スモーキング
すもーきんぐ
概要
『D.B.S 〈ダーティー・ビジネス・シークレット〉』を手がけた岩城宏士の月イチ壮絶アウトロー劇場として連載開始。
曲者ばっかの血煙遊戯!!左辺ジィ、ゴロ、八丁、ヒフミンの4匹の殺し屋どもが、この世にはびこる悪党どもを裁く、裁く、裁きまくる──。
登場人物
スモーキング
主に裏社会の中でも不義理(親殺し等)を働く非道の者を依頼によって暗殺する凄腕の集団。表の世界では知られていないが、裏の世界では名が通っており、凄腕である一方恨みを買っているという。基本的には裏社会の組織や人間相手に商っているが、稀に人間社会に隠れた罪なき人に非道の振る舞いを行う者を見聞きしては密かに始末する事もある。
左辺重蔵(さべじゅうぞう)
剥ぎ師(はぎし)。軍団のリーダーらしき白髪の爺さん。的を仕留めた際に証拠として入れ墨の皮だけキレイにはがす芸当を持つ。
普段、表の顔としてホームレスの姿などの一般人と接する場合は好々爺的であるが、裏の顔はかなり冷徹かつ残忍で眼光の鋭い人物。と、言ってもあくまで裏社会の人間としては珍しく人情家である(過去に無関係の罪なき少女が巻き込まれ命を落とした事を非常に悔いていたり、ヒフミンの成長を暖かく見守る等)。「剥ぎ師」の腕前からして元々は腕のいい外科医ではないかと物語中で推測された事もあり不明な所が見受けられるも、その過去は暗殺組織「シークレット」のナンバー2だった過去が判明する。殺し屋であるが、そのスモーキングとしての裏稼業には一定の線引きをしており誰彼かまわず葬るわけではないがかといって正義ではなく、「悪がこの世に不要な凶悪を葬る」信念を持つ。名前の由来は残忍を意味する「サベージ」「トランプのキング(13)」
トランプを度々持ち出しては普段は公園でトランプマジックを披露してたり、トランプ占いをしては出た絵柄で裏稼業の状況の善し悪しを予兆している。そして度々絵柄に例えている。
スモーキングのメンバーを家族が無く血の繋がりの無い故に血の繋がりを越えた固く熱い絆を結んで家族としている。
「スモーキング・サベージ」で一度解散した後に新メンバーを加えた新生スモーキングを結成し引き続きリーダーとなる。
ゴロ
潰師(つぶし)。元地下格闘技・「冷戦」のチャンピオンだった男。ケンカ無敵。素手で悪党どもを潰しまくる。
本名は不明だが、街でストリートファイトを繰り広げていた頃にステゴロスタイルだった事でゴロと呼ばれていた。「冷戦」時代は「五十六番」と呼ばれており、薬物に染められている殺戮マシーンのような男だった(冷戦とは「冷」すなわち覚醒剤を投与された荒くれ者同士で殺し合う非合法格闘技である)。左辺に出会い、染まっていた薬物を抜く荒療治による禁断症状との闘いは壮絶であり、佐辺とヒフミンの献身的かつ辛抱強い介護のお陰で一人の人間としての心を取り戻した。
厳つい外見ながら、弁当屋で働くシングルマザー・ミナミに恋をする等純情な一面も持っている。
実はミナミとは両思いだった事で後に家庭を築く。
八丁(はっちょう)
物足師(ぶったし)。銃や爆薬、あらゆるブツの調達能力に長ける。4人のうち、唯一、関西弁をしゃべる色男。身に付けているアクセサリーの数珠は様々な機能を持っており、窮地に陥った時に活用している。ヒフミン同様、作中では過去は語られなかった。
「サベージ」ではスモーキングから離れても情報屋として登場している。将来的には裏稼業から足を洗い大阪で新事業を成功させるとのことだったが、後述の笞杖徒流死の暗躍によって絶体絶命の事態に…。
ヒフミン
