アレクサンドル・ビュコック
自由惑星同盟軍の宿将。二等兵から提督にまで出世した名将で、帝国軍を相手に50年以上も戦い続けた歴戦の勇者である。
性格は厳格で誇り高いが、他者に対しては好々爺として接することが多い。若年者に対してもきちんと接する器量の持ち主で、現場の将兵からは人気があった。
現場からの叩き上げであり士官学校を出ていないためか軍上層部からはウケが悪く、長年辺境部で冷や飯を食わされていた。彼がその能力を乞われて宇宙艦隊司令長官に栄達したのは、皮肉にも同盟軍がアムリッツァ星域会戦で歴史的大敗北を喫し有能な人材をラインハルトによって消滅させられてしまってからであった。
とは言っても腐敗しきった自由惑星同盟においてビュコックの活躍出来る土壌は枯渇しきっており、いかに彼が尽力しても同盟軍が根本的に改善されることはなかった。
その後も帝国軍を相手取って戦い続けたが、ラインハルトによって改革・強化された帝国との根本的な実力差は埋めようが無く、同盟軍の敗北を食い止めることは出来なかった。
バーミリオン会戦後に締結された「バーラトの和約」によって同盟が帝国に膝を屈してから引退したが、彼の安寧は長くは続かなかった。政治的に迷走する同盟にしびれをきらしたラインハルトによる再討伐「第二次ラグナロック作戦」が発動されると現役復帰し、自由惑星同盟最後の抵抗である「マル・アデッタ星域会戦」を指揮した。
不利な状況をモノともせぬ老獪な戦術で帝国軍を翻弄するも、圧倒的な戦力差の前に敗北。皇帝ラインハルトから降伏勧告を受けるも、自由民主主義の矜恃をもってこれを辞退し、銀河の星となった。
その潔い生き様はラインハルトに深い感銘を抱かせており、彼をして「山の清水」と言わしめた。
ヤン・ウェンリーにとっても数少ない理解者であり、同盟軍の将兵からも尊敬されていた。
最期のセリフ
カイザーラインハルト陛下、わしはあなたの才能と器量を高く評価しているつもりだ、孫を持つならあなたのような人物を持ちたいものだ。だが、あなたの臣下にはなれん、ヤン・ウェンリーもあなたの友人にはなれるがやはり臣下にはなれん。他人事だが保証してもよいくらいさ、なぜなら、偉そうに言わせて貰えば、民主主義とは対等の友人を作る思想であって、主従を作る思想ではないからだ!わしはよい友人が欲しいし、誰かにとってよい友人でありたいと思う。だが、よい主君もよい臣下も持ちたいとは思わない。だからこそ、あなたとわしは同じ旗を仰ぐことは出来なかったのだ。ご厚意には感謝するが、今更あなたにこの老体は必要あるまい。
能力
二等兵から昇進を繰り返して提督になっただけあって、自由惑星同盟軍きっての実力を持った指揮官である。現場に長くいすぎたせいか、戦略家というよりは戦術家であり、長年の経験に裏付けされた重厚な戦術を得意としていた。70代の老人でありながら引退もせず現役で戦い続けたのも、その能力を請われてのことであった。
自由惑星同盟軍としての、また彼個人としても最期の戦役となった「マル・アデッタ星域会戦」において「参加者は30代以上の希望者のみ」という条件を出したにもかかわらず、数多の将兵が駆けつけるほどの人望の持ち主でもあった。
ポプランの言を借りれば、はっきり言って同盟軍には勿体ないくらいの人物である。