カブレーシングCR110は、本田技研工業が1962年に発表した排気量50ccの競技用オートバイである。
自社チーム(ワークス)向けのRCとは違い、こちらは一般向けに販売された。
概要
ベースとなったのはロードレース世界選手権(WGP)の50ccクラス向けのワークスマシン『RC110』である。
カブレーシングのペットネームは、販売戦略として当時ホンダの50cc車の中で人気を博していた「スポーツカブ」からとったとも、実際にエンジンの部品が設計ベースに使われているからだとも言われている。
メカニズムは、ベースとなったRC110をほぼ踏襲している。
エンジンは49.99ccDOHC単気筒エンジンで、名刺の半分程度の小さな燃焼室に吸気・排気バルブがそれぞれ2本の計4本とスパークプラグが収められるなど、50cc車ながらエンジンの各部は精緻を極めた造りであった。その4本のバルブを稼働させる2本のカムシャフトも、バルブタイミングが極力狂わないよう歯車で駆動(カムギアトレーン)された。
ホンダの公式サイトに拠れば、8.5PS/13,500rpmを発揮し、最高速度は130km/h以上とある。
ミッションは8段であった。
当然レースであれば2ストロークエンジンのほうが有利で、他のメーカーはほとんどがそうだったが、4ストロークエンジンは社長が堅持した方針であった。
登場した年のマン島TTでは9位入賞、国内レースでのデビュー戦では優勝を飾った。
公道仕様車
CR110は、基本的にはサーキット専用モデルとして開発されたが、国内レース参戦に向けた型式公認取得のための公道仕様車(ホモロゲーションモデル)が存在した。
公道仕様車はCR110としては最初に登場したモデルで、こちらは保安部品を装備したうえで、ダート向け(スクランブラー)スタイルとされた。
ハンドルとマフラーはそれぞれアップハンドルとアップマフラーに、またシートや燃料タンクが変更されているほか、ミンションは通常のバイクと同じ5段であった。
製造数は規定の最低値、50台程度とされるが、実際に販売されたのは49台だったそうである。
その他
- 本車のみならずこの頃のホンダのレース用エンジンは「精密機械」「(スイス製の)時計のようだ」と評されている。
- ホンダ創業50周年に当たる1997年には復刻版の「ドリーム50」が登場した。