立体視とは、広い意味では物を立体的に見たり、立体感を表現したりするための方法一般を指す。
ただし狭い意味では、両眼視差によって立体感を得ることを指す。
通常、立体視と言った場合は後者の「両眼視差によって立体感を得ること」を意味する場合が多く、pixivにおいても同様。
概要
人間の脳は視覚から立体感を得るための手がかりとして、物体の大きさや重なり、陰影など、網膜像から得られる様々な情報を利用している。
その手がかりの一つに、両眼視差がある。
左右の目の位置は異なるため、物を左右の目で同時に見る時、その見え方は左右の目で微妙に異なっている。
この左右の目による見え方の差の事を、両眼視差という。
両眼視差は空間中に存在する立体を見る場合に発生するが、特別な方法により平面画像上に表現することも可能だ。
鑑賞者は、その画像を特別な方法で見ることにより、両眼視差による立体感を得ることができ、それがここでいうところの立体視というものだ。
従って、鑑賞者が片目の機能を完全に失っている場合は、ここでいう立体視を行うことはできない。
ただし、静止画の場合、作品に表現された両眼視差を後に述べる方法で運動視差に変換する事により、ある程度の立体感を片目だけで得る事が可能となる場合がある。
立体視のいろいろ
両眼視差を平面画像上に表現する方法としては、様々な種類がある。
pixivでは、以下に示す物が主に使われている。
ステレオペア
右目用の画像と左目用の画像を横に並べた物。ステレオグラムの一種。
鑑賞方法
右目用の画像を右目で、左目用の画像を左目で同時に見ることにより立体感を得る。
通常の鑑賞環境における(立体視のための特別な仕掛けを持たないPCモニタなどを用いる場合の)その具体的な方法は、「平行法」「交差法」といったキーワードで検索することにより確認できる。
画像の説明に「平行法で見るように」と書かれている場合、右目用の画像が右側に、左目用の画像が左側に配置されている。
逆に「交差法で見るように」と書かれている場合は、右目用の画像が左側に、左目用の画像が右側に配置されている。
平行法・交差法のどちらが得意・不得意かについては、観賞者により個人差がある。
一方、pixivでは同一内容の作品が交差法用、平行法用の両方の配置で投稿される事は少ない。
そのため、平行法用の作品を交差法で鑑賞したい、あるいは逆に交差法用の作品を平行法で鑑賞したいという欲求が、当然ながら発生する。
幸いな事に、作品が静止画の場合であれば、同じ作品を二つのウィンドウに同じ大きさで表示させ、画面上で左右の配置替えを行う事により、これらの欲求は容易に満たされる。
ちなみに、動画の場合は左右の同期を取る必要があるため、特殊なブラウザの使用、又は動画編集ツール等による加工が必要となるため、静止画の場合ほど簡単ではない。
幸いな事に、例えばニコニコ動画では、同一内容の作品が平行法・交差法の両方の配置で投稿されているケースが多数存在する。
またYouTubeのように、一つの立体視動画作品に対して、平行法用・交差法用・アナグリフ等から観賞者が表示形式を自由に選択できる機能を備えた動画サイトも存在する。
長所
- 原理が分かり易いため、比較的容易に製作可能。
- フルカラーでの立体視が可能。
- 画像フォーマットの変換等により、3D対応機材を用いた立体視も可能。
短所
- 通常の鑑賞環境では、立体視のために練習が必要。
- 通常の鑑賞環境(特に平行法)では、画像の横幅を大きくすると立体視が困難となる。
アナグリフ
互いに捕色関係にある色を用いて右目用画像、左目用画像を作成し、それらを重ね合わせて一枚の画像とした物で、余色立体法ともいう。
ステレオペアに用いる右目用画像、左目用画像から、画像処理により生成される場合もある。
鑑賞方法
昔の児童誌の付録で見たことも多いと思うが、左右のレンズ部分に異なる色のセロハンを張った眼鏡をかけて見ることにより立体感を得る、あの赤と青の線で書かれた絵のことを指す。
セロハンの色としては、左目側に赤、右目側にシアンを用いるのが一般的。
ただし、作品によっては右目側が赤であったり、上記とは異なる色の組合せが用いられる場合もある。
長所
- 練習しなくても立体視可能。
- 立体視の難易度は画像の横幅と無関係。
短所
- 鑑賞のために色セロハン眼鏡の調達または自作が必要。
- 色の再現性がステレオペアに比べて著しく劣る。
- ゴーストが見える場合がある。
オート・ステレオグラム
画像全面に配置する点やパターンの位置関係等により、一つの画像の中に視差情報を埋め込んだ物。
ランダムドット・ステレオグラム(RDS)やカラーフィールド・ステレオグラム(CFS)など、いくつかの種類がある。
鑑賞方法
ステレオペアと同様に、平行法又は交差法により鑑賞する。
長所
- 立体視の難易度は画像の横幅と無関係。
- 立体した時のみ表現物を認識できるため、神秘的な驚きを鑑賞者に与える。
短所
- 立体視のために練習が必要。
- 立体視できない人にとっては意味不明。
- 色が表現できない。
- 鑑賞者が3D対応機材を持っている場合であっても、その機能を有効活用できない。
ぷるぷる立体視
インターネット上には、視点の微妙に異なる2〜数枚の画像から作られた短周期ループアニメがいくつか存在しており、描かれた物体がプルプル震えながら立体的に見える事から、ぷるぷる立体視と呼ばれている。
画像から立体感を得る手段の一つではあるが、両眼視差のかわりに運動視差を用いるという点で、ここで言う立体視とは異なる。
両目で見るよりも、むしろ片目で見た方が、立体感が得られやすい。
ステレオペアやオート・ステレオグラムの作品が静止画であれば、立体感を得るための暫定的な手段として、ぷるぷる立体視の原理を適用する事が可能である。
ただし、もともとこの方法での鑑賞を想定した作品ではないため、立体感は本来の鑑賞方法に比べて劣る場合もある。
pixivに投稿されている静止画のステレオペアにこの原理を適用して鑑賞するための具体的な手順の一例を以下に示す。
- アクティブウィンドウの切替えキーを確認する。これは観賞者の使用OSによって異なり、例えばWindowsの場合は[Alt]+[TAB]となっている。
- 作品を表示する。
- 同じ作品を同じ大きさで別なウィンドウにもう一つ表示する。
- 上記2つのウィンドウの幅とスクロールバーを調整し、片方のウィンドウには右目用画像のみ、もう片方は左目用画像のみが表示された状態にする。
- 上記2つのウィンドウを、画面上の同じ位置に重ね合わせる。
- 1で確認したキー操作により、上記2つのウィンドウを0.5秒程度の周期で繰り返し切替えながら、表示される画像を鑑賞する。
- 見づらい場合はウィンドウを左右に少しずつずらして調整する
この方法はオート・ステレオグラムにも適用する事が可能である。
オート・ステレオグラムはそれ自体が右目用画像かつ左目用画像であるため、上記4の操作は不要である。
そのかわり、5の操作において、2つのウィンドウを適度にずらして重ねる必要がある。
作品に、視線のガイドとなる目印がある場合は、片方のウィンドウの左の目印ともう片方のウィンドウの右側の目印が画面上で同じ位置になるようにずらして重ね合わせる。
ガイドがない場合は、作品の中に周期的に見られる繰り返しパターン1つ分の幅を、ずらし量の目安とする。