T-80
てーぶぉーすぃぇみぢすゃと
開発経緯
当時、精鋭部隊を中心に配備されたT-64は期待に反して欠陥が多く、これを改良発展した戦車としてT-80が開発された。そのため、普及型戦車であるT-72とは別に開発された車輌である。
T-80の開発は、T-64にタービンエンジンを搭載したSKB-2の開発に始まった。レニングラード(現:サンクトペテルブルク)のキーロフ工場で開発されたSKB-2は、改修を経てT-80として量産に移った。1976年にソビエト連邦軍に採用された。
設計
兵装
特徴として、主砲である2A46M-1 125mm滑腔砲から射程約4000~5000メートルの9M119MレフレークスMレーザー・ビーム・ライディング誘導対戦車ミサイルが発射可能にした。この装備は後のT-90にも引き継がれることとなり、西側戦車の射程範囲外から攻撃可能な能力を得た。
また、125mm滑空砲の通常砲弾は分離装薬式のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)及びHE-FRAG(破片効果榴弾)を使用する。
装甲
T-80の装甲は砲塔最大410mm、車体最大420mmの複合装甲で構成されているが、その防御性能は未だに未知数である。その他、爆発反応装甲も追加できる。
機関
T-80ではT-64で計画中止となったガスタービンエンジンの採用があげられる。
ロシアでは以前からガスタービンエンジンの開発に熱心な国であった。ガスタービンエンジンの特徴である小型軽量で大馬力なので戦車シルエットの小型化に全力を傾けてきたロシアとしては非常に重要なことであった。しかし、ガスタービンエンジンの開発は困難を極め、当初T-64シリーズにも搭載される予定であったが開発に失敗してしまった。
T-80ではガスタービンエンジンの搭載が至上命令となり、航空機用ジェットエンジンの開発の実績も豊富な、クリモフ名称化学生産合同企業に開発が引き継がれて開発に成功、実用化することができた。しかし、ガスタービンエンジンは燃費が非常に悪く、1ℓで400mほどしか走行できないとも言われる。そのため、ディーゼルエンジンを搭載したT-80UDも並行して調達されることになった。
電子装備
T-80はスタビライザー付きの125mm滑腔砲を装備し、新型の火器管制システムとトランスミッションを搭載している。自動装填装置はT-64の改良型で、装填トレイ上には28発の砲弾を搭載可能にした。NBC装置の他、夜間暗視装置も備え付けられているが、本格的に生産が始まる頃には、ソ連経済の失速もあって非常に高価なT-80は悩みの種となった。
燃費向上
急遽保険として開発されていたディーゼルエンジン搭載車も1985年に採用された。
戦車も引き続き調達され、ハイローミックスで運用されることになった。その後エンジンをパワーアップした型や爆発反応装甲を搭載したモデルなどの改良型が登場し、1985年にはT-80シリーズの決定版とも言えるT-80Uが登場、燃費と機動力も大幅に向上した。
市場売買
これにより、ソ連が当初目指していた究極の戦車としてT-80は完成した。
ソ連崩壊後はT-80も輸出商品の目玉として盛んに海外への売り込みが図られており、パキスタン、キプロス、韓国などへ輸出され、5ヵ国で約4000両の戦車が運用されている。
また、T-80の開発を行っていたウクライナでは、独立後も自国で運用するT-80UDの改良作業を続行した。その一過程として、前述の通りパキスタンへ輸出された車輌の一部にはウクライナ製の新しい溶接砲塔が採用された。
そしてウクライナ陸軍の主力戦車となったT-80UDは320輌がパキスタンに輸出され、カシミール紛争で使用された。これらのうち一部の車輌は改良型のT-84と同様の砲塔を搭載していたので、T-84と紹介されることもあるが、正式にはこれらはすべてT-80UDとされている。
現在ロシア陸軍やインド陸軍の主力戦車となっているT-90は、T-72にT-80の特徴を付与した混合発展型であるといえる。その後のウクライナでは自国向けに新型エンジンや溶接砲塔を搭載し爆発反応装甲を施したT-84が主力戦車として開発・配備され、2001年からはT-80UDのさらなる改良型であるオプロートも部隊配備されている。
また、輸出型としてヤタハーンも開発され、NATO標準の120mm主砲を搭載した。そのため諸外国に輸出されたヤマハーンはトルコ、ギリシャ、マレーシアでのトライアルに参加している。