薬罪師(やくざいし)。オリジナルの劇薬を作り出すヘンテコ男。いつも同じ言葉を3回繰り返すクセを持つ。メンバーの中では佐辺に継いで古参であり最年少らしく、裏の世界でもまだ若造らしいが様々な薬品を作り出す腕は中々のもの。過去は一切語られておらず、佐辺がこの世界に引き込んだ事だけはわかっているが、恐らくは恵まれない人生を送っていたと推測される。
割と子供達に好かれているらしく、「コドモおじさん」として親しまれており一緒に遊んでいる光景も。普段は無口かまともに喋っていないが筆談となると饒舌の傾向がある。佐辺は親として、ゴロと八丁からは実の弟のように絆は深い。
「サベージ」ではミドと共に山篭りをしている様子。スモーキングのその後においてはボクシング界で活躍する才あるボクサーとなるとのこと。また、最近では手話を覚えようとしておりヒフミンに聴覚障害の描写はないはずだが、おそらくは彼の喋り方からすると言語障害を持っている故の意思疎通手段としようとしているのではないかと推測される。
ミド
破壊師(はかいし)。ゴロが山篭りの修行を行う為にスモーキングから離れた後に加わった新メンバー。ゴロ同様に元、地下格闘技「冷戦」のファイター・310番だった男。その為、ゴロ(56番)の事を知っていた。いつかゴロと戦いたいという憧れを持っていたが…?スモーキングと出会う直前にミドを雇っていたヤクザ組織に妹を無惨に殺された事で組織と対立。佐辺のスカウトでホームレス生活を始め、中々周りのホームレスと馴染めなかったが、佐辺が妹を丁重に荼毘にふしてくれた事や居場所を与えてくれた事と自分と同じく薬物で人生が転落したホームレスの男と心通わせた頃に、その男が惨殺された事で復讐を経て左辺への敬意を持ってスモーキングに正式に加わった。
ゴロと基本的には同じ格闘技の使い手だが、爪に仕込んだ刃での斬撃や刺突を得意とする。
続編「サベージ」でも登場。元々は「D.B.S」の登場人物であり美堂薫として登場していた。「スモーキング」「スモーキング・サベージ」は実はミドの過去の話だった事となる。なお、サベージでは仕込み刃は使っておらず、ゴロ同様に鍛え抜かれた肉体と己の腕で戦うスタイルとなっている。
松戸
佐辺と同じく「シークレット」のメンバーかつ拷問のスペシャリストだった男。後に佐辺に誘われる形でホームレス生活を始める。スモーキングのメンバーではないが、度々陰ながら助言や情報を提供してくる。ゴロやミド等にやたらタバコをたかる癖がある。裏社会(シークレット)では「拷問の松戸」「悪魔のビリケン」の異名で知られ恐れられた男。酒で身を壊している(アルコール依存症)も初老を迎えてもなお、その戦闘力は衰えてはいない。
アルコールに溺れてはいるも、佐辺いわく「その稼業ゆえに常人ならば間違いなく精神を壊しているレベルで重くのしかかるストレスを酒で押さえ込んでいる」らしい(それでもPTSDらしきものを患っている様子)。後に判明するが、実は後述の凡野兄弟の師匠である。ホームレスとなってからは猫・ニャニャを飼うようになり、ハードな過去故に疲弊した松戸の心を癒してくれる存在として新たな生き甲斐となっている。
スモーキング・サベージ
2018年に「ヤングキングBULL」で連載が始まった続編。前作から一年が過ぎており、前作でスモーキングが一度解散した後に新メンバー加入による新生スモーキングが暗躍する。
前作よりも「D.B.S」に関わる人物がさらに登場している。
基本一話完結だった前作と異なり、一話一話連続する形式が増えている。
「スモーキング・サベージ」の登場人物
九条
