概要
まだ少女だった頃、うたは流行り病で家族を全員亡くしてしまう。
天涯孤独になったばかりの彼女は縁壱と出会い、実家を出奔して行く当てのない彼と一緒に暮らすことになった。容姿は「黒曜石のような瞳の女の子」と縁壱に評されており、昼から夜までよく喋る明るい性格だった。
表情に乏しいが故に誤解されやすかった縁壱だが、うたは表情以外からも彼の感情を読み取れたようで、彼と心を通わせることができた。縁壱があまりにも物事に動じない性質であったので、うたも初めは縁壱を地蔵の精か座敷童の類かと思っていた時期がある。
彼女との暮らしで、縁壱は自分と世間の人の違いを知る事になり、同時に糸の切れた凧の様だった自分の手をしっかりと繋いでくれたうたを深く愛するようになる。
出会って十年後、大人になったうたは縁壱と正式に夫婦となり、間もなく彼の子供を授かる。
だが臨月が近づいたある日、縁壱が産婆を呼びに行っていた間にうたは鬼に襲われ、お腹の子ごと殺されてしまう。帰宅して妻子の遺体を目の当たりにした縁壱は十日もの間茫然としていたが、鬼を追ってやってきた剣士に諭され、うたと我が子を埋葬し弔った。
縁壱はその後60年以上を生きたが、生涯でうただけを愛していた。
最終話の現代では、縁壱とうたに似た夫婦が赤ちゃんを抱いて登場した。
解説にて仲睦まじい親子と書かれており、妻が夫に幸せそうに笑いかけている。