「Priest2-1 this is Trebor permit fire.Kill “Wyvern”」(プリースト2-1、武器の使用を許可する。『ワイバーン』を撃墜せよ。)
「Trebor, Say again」(トレボー、もう一度言ってくれ。)
「I say again, kill “Wyvern”」(繰り返す、『ワイバーン』を撃墜せよ。)
「……………Roger, kill “Wyvern”」(…………了解、『ワイバーン』を撃墜する。)
概要
「方舟」の一件から3年後の2002年冬。かつての特車二課第2小隊は、隊長の後藤と山崎を除いて新しい職場に異動し、それぞれの日々を送っていた。そんなある日、横浜ベイブリッジで爆破事件が起こる。当初は事前に犯行予告があった自動車爆弾かと思われたが、自衛隊の支援戦闘機・F-16Jらしき飛行機から放たれた一発のミサイルによるものであることがテレビによって報道される。
事件に関して様々な情報が錯綜するある夜、南雲と後藤の前に陸幕調査部別室に属する「荒川」と名乗る男が現れ、ベイブリッジを爆撃したのは自衛隊機に見せかけた、擬装情報に誘導された米軍機であることを語る。元々この事件は、アジアの軍拡競争にも危機感を示さない日本を憂う国防族や米国勢力のグループが立てた軍事的茶番劇であり、実際に空爆を行う意思はなかった。荒川は、その茶番劇を利用し、ベイブリッジを本当に空爆するよう改変した容疑者としてグループの創立以来のメンバーである「柘植行人(つげ ゆきひと)」という人物を捜索していた。日本政府は米軍から報告された真相の公表を迷っており、表立って警察の協力を仰げない状況下で荒川が目を付けたのが、各方面にパイプを持つ後藤であった。
荒川の真意を掴みかねる後藤は話を断ろうとするが、そこに航空自衛隊三沢基地所属のF-16J三機(コールサイン『ワイバーン』)が爆装して発進し、首都圏へ向け南下中との急報が届く。百里基地(コールサイン『ウィザード』)と小松基地(コールサイン『プリースト』)から要撃機が急行したが、地上からの管制を受け先んじて接触した百里所属機は、目の前にいるはずの三沢所属機を捕捉できない。そして百里所属機からベイルアウト信号が発せられてレーダー反応が消失したことで、防空司令は百里所属機が攻撃されたと判断、三沢所属機に対する撃墜命令を下す。命令を受けた小松所属機は三沢所属機にロックオンしたが、その矢先、突如として三沢所属機のレーダー反応が撃墜されたはずの百里所属機に入れ替わり、再び交信に応じた。
当初から三沢所属機は発進しておらず、航空自衛隊バッジシステムへのハッキングと電波妨害で作り出された仮想状況に過ぎなかったのである。
評価
英語のやりとりから出る雰囲気はさることながら、クオリティの高い作画、精巧なメカデザイン、武器を使用するかしないかの瀬戸際における緊迫感とリアリティからパトレイバー屈指の名シーンとして知られている。
ちなみに同じ押井守監督作品のぶらどらぶでは、幻の爆撃をオマージュしたシーンが存在している。背景やレイアウトだけでなく、キャラクターまで(一部左右を反転させているカットもある)完コピしており、「よくぞここまでそっくりに作ったもんだ」と感心するぐらい忠実に『パトレイバー2』を再現している。
余談
・『ウィザード』のベイルアウト信号が発せられた際、画面上のスクリーンには7700という数字が映っているが、これはATCトランスポンダのスコーク番号であり、7700は緊急事態を表し、「Mayday」や「Declare emergency」(緊急事態を宣言)と同じ意味になる。戦闘機の場合、緊急脱出をすると自動的にIFF(敵味方識別装置)のトランスポンダがスコーク7700を発信する。