概要
東野 圭吾(ひがしの けいご、1958年2月4日 - )は、大阪府大阪市生野区生まれ(本籍は東区玉造・現中央区)の日本の小説家。本名同じ。
経歴
デビュー経緯
高校時代までは、活字どころかマンガすらあまり読まない読書嫌いであったが、高校2年の時、小峰元の『アルキメデスは手を汚さない』を偶然手に取り、一週間で読破してしまう(本人曰く「大事件」)。以来推理小説にのめりこむようになり、自分で小説も書くようになる。処女作は『アンドロイドは警告する』、2作目は数年の時をかけて『スフィンクスの積木』を完成させる。内容は現在まで公開されていない。
社会人時代に応募した『人形たちの家』(これも未公開)が、江戸川乱歩賞の二次選考を突破する。翌年に応募した『魔球』が最終候補に残り、さらに翌年の1985年、『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞。着実なステップアップを踏んでのデビューであった。ちなみに現在、その江戸川乱歩賞の審査員も務めている。
『秘密』まで
1985年のデビュー以来、本格推理を中心に執筆。90年代以降は作風が変化し、『宿命』『昔僕が死んだ家』『ある閉ざされた雪の山荘で』のようなミステリや、『天空の蜂』『天使の耳』のような社会派、『分身』『パラレルワールド・ラブストーリー』といった、理系出身のエンジニアという経歴を生かした科学物、はては『~笑小説』シリーズ、『難波少年探偵団』、『名探偵の掟』などのお笑い物まで、幅広い作品を執筆し続ける。
が、どれも売り上げはさっぱりで(1999年の『名探偵の掟』でやっと少し注目を集めた程度)、また文学賞に15回連続で落選するなど、厳しい時代が続く。それでも苦節14年、『秘密』で第52回日本推理作家協会賞(長編部門)を受賞、広末涼子主演で映画化されるなど大ブレイクを果たし、やっと人気作家の仲間入りを果たす。
直木賞
が、文学賞の落選は売れっ子になってからも続き、直木賞では5連続落選という辛酸を舐める。(もっとも、直木賞落選は選考委員のひとりである渡辺淳一に、非常にどうでもいい私怨で嫌われていたせいであるというのが専らの噂である模様。)
それでも粘り強く書き続け、2005年、『容疑者Xの献身』で6回目の候補にして遂に第134回直木賞を受賞、同作は本格ミステリ大賞、このミス1位など計5冠に輝いた。
現在
直木賞を取ってからは著作が増刷の一途を辿るようになり、100万部越えの作品をいくつも抱える大ベストセラー作家となっている。また大沢在昌に推されて日本推理作家協会理事長にも就任。更に近年は作家の長者番付1位、好きな作家ランキング1位など、20世紀までの低知名度はどこへやら、今では知らない人の方が少ないほどの人気作家となっている。
作風
2011年2月現在、『歪笑小説』で77作品を数える著作を生み出している。非常に幅広い作風の持ち主で、別人が書いたと思えるほど振れ幅が大きい作品があるのも特徴(『白夜行』を書いた作家が『怪笑小説』を書いたりしてるんだぜ…)。
デビュー当初は本格推理がメインだったが、近年は社会派など、広義の意味でのミステリに移行、ミステリというジャンルの幅を広げる意欲的な挑戦をしている。
作品は大体3人称、殆ど独立した作品が多い。シリーズ物にしても、何から読んでも差し支えない作品となっている。
シリーズ
ガリレオシリーズ
作者得意の理系知識を生かした作品。「ガリレオ先生」こと湯川学が、あらゆる超常現象に挑む。2007年にドラマ化。湯川は福山雅治が演じ、「実におもしろい」などの名言と、謎が解けると至る所に数式を書きまくる、高笑いしつつ「さっぱりわからない」、などインパクトを残した。翌年には直木賞受賞作『容疑者Xの献身』も映画化され、知名度は作品群の中でもトップクラス。東野圭吾を象徴するキャラクターといえるだろう。
2012年現在の最新作は『真夏の方程式』。
加賀シリーズ
そのガリレオと並ぶのが、刑事・加賀恭一郎が登場する加賀シリーズである。デビュー当時から作者と共に歩んできた、東野圭吾曰く「頼れる」キャラクター。明晰な頭脳と行動力で、事件だけではなく、その裏に隠れた人の心情をも解き明かす”人の心を解く名刑事”として人気が高い。2011年に『新参者』がドラマ化。加賀を演じたのは阿部寛。年末には『赤い指』、そして2012年1月に『麒麟の翼』が映画化された。