ホームレスになった元ヤクザの男。ナイフを手に他のホームレス達と関わりあう事を拒んでいたが、佐辺や凡野兄弟との出逢いで新生「スモーキング」に加わるが…?ただし、佐辺は当初は九条がスモーキングに入る事を望んでいなかった(佐辺曰く「ヤクザ崩れにできる生易しいものではない」)が、刃物捌きの腕には注目していた。実は「剥ぎ師・佐辺」に憧れを持っていた。そして徐々に凡野兄弟を始めとして心を開いていく。スモーキングのメンバーの中では「得意分野を持っていないプロの殺し屋としては完成されていない」為「○○師」とは付いていない。
落吐師(おとし)・凡野兄弟
新生「スモーキング」のメンバーである双子の兄弟。普段は物静かな兄のヒロシ、おかっぱ頭の弟アカシは表のホームレス達と過ごす姿は一見ヒフミン同様に公園の子供たちに好かれている穏やかかつ人畜無害でいわゆるゆるキャラ兄弟な二人だが、落吐師となると、先述の松戸に勝るとも劣らない恐怖の拷問兄弟の顔が顕になる。かつてはある組織の「拷問担当」だった。
実は松戸のシークレット時代に殺された親友の息子達であり、施設に入れない程に感情が欠落している上に動物虐待を繰り返しており、このまま放っておけない危険人物だった過去が明かされた(現在でもそれがギリギリ制御できる形でヒロシとアカシにはまだ残っている)。松戸は「人殺しをしない事」を鉄則にその危険な才能を見出して凡野兄弟に拷問のイロハを与え、ダークな手段とはいえ二人に「生き甲斐」を持たせた。しかし、凡野兄弟の手腕は松戸の想像以上に上回り「師匠超え」を若くして達してしまった事で松戸が酒に溺れた原因の一つとなった様子。松戸はいわば育ての親だった事になる。また、佐辺の下に来た事で他人や弱き者の為に涙する心を得るまでに成長したと佐辺や松戸は喜んでいる。
後にこの凡野兄弟のさらなる壮絶な過去を後述の宅士から明かされるのだが、まず凡野兄弟は異常な程タフである(特に兄ヒロシ)のはなんと拷問の腕を磨く為に互いに拷問し合ったという凄惨かつ壮絶そして狂気の賜物であった事が明かされる。その為か痛覚が麻痺しているらしい。また実はヒロシとアカシは片目が義眼であり、それも本当に互いに目をくり抜く事をやってのけたからである。
凡野ヒロシ
普段から無口で大人しく(実はかなり小声でボソボソ喋っていると判明)、常に弟アカシと行動している。裏稼業ではアカシがいないと手を付けられない程の感情の暴走を起こすらしく、拷問師の顔となると外観はゆるキャラ然なのに外道には残虐で凄惨な拷問・時に殺害を厭わないばかりか、「歯」「眼球」「鼻」といったパーツを戦利品として個別に容器にいれてはコレクションする異様さも残っている。しかし、それもあくまでも現在の彼の一面に過ぎず、アカシと共にホームレス公園にやってきた頃に一匹の猫(松戸が可愛がっている猫・ニャニャ)が最初の友達になった事で動物を愛する心優しさを持つ事と感情と居場所が生まれ仲間への絆を結んで行く事となる。その為、心通わせた者や仲間が傷つけられるのを許さない。後の「D.B.S」の登場人物であるヒロボンだと思われる。寒い冬でも食べる程アイスクリームが好物らしい。
凡野アカシ
凡野兄弟では「しっかり者で饒舌な方のおかっぱ頭」。普段から兄ヒロシと行動を共にしており、実は兄の暴走に対する安全装置と言える存在。兄同様に普段は穏やかで人畜無害な人物だが、拷問師の顔となると前作の松戸直伝の拷問テクニックを駆使する残虐な拷問を遂行する恐るべき人物。実は「サベージ」の前に読み切り「ボンチャン」での主人公でスモーキングのメンバーである事が先に明かされた人物。その後、「サベージ」でヒロシが加わり凡野兄弟の設定が生まれた様子。九条は過去に凄惨な末路に死んだ弟分「マル」の面影を屈託の無い笑顔を浮かべるアカシに感じ重ねていた。しっかり者であるが、松戸と初めて会った頃はヒロシ同様に感情が欠落していた。現在ではヒロシ同様に感情と居場所と絆が生まれており、腐れ外道から被害者(弱き者)が受けた仕打ちを悲しむ事や仲間が傷付けられる事に怒りを持つ事ができるようになった。詳細は不明だがアカシは何かしら医療技術や用語の知識がある様子。
