レシプロエンジンの吸排気弁機構の形式の一つ。Over Head Valve(オーバー・ヘッド・バルブ)の略。日本語では頭上弁式と表記される。
構造
カムシャフトがシリンダーの横に位置し、プッシュロッドとよばれる長い棒を介してロッカーアームを押し上げバルブを開閉させる。「プッシュロッドエンジン」と呼ばれる事もある。車両用としてはハーレーダビッドソンや一部のアメ車など趣味性を求めるモデル以外に採用されることは減っている。
OHV方式の採用例
四輪車
日本では、1950年代から1970年代に製造された乗用車によく採用された。同一車種に複数のグレードを設定する場合、上位グレードにはDOHC/SOHCエンジンを、下位グレードにOHVエンジンを採用し差別化を計ることが多かった。
1990年代以降は一部の例外を除いてLPGエンジン車にしか見られなくなり、日本車で最後までOHV/ガスミキサータイプのLPGエンジンを搭載していたクラウンセダン/クラウンコンフォート/コンフォートも2008年にDOHCでガス直接噴射のエンジンに置き換えられた。
二輪車
ハーレーダビッドソン社が1936年以来、伝統的にOHV形式の空冷V型2気筒エンジンを搭載し続けている。他社のクルーザー型オートバイではヤマハ発動機、カワサキも、エンジン高を抑えるためにOHVを採用している。
ホンダのスーパーカブは発売開始時にはOHVであったが、1964年のモデルチェンジでSOHCに変更されている。
航空機用エンジン
航空機用レシプロエンジンにおいて、高回転域の性能はあまり求められず、中低回転数域での高いトルクが求められ、OHVが採用された例が多かった。プロペラは先端が音速に達すると衝撃波により効率が低下するため、回転数を一定以下に保つ必要があり、減速機を用いているからである。エンジンの最高回転数が高いと減速機も大掛かりなものとなり、効率が悪い。また、かつて使われた星型エンジンではOHCによるバルブ駆動はほとんど不可能である。
汎用エンジン
OHVは、同じ排気量のOHCエンジンと比べて構造が単純なため整備しやすく(とはいえSVほどではないが)、軽量・コンパクトという利点があり、自家発電機、ポンプ、耕耘機等の汎用エンジンでは主役である。が、この分野でも2003年にOHCエンジンを得意とする本田技研工業がSOHCの汎用エンジンを出し、OHVを置き換えた。ヤンマーや川崎重工業、井関農機は環境対応の改設計を施した上でOHVエンジンを存続させている。