概要
呼吸を必要以上にたくさんする、早く過密になること。過換気とも。
人間の呼吸は、本来無意識な状況で規則正しく1分間に約12〜20回行われるが、過呼吸となると深い呼吸（通常より沢山の空気を吸うこと）が増え、また呼吸自体の回数も増えると考えられている。
身体を激しく動かす運動（陸上競技、水泳等）や十度の肉体労働を行った後や、歌を歌ったり泣いたりといった通常の呼吸法とは異なる呼吸を行った後に、激しく何度も呼吸を繰り返すことで起こりうる。
また、熱が出ている時や体に強い痛みがある時、嘔吐した後などはどうしても呼吸の回数が増えて間隔が早くなるので過呼吸を起こしやすい。ほかにも血液・循環系の病気などで息苦しさを覚えて過呼吸に至ってしまうことや、アレルギーや過敏症の症状で喘息などの呼吸器症状により誘発されてしまうこともある。
身体的な異常がなく、ストレスからくる不安や緊張など精神的な要因により過呼吸を起こしてしまうのは「過換気症候群」と呼ばれ、運動などで誘発されるものとは厳密には別物として扱われる。
発症の機序
- なんらかの要因により必要以上の呼吸を行う
- 血中の酸素が過多になり、逆に二酸化炭素が減少する
- 血中の酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、血液がアルカリ性に傾く
- 閉塞感、息苦しさを覚える
- 血中の二酸化炭素を増やす為、無意識に延髄が呼吸を停止させようとする
- しかし大脳皮質が呼吸の停止を異常と判断、更に呼吸をさせようとする
- 同時に血管の収縮が起こり、軽度の場合手足のしびれ、重度の場合は筋肉の硬直等が起こる事がある
- これらの身体症状が悪循環して、発作が悪化していく
という過程を経て起こる。
端的にまとめれば、
沢山呼吸をすることで酸素が増えすぎて二酸化炭素が足りなくなる→呼吸を止めて二酸化炭素を増やそうとする→しかし呼吸が止まるのは異常事態なので、もっと呼吸しようとする→ますます二酸化炭素が減る
という悪循環が起こっている状態といえる。
発症するとどうなるか
過呼吸を起こすと胸の苦しさや手足の痺れ、意識の遠のく感じといった身体的な症状のほかに「息がうまくできない」ことによる不安、ときに死への恐怖を感じるようなこともある。
基本的には過呼吸そのものが原因で死亡する事や後遺症が残ることはない※ので、もし自分が過呼吸になった、あるいは周りにそのような人がいるというときは、下記に挙げるような対処法を参考に、落ち着いて呼吸を整えられるような状態を作ることが重要である。
※心臓発作等を誘発して死に至る事はあると考えられている。また、誤った対処法により窒息してしまうことや、過呼吸以外の症状が悪化しており手の施しようがない、ということもあるため「全くない」とは言えない。
対処法
もし過呼吸になってしまったら、まず車や他の人が通らないような場所に移動する、座ったり横になったりするなどして安全（落ち着ける環境）確保し、意識してゆっくりと大きな呼吸をする。可能であれば5秒で吸って5秒で吐く、10秒で吸って10秒で吐く、というように、できるかぎり呼吸を遅く、間隔をあけて行うようにする。
呼吸が遅くなり、また意識して数秒止められるようになれば自然に落ち着いてくる。
また、介抱する側になった場合は、（相手を安全な場所に誘導するなどした上で）特に手出しはせず、声掛けで落ち着かせ、上記に挙げたような呼吸法を指示するなどして、相手が適切な呼吸が出来るように促すのが望ましい。周囲の人間も突然の発症にパニックを起こしてしまうと、まともな判断が困難になるので、とにかく冷静に対応すること。
適切な対処により、早ければ10分ほど、長い人でも30分ほどで自然に落ち着くとされる。
心配な場合、症状が軽快してから改めて医療機関を受診するのがよい。
また過呼吸以外の症状がある場合や持病などを抱えている場合、長い時間治る様子がない場合は救急車の要請や救急安心センター（♯7119）への連絡を行い、指示を仰ぐことも必要である。
自然に治る発作ではあるが、精神的な不安や恐怖などの症状が強い場合、精神科薬によるアプローチがなされることもある。
かつてはペーパーバック法という、紙袋等を口元に当て、自分の二酸化炭素を吸わせる事で解消する方法もあったが、適切に行われない場合、一気に酸素がなくなり二酸化炭素が過多になった結果、窒息死する事があるので、今は推奨されていない。