バリエーション
SKB-2
СКБ-2 レニングラートのキーロフ工場で開発された、T-64の発展型。
T-80
Т-80開発名称219型と呼ばれた。最初の量産型。T-64に1,100 馬力のGTD-1000タービンエンジンを搭載した。
T-80A
219A型。ハルキウでT-80UD仕様に改修したもの。
T-80B
Т-80Б 219R型。9KI112-1「コブラ」対戦車ミサイルを運用できた。装甲も、新しいセラミック装甲となった。
T-80BK
Т-80БК 630型。T-80Bの指揮戦車型。ナヴィゲーションシステムと無線装置を装備した。
T-80BV
Т-80БВ 219RV型。T-80Bの派生型で、コンタークト1爆発反応装甲を装備した。
T-80U
Т-80У 219AS型。T-80U1985年型。9M114「レフレークス」対戦車ミサイルを運用できた。砲塔を刷新した。装甲は、新型のコンタークト5爆発反応装甲となった。エンジンは1,250 馬力のGTD-1250が搭載された。新しいナビゲーションシステムが搭載された。
T-80U(M)
Т-80У(М)219AS型。T-80Uの派生型で、火器管制装置が刷新された。
T-80UK
ロシア連邦で開発されたT-80Uの指揮戦車型。TShU-1-7「シュトーラ1」アクティブ防護システム、TNA-4-3ナビゲーションシステム、KV無線装置など新しいシステムを装備した。
T-80UE
Т-80УЭ、1999年にロシア連邦で開発されたT-80UKの輸出型。TShU-1-7「シュトーラ」アクティブ防護システムが装備品から外された。ロシア連邦の輸出向け戦車の主力商品となった。
T-80UD「ベリョーザ」
Т-80УД «Берёза» 478B型。愛称の「ベリョーザ」(«Берёза» ビリョーザ)は「ロシア語で「白樺」を意味する。ウクライナ語では「ベレーザ」(«Береза» ベレーザ)。白樺は女性の象徴でもある。整備維持コストと調達コストの低減を図るユーザー向けのモデルで、もともとは旧ソ連向けに1985年に開発したT-80Uの派生型で、T-64中戦車用の水平対向型ディーゼル・エンジン6TD(1,000馬力)を搭載。ウクライナ独立後は同国の主力戦車となる一方、輸出も試みられ320輌がパキスタンに輸出された。これらは、ウクライナ軍向けに製造された車両の新車転売、もしくはウクライナ軍で運用されていた車両の中古転売であると考えられているが、装備する爆発反応装甲は従来の「コンタークト1」ではなく「コンタークト5」が装備された。一部はT-84の砲塔を搭載したため、パキスタンに輸出された車両をT-84とする資料もあるが、製造元の設計局ではパキスタンに輸出した車両をすべてT-80UDとしている。
T-80UDK
Т-80УДК、T-80UDの指揮戦車型。
T-80UM-1「バールス」
Т-80УМ-1 «Барс»
ロシア連邦で開発されたT-80Uの発展型。「アレーナ」アクティヴ防護システムを装備する原型車輌。オムスクでの兵器ショーでは常連だが、まだ販売には至っていない模様[1]。愛称はロシア語で「雪豹」のこと。
T-80UM-2「チョールヌィイ・オリョール」
Т-80УМ-2 «Чёрный орёл»ロシア連邦で開発されたT-80UMの発展型。「アレーナ」アクティヴ防護システムを装備する。車体を延長して転輪を片側7個に増加。自動装填装置付でブローオフパネル付の弾庫を持つ後部の大きな新型砲塔に140mm(135mm という説もある)滑腔砲。カクトゥス爆発反応装甲と新型照準システムなどを搭載した多くの新装備を含む車両である。現在のデモンストレーション時の試作車両ではGTD-1250ガスタービン・エンジンを搭載している。今は海外顧客の注文によってさらなる開発を行うという立場であるが、今後のロシア政権次第では再び国家から開発予算が得られる可能性が出てきた。
Т-84
ウクライナが開発したT-80UDの発展型。
諸元性能
全 長 :9.66m
車体長 :7m
全 幅 :3.6m
全 高 :2.2m
重 量 :46 t
懸架方式:トーションバー方式
最高速度:65 km/h(整地)~45km/h(不整地)
航続距離:335km~600km(外部タンク搭載時)
発動機 :GTD-1250 ガスタービン1250馬力
乗 員 :3名
主 砲 :125 mm滑腔砲 2A46M-1
副武装 :12.7mm NSVT機関銃、7.62mm PKT機関銃