レギオン(86)
きかいじかけのぼうれい
本来の意味・怪獣の方のレギオンについてはレギオン。
概要
レギオンとは、電撃文庫の小説『86-エイティシックス-』に登場する、無人自律稼働兵器である。
作品の舞台となる大陸の東部にある大国ギアーデ帝国が開発し、星暦2139年の宣戦布告と同時に全世界に展開され、サンマグノリア共和国の正規軍を半月で壊滅させた。
帝国の遥かに高い技術力によって開発され、ほぼ全てが多脚歩行式故の高度な機動性に無人工場型レギオンによる尋常ではない量産性、そして地域制圧兵器として非常に高い対人・対戦車攻撃能力を有している。
敵国の地域を制圧する無人兵器として開発されたため、人間を含む既存の生物に類似した兵器や、無差別攻撃兵器である細菌兵器などの生物兵器の製造・使用を禁じるプロテクトが施されており、そのため味方でもナイフ1本有していただけで敵と認定されてしまい、友軍との共同作戦に一切使用できないというデメリットも有している。
また、機体制御を担う人工知能は、大型哺乳類の脳髄を模した中枢処理装置が設けられており、万が一の暴走に備えてバージョン毎に6年弱でOS自体が自己崩壊を起こす変更不可の寿命プログラムが施されている。
主人公達が属していたサンマグノリア共和国は、本編開始の時間軸から5年前に遥か東部で入手したギアーデ帝国の瀕死の通信によってギアーデ帝国が滅亡した事を知り、星暦2148年時点で間もなく全てのレギオンが停止すると見込んでいる。
種類別
斥候型(アーマイゼ)
『蟻』の名を与えられたレギオン。
高精度カメラを装備しており、主に味方レギオンの射撃観測や対人掃討任務を行う『戦場で最も目にするレギオン』。
主武装は7.62ミリ汎用機関銃2丁。中には14ミリ重機関銃を装備したタイプも存在する。
近接猟兵型(グラウヴォルフ)
『灰色狼』の名を与えられたレギオン。
装甲を薄くして機動性を上げたタイプで、前肢の高周波ブレードによる斬撃攻撃や、背部の六連装76ミリ対戦車ロケットランチャーによる対戦車攻撃を担う。
戦車型(レーヴェ)
『獅子』の名を与えられた重量級レギオン。
レギオン機甲部隊の主力を担っており、8本の太い肢によって支えられた巨体は高い防御性を誇る。
主武装は120ミリ滑腔砲で、大体の装甲車両を撃破する事が出来る一方で、観測センサー能力は低く、常に斥候型からの観測情報を必要とする他、隙を突かれて撃破される事が多々ある。
関連タグ
^以下、ネタバレ注意! |
ある日の戦闘の時、サンマグノリア共和国軍人のレーナは、自身の率いる部隊『スピアヘッド』戦隊の指揮中に、精神感応式通信デバイスで繋がっているエイティシックスの軍人シンの回線より、前の戦いで戦死した筈のエイティシックス兵士の声を聞く。戦闘終了後、レーナは『声』の正体を探るため、シンに直接尋ねるのだが、その答えは余りにも簡単かつ残酷なものだった。
「中央処理装置の構造図が失われるなら、別の構造図で代替すればいい。…代替となるものも、彼らの周りにすでにあるわけですから」
「哺乳動物の中でも特に発達した中枢神経系。人間の脳です」
帝国の落とし子にして共和国の亡霊
レギオンとの戦闘の時に聞こえた『声』の正体。
それは、シンが自身の『異能』で聞き取ったレギオンの思考であり、そしてレギオンの中央処理装置の構造図に利用された人間の意識の残滓であった。
経緯
実は開戦直後に開発元のギアーデ帝国は市民革命で滅亡しており、戦争勃発早々にレギオンは一部残党を除いて自身の指揮・管理を行う存在を喪失していた。
当然ながら構造図のアップデートが受けられなくなっている上に、革命によって誕生したギアーデ連邦の正規軍も、多脚戦車を使った戦術による反撃で、性能に関して上回っている筈のレギオンと互角の戦いを繰り広げていた。
その際に、どうやって知ったのかは不明だが、レギオンはある一つの回答を得る。
