概要
日本海軍が編成した陸上戦闘部隊・海軍陸戦隊はそれまで八九式中戦車や九五式軽戦車等の陸軍制式戦車、及び独自に輸入したヴィッカース・クロスレイ装甲車等を使用していたが、上陸作戦に使えるような車両は保有していなかった。そこで陸軍技術本部の協力を仰ぎつつ、九五式軽戦車をベースに開発したのが本車である。
砲塔は二式軽戦車を流用、主砲は前期型では間に合わせに九四式三十七粍戦車砲もしくは九八式三十七粍戦車砲を、後期型では本来の一式三十七粍戦車砲(主砲同軸機関銃である九七式車載重機関銃との双連)を搭載していた。また、車体前方左側に九七式車載重機関銃を装備した。(前期型で車体前方機関銃1挺のみ 、後期型では主砲同軸機関銃と合わせて2挺。)
車体の前後に水上走行を可能とするための着脱式の舟形フロート(浮き)を取り付け、上陸後に着脱するようになっていた。(前部フロートには一体式の前期型と左右分割式の後期型があった。)
展望塔や換気塔も上陸後は外される事となっていたが、こちらは実戦では付けたまま行動しているものもある。
試作車は1941年(昭和16年)に完成し、翌年に“特二式内火艇 カミ車”として制式化、終戦までに約180輛が完成し、南方の島嶼地域に展開する海軍陸戦隊に配備された。
現存車輛はソ連軍に鹵獲された車輌がロシアにあるクビンカ戦車博物館に展示、またパラオのコロールにあるアサヒスタジアムの裏手には、本車輛が朽ち果てたまま放置されている。
装備
全長 7.42 m(フロート付き)
車体長 4.80 m(フロート無し)
全幅 2.8 m
全高 2.3 m
重量 12.5 t(フロート付き)
9.15 t(フロート無し)
速度 37 km/h(陸上)
9.5 km/h(水上)
行動距離 320 km
140 km(浮航)
主砲 一式37mm戦車砲×1(132発)
副武装 九七式7.7mm車載重機関銃×2
(主砲同軸機銃および車体前方機銃)(3,500~3,900発)
装甲 6~12 mm
エンジン 三菱A六一二〇VDe
空冷直列6気筒ディーゼル
110 馬力
乗員 6 名
海軍の水陸両用戦車
日本海軍では水陸両用戦車であることを隠すため、「特型内火艇」(内火艇とはモーターボートのこと)と呼称した。
特三式内火艇 「カチ」
特四式内火艇 「カツ」
特五式内火艇 「トク」(未完成)