宅士建
一本独鈷の極道・十一會の若頭であったが、十一會が謎の集団により宅士や舎弟分の志場を除いた組長と組員らが惨殺され壊滅したのを機に謎の集団の正体である後述の『笞杖徒流死』への復讐の為、組織として消滅していた「シークレット」の復活を目的に動き出す。佐辺は「ヤクザには到底できない程の稼業」としつつも、宅士の揺るぎない決意にエールを贈った。「D・B・S」からの登場人物。普段は志場と共にとある漁港で水産業に従事している。冷徹で非情な顔を持つが、人情に篤く弟分の志場が襲撃されかけた時はその身を呈して護ろうとした等、宅士の居場所を死ぬまで吐かなかった十一會組長の生き様を受け継いだところも見受けられる。
志場
元々は十一會の裏切り者に利用されていたチンピラだったが宅士に捕まえられてしまい、出張してきたアカシの強烈な拷問にかけられたが、単に利用されただけの事情とアカシの拷問に耐えたその根性を宅士に認められた事で十一會入りする。その後十一會壊滅により宅士から「若頭と舎弟」ではなく「兄貴と弟分」の義兄弟の間柄になるように持ちかけられ、志場は宅士に何があっても付いていく決意を固めた。以降は宅士を「タッケンの兄貴」として慕う。だが、後述の『笞杖徒流死』に妻が殺害されてしまい笞杖徒流死に深い憎悪を抱く事となった。
シクロ
スモーキングのメンバーではないが、フリーの忍び・潜入の潜りのプロ。半グレ等の集団に潜ってあらゆるネタ(情報)を取る「潜水師」。ミドの「冷戦」時代からの知り合いで冷戦のファイター・496番だった男。ミドを敬愛している。実は本人も知らなかった出生にある秘密があった…。
表稼業では自動車整備士をしている様子。
後述の「笞杖徒流死」により絶体絶命の危機に遭った八丁を秘密裏に救出できる手筈を整えており、後に大阪で八丁と再会した時はその身を案じてた事で涙した。
笞杖徒流死(チジョウズルシ)
かつて日本で暗躍していたシークレットやスモーキングと同様の暗殺集団。スモーキングが人の温かみを持つ一方で裏稼業では冷徹な「必要悪」とするならば、この『笞杖徒流死』は元より「凶悪」「極悪」「外道」といった残虐非道きわまりない集団。リーダーである獅子神なる男を筆頭にした五人で構成されているが、獅子神以下のメンバーはどうやら彼の血の繋がった息子達である様子。スモーキングが血の繋がりが無い故の固い絆であるのとは対照的。なお、獅子神はたとえ血が繋がっていようと失敗したメンバーを平気で殺害する程である。十一會を壊滅に陥れた事で三代目「シークレット」並びに新生「スモーキング」の最大の敵になるようである。
なお、笞杖徒流死とは「笞刑(鞭打ち刑)」「杖刑(杖などの棒打ち刑)」「徒刑(強制労働刑)」「流刑(島流し等)」「死刑」の五刑から来ている。
獅子神
笞杖徒流死のリーダーであり、言葉こそ丁寧だが残虐極まりない男。日本中に彼の血を引く息子達が多数いるらしく、先述の通り使い捨てに近い扱いをしている。
なんと、先述のシクロは彼の数ある息子の一人だった。だが、シクロはその衝撃の事実と共に他の息子達と違い獅子神率いる笞杖徒流死の凶悪さには嫌悪している様子。