鯨木かさね
くじらぎかさね
CV:桑島法子
人物
あらゆる異形の存在を売買するブローカー、澱切陣内の秘書の女性。いついかなる時でも全く表情を変えず、自身の仕事には一切の私情を挟まない。
表向きは秘書であるものの、実は彼女こそが「澱切陣内」というグループのリーダー。正確にはかつて「本物」の澱切陣内という人物がおり、かさねは彼からブローカーのノウハウを学んでいた。そして彼の死後にその仕事を全て引き継いでいたのである。
異形の家系
かさねもまた人間ではなく、異形の血を引く「人外」の一人。殺人鬼「ハリウッド」こと聖辺ルリは20歳以上離れた異父姉の子供で、姪にあたる存在。その為ルリのファンである渡草三郎からは「ルリちゃんに似ている」と評されており、感情を表に出さない点でも似ている。
なお、聖辺の血族は吸血鬼であることが示唆されており、これが正しければルリもかさねも吸血鬼の血を引いていることになる。だが、かさね自身はルリが生まれるより遥か前にルリの祖母に捨てられてしまっていた。そしてその際に売り渡した相手こそ、「本物」の澱切陣内だったのである。かつて人外として売られた彼女が、後に自身と同じ立場の者たちを売買することになるとはなんたる皮肉か。
罪歌
園原杏里と同じく罪歌の宿主で、彼女は罪歌を『奴隷』として一方的に支配している。杏里よりも高いレベルで支配しているため、彼女の武器は日本刀に限らずあらゆる形状に変化させることができる。基本的には鉤爪とワイヤーを主なスタイルにしている。
母クラスの罪歌がニ振り存在するのは、かさね自身がもう一振りを商品化するために「腑分け」と呼ばれる方法で生み出したためである。詳しい方法については罪歌の項目を参照。
なお、セルティの首と身体が分断されるきっかけとなった武器は、かさねが新羅の父に貸し与えた罪歌である。つまりかさねは図らずとも新羅とセルティが出会うきっかけを作っていたのである。
ちなみに彼女の罪歌は一振りにつき625万円。しかしレンタルの場合は20万円でいいらしい。レンタルに限れば意外と良心的な価格である。
スペック
本作に登場する人外たちの例に漏れず、かさね自身の戦闘力も極めて高い。特に身体スペックに関しては姪のルリをも遥かに凌いでおり、作中でもかなりの上位に君臨する。流石に規格外の平和島静雄には遠く及ばないが、彼の前ではごく一部を除けばほぼ全員が霞んでしまうので比較対象にはできない。
頭脳面においても非常に優れており、作中屈指の情報屋の折原臨也とは情報戦で何度か戦っているが、いずれにおいても圧勝を飾っている。澱切陣内のシステムを見破られて表舞台に出ざるを得なくなったという不覚こそあったものの、それ自体は彼女にとってはほとんど痛手になっていない。
上記の通り罪歌持ちでもある為、あらゆる人外に対しても有利に戦える。
総括すると、吸血鬼のスペックが上乗せされた臨也と杏里のハイブリッドというべき存在であり、ほぼ全てのスペックが最高水準でまとまった作中屈指の強敵である。
かさねの本質(終盤のネタバレ有り)
池袋で引き起こされたあらゆる事件の黒幕的存在と言える彼女だが、実のところ彼女自身は「悪党」ではあっても「外道」とは言い難い面がある。
前述の通り、彼女は過去に実の親に売られた為に愛されることを一切知らずに育ってしまった。そんな過去があったからこそ、同じ血を引いているにも関わらず夢を追い続けられるルリや、同じ人外であるにもかかわらず岸谷新羅と恋仲となったセルティに対して表情には出さずとも激しい嫉妬を覚えてしまったのである。その嫉妬に突き動かされるまま、ルリを澱切陣内に売り飛ばして精神を破壊し、本編においてもルリのストーカーを操って新羅に重傷を負わせ、さらにセルティの目の前で自身の罪歌で新羅を支配し、セルティの暴走を引き起こした。基本的に仕事に私情を挟まないかさねだが、これらに関しては嫉妬による私情が混じっており、らしくないといえばらしくはない行動であると言える。
しかし新羅はかさねの罪歌の呪いを自力で脱し、暴走したセルティの元へと歩みだした。そして夜の池袋でかさねと新羅は再会する。誰かに愛されることを知らなかったかさねは、人外だろうが深く愛せる彼に内心かなり惹かれていた。そんな彼女は不器用ながらもストレートに新羅への好意を告白する。無論受け入れられずフラれてしまうも、その後「誰かを愛してあげてください」と言う新羅の言葉に微笑みながら「あなたはずるい人です。振った後にもっと好きにさせるなんて」と返した。かさねにとってはこの瞬間こそが最も幸せだったと言っても過言ではないだろう。
騒動終結後、ルリをトラックで轢き殺そうとしたストーカーから助け出し、ルリ本人に嫉妬と羨望を抱いていたことを明かす。そして殺人鬼「ハリウッド」として罪を償う機会を奪うと宣言し、ストーカーを警察に突き出すべく飛び去った。殺人鬼であることを忘れてアイドルとして夢を追い続けてほしいというかさねなりの遠回しなエールだったのかもしれない。