、第13回(2017年)まで行われた。
あくまで個人開催の大会+ネット配信+動画化というスタイルであるが、それ故に闘劇では絶対出来ないであろうマイナーゲー、奇ゲー、海賊版、そもそも格ゲーじゃないゲーム等が飛び出すカオスな内容で、会場・コメント欄等の異常なまでの盛り上がりが特徴。珍しい選出タイトルとしてはアウトフォクシーズ、マリオブラザーズ、アイスクライマー、ビシバシチャンプ、そしてストⅡレインボー。
中でも特に人気を博したのは「虹の観察」という愛称で呼ばれたストⅡレインボー、ガチ勢が跋扈した『らんま1/2 爆烈乱闘篇』など。この2作で本気で対戦するとアツいという事を世間に示し、対戦人気向上に大きく貢献した。
上で繰り返し述べているようにあくまで個人による自主開催大会でしかなかったはずなのだが、フォロワー的な自主開催大会を数多く生み出しており、各地にあるレトロゲーを取り扱うゲームセンターで奇ゲー、マイナーゲー、バランスが悪く当時は人気が出なかった格ゲー、アーケードで稼働しているがそもそも格ゲーでないゲームなどの対戦会が現在でも日々開催されている。
また、EVO JAPANのサイドトーナメントにも似たようなノリとなっており、EVO正式種目に選ばれなかったゲームやパズルゲーム、音ゲーなどがよくプレイされている。
イラスト文化との関連
格ゲー、ゲーセンを盛り上げるというコンセプトに共感した格ゲープレイヤー兼絵師によって応援イラストが描かれる事が多く、イラスト投稿サイトや格ゲーを取り扱っている雑誌の投稿ページなどに多数掲載されていた。