『如何なる人工知能よりも高性能で、なおかつ直ぐに構造図の代替となる戦死者の脳構造を利用しよう』と。
そしてその戦死者の中枢神経系の提供元となったのが、サンマグノリア共和国の『人の姿をした豚』ことエイティシックスの兵士達であった。
特にサンマグノリア共和国政府はエイティシックスの死者回収を禁じていたため、レギオンはエイティシックス兵士の脳を利用し、後述の『黒羊』や『羊飼い』を量産したほか、サンマグノリア共和国滅亡後には、大勢捕えた共和国市民を使い、『牧羊犬』を量産した。
種類
こうしてレギオンはエイティシックスの戦死者の脳を利用して構造図の代替を始めたのだが、それにも幾つかの種類が存在している。
黒羊(ブラックシープ)
戦死者の脳をスキャンして得た構造図が中枢処理組織に組み込まれたレギオン。
戦死して少し時間が経った者や破損の激しい死体の脳を利用しているため、性能は単に『羊』と呼ばれている従来の構造図を使っているレギオンより多少上程度。
また死亡直前の最後の思考もスキャンして組み込むため、シンには最後の言葉を何度も機械的に繰り返す様に聞こえる他、複数機にて使い回しされる事が多い。
代表的な機体
『カイエ』
・使用機体、『近接戦闘型』
「死にたくない」
かつて『スピアヘッド』戦隊にてシンとともに戦ったエイティシックス兵士、カイエ・キルシュブリーテの脳を使った『黒羊』。
レイドデバイスを介してレーナが初めて聞いたレギオンの声の一つであり、書籍版第4巻にも登場。
羊飼い
黒羊とは違い、生きたまま、または直ぐに死んだ者の脳髄をスキャンして取り込んだ構造図を持つ、人間と同等の思考能力を有したレギオン。
脳髄の構造どころか、人間の意識や記憶もコピーして構造図に組み込むため、生前の自我と思考が明確に残っており、人間並みの思考能力を持つ。
そのため、黒羊と違って複数機体に使いまわす事が出来ず、上級指揮官クラスの機体に限られるほか、撃破直前に予備機に構造図を移して残す機能が持たされている。
代表的な機体
『レイ』
・使用機体、『重戦車型』
「…シン」
シンの兄、ショーレイ・ノウゼンの脳髄を構造図として組み込んだレギオン。
主な特徴として、流体マイクロマシンの『手』を機体から生じさせるという機能を有する。
『キリ』
・使用機体、『電磁加速砲型』
「殺してやる」
旧ギアーデ帝国軍近衛兵、キリヤ・ノウゼンの脳髄を構造図として組み込んだレギオン。
本作随一の超兵器、電磁加速砲型を手繰り、サンマグノリア共和国滅亡の先手を切った。
牧羊犬(シープドッグ)
羊飼いの下位互換型・黒羊の上位互換型ともいうべきレギオン。
これまで構造図の量産を難しくしていた人格の存在を、記憶中枢の破壊・削除によって実現しており、生産にはさしたる抵抗も出来ず捕獲されたサンマグノリア共和国市民の脳髄が利用されている。
牧羊犬の実用化後、黒羊は完全に廃棄された模様。
種類別(書籍版1巻後半以降)
重戦車型(ティノザウリア)
『恐竜』の名を冠されたレギオン。
戦車型を凌駕する155ミリ滑腔砲を主武装としており、現代の主力戦車ですら裸足で逃げ出すレベルの火力を誇る。
長距離砲兵型(スコルピオン)
『蠍』の名を冠されたレギオン。
書籍版第5巻にてイラストが公開された。
155ミリ榴弾砲や多連装ロケット砲による長距離砲撃支援を主任務としており、書籍版5巻にて要塞攻略戦で想定外の運用方法が行われた。
阻電攪乱型(アインタークスフリーゲ)
『アゲハ蝶』の名を冠されたレギオン。
手のひらサイズの小型レギオンで、大勢で電磁波を発してあらゆる無線通信を阻害し、レーダーすら利用不可能に生じさせる。
また、ジェットエンジンのインテークに突っ込んでエンジンを破壊する能力も持ち、航空機絶対撃墜するマシンとして恐れられている。
関連項目(ネタバレ用)
ガンダムキマリスヴィダール→死者の脳を利用しているという共通点がある。