概要
遡及とは「過去のある時点までさかのぼること」という意味で、不遡及とは「過去のある時点までさかのぼらないこと」
法の不遡及は法令の効力が及ぶ範囲はその法が施行されるより後のみとし、施行以前の案件までさかのぼって適用しないという理念である。ただし強度の公益性が認められる場合は遡及適用が認められることもあるが、刑罰法規に関しては遡及適用が認められない。
例えば現代に於いてはごく限られた用途以外で使用すると罪に問われるヒロポンだが、1951年の覚せい剤取締法施行前は普通に流通しており、罪に問われることもなかった。このヒロポンが合法だった期間中の所持・使用は覚せい剤取締法施行後も罪に問われない。
これも一例である。
法の遡及を認めて仕舞えばどのような行為がどんな罪に当たりどんな罰があるか事前に定めておくべきという罪刑法定主義がなりたたなくなる。自分が今行なっている行為が未来永劫合法である保証などないからである。
ただし司法に於いては重視されるが軍事裁判においては法の遡及が認められる。東京裁判やニュルンベルク裁判では『犯行当時』には制定されていなかった国際法によって戦争犯罪人が指定され戦犯が処刑された事例がある。