2012年現在の最新作は『麒麟の翼』。
天下一シリーズ
本格推理物の様々なパロディをおちょくった作品、『名探偵の掟』に掟に登場する自称・名探偵、天下一大五郎の作品。2009年にまさかのドラマ化、松田翔太、木村祐一などが出演。何気にブレイクのきっかけを作った作品でもある。
なお、『名探偵の使命』という構想がある模様。いつかは書かれるのだろうか。
しのぶセンセシリーズ
『難波少年探偵団』『難波少年探偵団2』の2作品がコレ。破天荒な小学校教師・しのぶ先生が活躍する連作短編集。コテコテの関西弁と東野らしいミステリでファンの間では根強い人気があるが、続編の構想はもうないという(本人曰く「書けなくなった」)。山田まりや主演でドラマ化された。
「笑」シリーズ
『怪笑小説』『毒笑小説』『黒笑小説』『歪笑小説』がこれにあたる。いずれもブラックで毒のきいた笑いが詰まった短編集。『黒笑』と『歪笑』は文壇におけるネタが詰まっている。人気のあるシリーズだが、作者曰く「もうネタ切れ」。
映像化
多大な人気に映像関係者が目をつけまくっているのか、『白夜行』のドラマ化以降から、東野圭吾の作品が急激にドラマ化・映画化されるようになった。ガリレオや加賀シリーズはいうまでもなく、『流星の絆』、『秘密』(映画ではヒロスエだがドラマは志田未来が演じた)、『宿命』『分身』(WOWOW)など多数。世にも奇妙な物語にも、度々短編が映像化されている。2011年は3週連続ドラマ放映なんてのもあった(『11文字の作品』『ブルータスの心臓』『回廊亭殺人事件』)。
映画は2003年の『g@me』からほぼ毎年映画化がなされているといった状態で、2013年には『プラチナデータ』の放映が控えている。
ここまで作品が映像化された作家は前例にないといってよく、このメディア露出がさらに読者を増やして人気を獲得→人気にあやかってまた映像化…というループすら完成しつつある。
特に『白夜行』はドラマ化、韓国で映画化、舞台化、映画化など何回も使われている。
人物
・ウィンタースポーツ好きのスノーボーダー。44歳でスノーボードにはまり、50を過ぎた今でもゲレンデを滑りまくっている模様。トリノ五輪に行ったり、カーリングで大けがしたり、ウィンタースポーツに関する著作も書いている。『カッコウの卵は誰のもの』『夢はトリノをかけめぐる』『鳥人計画』『白銀ジャック』など。
・怪獣が好き。ガメラで監督を務めた金子監督とも対談したことがある。
・大学時代はアーチェリー部の主将も務めたスポーツマン。その経験を生かして放課後を執筆した。
・社会人時代はデンソーに勤めていた。エンジニアとしての体験から『探偵ガリレオ』は生み出された。
・大沢在昌、奥田英明とは飲み友達である模様。また馳星周とも仲が良いらしく、東野が馳の『ダーク・ムーン』のあとがきで、「今度ゆっくりと話を聞くことにしよう。彼のいきつけの馬鹿高いクラブで、彼の金で、彼のボトルを開けながら、だ」と書いているのに対し、馳は東野の『白夜行』のあとがきで、「いつか銀座の馬鹿高いクラブで奢らせてやろう」と書いている。
・公言したこと自体は少ないが、阪神ファン。『巨人の星』を好きなマンガに挙げている。
・直木賞を受賞した際、「落ちるたんびにやけ酒飲んで、みんなで選考委員の悪口言って、普通の人はできない面白いゲームやったな。今日は勝てて良かった」と発言。そのあと、「楽しいゲームでした、みなさんに感謝!」といった。落選に次ぐ落選で辛酸を舐め続けた男からにじみ出た、味のある発言といえるだろう。
主な作品
加賀恭一郎シリーズ
卒業―雪月花殺人ゲーム ※『卒業』に改題(2009年、文庫新装版時)
眠りの森
どちらかが彼女を殺した
悪意
私が彼を殺した
嘘をもうひとつだけ
赤い指
新参者(このミス1位)
麒麟の翼
ガリレオシリーズ
探偵ガリレオ
予知夢
容疑者Xの献身(第134回直木賞受賞)
ガリレオの苦悩
聖女の救済
真夏の方程式
放課後(第31回江戸川乱歩賞受賞)
秘密(第52回日本推理作家協会賞受賞)
白夜行
幻夜
変身
ゲームの名は誘拐
レイクサイド
名探偵の掟
片想い
手紙