開発経緯
1943年の初め、捕獲に成功したドイツのティーガーⅠ重戦車の戦闘力に衝撃を受けたソ連国防委員会は、これに対抗できる新型重戦車の開発を決定した。
重装甲化と簡易な車体構造により、機動性と稼働率が悪化したKV-1重戦車の反省から、新型重戦車は装甲厚と火力を増強させながらも重量45t以内に収めるよう要求が出された。 ニコライ・シャシムリン技師が率いる開発チームは試作戦車と軽量型KV戦車を発展させる形でIS-85作り上げたが、正式採用後の量産開始に手間取り、繋ぎ役としてKV-85が実戦試験に投入された。
実戦投入
1943年10月、IS-85改めIS-1は生産が開始された。
K V-85同様に親衛重戦車連隊に実戦配備されたが、多くは実戦部隊からではなく戦車学校から直接送りこまれてきたばかりの未熟な兵士ばかりだった。そのため、1944年2月、第13親衛戦車連隊のIS-1はウクライナのリスヤンカ村において味方部隊の攻撃支援中、V号戦車パンター及びIV号戦車と突撃砲の待ち伏せを受け、距離600~700mからの集中砲火で壊滅した。(最終的には赤軍の勝利)
また翌月、同部隊のIS-1は至近距離から28mm重対戦車銃Pz.B41ゲルリッヒ砲に鋳造製の車体前方下部装甲を撃ち抜かれ、後にこの部分には予備履帯が補助装甲として装備され、対戦車砲やティーガー戦車との戦闘で大きな損害を出す結果となった。さらに時期に生産が開始されたT-34/85も搭載していたD-5 85mm砲ではティーガーⅠの射程外から装甲を撃ち抜くのは不可能と判明していたので、生産開始から僅か15日で火力の更なる増強が決定された。
その後
IS-1の武装強化案には二つの案があり、強力な新型戦車砲であるS-34 100mm砲と、従来の野戦砲弾を使用できるA-19 122mm砲があった。補給と運用面を重視した赤軍は後者を選択し、D-25T戦車砲として改良、これを取り付けたIS-122(IS-2)の量産に入った。
性能諸元
○全 長 :8.32 m
○車体長 :6.77 m
○全 幅 :3.07 m
○全 高 :2.73m
○重 量 :44.16 t
○懸架方式:トーションバー方式
○速 度 :37km/h(整地)~19 km/h(不整地)
○行動距離:225km
○発動機:V-2-IS液冷V型12気筒ディーゼル:600 馬力 / 2000 rpm
○乗員:4名
○装甲
・砲塔装甲:防楯100mm、前面/側面90mm
・車体装甲:前面100-120mm、側面90mm、後面60mm
○主砲
・D-5T 51.6口径85mm加農砲
・7.62 mm DT 機関銃 ×2