和田慎二の作品において一貫して登場する日本を牛耳る巨悪。
その毒牙は日本のみならず、国際的犯罪組織すらも、その腕に収めている。
出自は定かではないが幕末の頃には既に存在が確認されており、その時点で老人。そして現在まで残されている写真データを分析すればきちんと年を取っているという、どうみても規格外の人外のはずであるのに、どこから見てもただの人間であるという不条理すぎる巨悪。
その長い生の中で日本の政財界に根を下ろし、その権力に任せて、日本という国そのものを自分の思いのままにむさぼってきた、まさに老害。しかして、その権力欲はとどまるところを知らず、時に偶然発見された麻薬を用いて全人類奴隷化計画すらも企むという底なしの野心を持つ。
原作本編内でサキにボヤかれた通り、将に、"信楽の狸親父"は"信楽焼の狸"の如く狡猾。
スケバン刑事(原作版)では学生組織「青狼会」や犯罪組織「猫」を率いる黒幕として登場。若者たちの功名心や中二心、権力者の野心など、人が決して逆らえない欲望を巧みにくすぐり世界へのテストケースとして日本の権力の意図的な置換をたくらむ。その中で自らの孫娘すらもアッサリ切り捨てるという外道行為は必見。最期はサキと神恭一郎の二人によってトドメを刺され鬼籍に入った……と思いきや!
怪盗アマリリスでアッサリと復活。和田慎二作品の主人公2名が命を賭して葬ったはずの巨悪が何の前触れもなく蘇ったことにファンは激怒したという。そして、和田慎二の逝去により、彼は永遠に正義に倒されない巨悪と化してしまった。和田慎二作品の範例を考えるなら、こんなバケモノキャラ、超少女明日香の逆十字に関わっていてもおかしくない存在でもあるため、ますます作者の逝去が悔やまれる。
一方のTVドラマ版「スケバン刑事Ⅱ」では、2代目麻宮サキ・五代陽子の家族を殺した張本人で、終盤では警察すらも圧力をかけて陽子を孤立させることに成功するも、陽子の仲間であるお京&雪乃、そして警察を裏切った西脇の後押しを受け、自らも本名である「早乙女志織」を名乗った陽子の捨て身の攻防によって打ち砕かれ、最期は巨悪に屈したことを悔やんだ暗闇指令の反逆によって射殺された。ただしここでは2代目サキこと陽子は負傷しながらも無事に生還。その際西脇の計らいで“「五代陽子」が死んで「早乙女志織」が転入してくる”形で平凡な学生生活に戻るというハッピーエンドだった。この内容については和田慎二も気に入っている。