概要
CV:赤城進
イルとは漫画『暁のヨナ』の登場人物。
高華王国・空の部族第10代目国王。ヨナの父親でスウォンの叔父。先代国王ジュナムの次男だが、ジュナムの長男である兄ユホンではなくイルが国王になった。
ヨナが幼い頃、妻である王妃カシを賊によって殺された後、再婚しなかったため、実子は皇女ヨナのみである。
ヨナを溺愛していて、彼女の望むものはありとあらゆるものを与えるなど、かなりベタ甘な父親。だが、ヨナのスウォンに対する想いを知った上で、「スウォンだけは与えるわけにはいかない」とスウォンをヨナの婿にはできないと告げる。周囲から評判も高く、誰からも認められているスウォンを強く否定した真意は不明。
とても信心深いが、異様なほど緋龍王に傾倒しているなど、宗教に染まっている。平和主義で、争いごとを嫌う穏やかな性格であり、人間としては美点とされるが、一国の王としてはむしろ欠点だったと評価されている。
波風を立てず平穏を保つことに終始した結果、真国への謝罪をはじめ、近隣の国に交渉で領地を譲り国力を低下させてしまったため、周囲には他部族や他国の言いなりな「臆病な王」と評され、国民からは民の救いにならない「酷い王」と恨まれていた。
しかし、ヨナへの求婚をハクに邪魔されて怒ったテジュンの剣を素手で握って場を収め、穏やかな顔で傷と流れる血を隠すなど、実は強い意志を持つ人物とも描かれている。
武器を嫌い、誰もが傷つかない世界を理想だと揺るがない人物として、死後もハクの敬愛と称賛を受けている。だが一方で、一国の王にもかかわらず、妄信的に神を信仰して任せるスタンスは、ユホンやスウォン等大半の人物からは呆れられていた。
以下ネタバレありのため閲覧注意
ヨナが書庫で見つけたヨンヒの手記にて、若き日のイルとユホンの確執が明かされている。
若い頃からとても信心深く、とりわけ緋龍王への信仰が厚いために、ユホンからはそのことについてたびたび怒られていた。
神に対する価値観の相違以外は兄弟関係は悪くなかったが、緋龍王の血筋であるヨンヒの存在がイルや大神官に知られたことで、ユホンと対立するようになってしまう。
ユホンはヨンヒや彼女の一族が大神官に政治的に利用されたりしないように処刑・弾圧したが、そのことに怒った父ジュナムは本来跡継ぎになるはずだったユホンではなく、次男のイルを次の国王に指名した。
ムンドク以外誰もが喜ばない即位だったが、それでもイル自身、精一杯王として勤めようとし、そんなイルを見てユホンも臣下として支えようとしていた。
だが、イルの妻カシが神官の生き残りであることを知ったユホンは、ヨナの誕生後、イルがますます緋龍王に傾倒していったのはカシが惑わしたからだと思い、カシを賊に襲われたと見せかけて暗殺する。
そのことに気づいたイルはユホンを鷹狩りに誘い、二人きりになったときにそのことを糾弾し、ユホンもイルが神に依存しすぎることへの不満と怒りをぶつける。口論の末、イルはユホンを事故に見せかけて殺した。だがその一部始終をケイシュクに見られていて、ユホンを暗殺したことをスウォンやユホン派の人間たちから恨まれていた。
イルが国王にふさわしいかどうか見極めてから手を下そうとするスウォンの行動に苦悩したヨンヒは、自分の手記を主治医であるスイメイに託し、イルに渡した。
ヨンヒの手記によって、イルは今後自分がスウォンに殺されるであろうことを知っていたが、あえてそのときを受け入れようと覚悟していた。また手記の栞の中に、ヨンヒにあてた手紙(ヨンヒに渡されることはなかったが、書くことでヨンヒに対する自分の気持ちを整理していたと思われる)を残していて、その手紙にはヨンヒを気遣う気持ちや、自分の抱えている葛藤や苦悩が書かれていた。
温和な人物だが、自分の信じるものに対しては危険なまでに盲目的になってしまうのは、ユホンと同じで、丸腰のユホンを背後から刺して崖から突き落とすなど、武器を嫌う平和主義者イルが、結局は武器や暴力に頼ってしまったことは皮肉なことと言える。