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概要

1986年6月19日に「T-72Bの改良型」として開発がスタート。T-64やT-80よりも整備がしやすく使い勝手の良いT-72の攻撃力強化型を大量配備してくれという現場の声をうけての事だった。都市伝説では、「オリジナルよりも性能の劣る輸出型(別名:モンキーモデル)が湾岸戦争で多国籍軍のM1エイブラムスチャレンジャー1に一方的に撃破され、輸出商品としてのT-72のみならずロシア製兵器全般の評価がガタ落ちしたため、それを挽回するために開発された。」と語られるが、実際には1989年の時点で試作型が完成しており、湾岸戦争は主力戦車の更新を渋る上層部のケツを叩いたにすぎない。


T-72をベースに高価なT-80Uレベルに近づけた輸出市場向け戦車であるが、上位に位置するT-80Uが高価格と装備調達の合理化を理由に早々に生産を打ち切られ、次期主力戦車として開発が進められていたT-95も開発中止となったことから、現在はインドでのライセンス生産化やアルジェリアへの輸出と並行して、ロシア連邦軍にも主力戦車として配備が進んでいる。


自動装填装置は、T-80より発射速度が劣るものの構造が簡単なT-72と同じ系列のものが採用されている。

エンジンは、T-80ではガスタービンエンジンだったものがT-72と同じ系列のディーゼルエンジンが採用された。


また、T-72の上位に位置するT-64とT-80はウクライナで生産されていたため、ソ連崩壊により新規車両やメンテナンスパーツの入手が不透明になったことも開発の動機の一つであると考えられている。


攻撃性能

T-90の特徴は従来のロシア製戦車よりも高度に自動化された攻撃システムである。

主砲は『2A46M-1 51口径125mm滑腔砲』で、分離装薬式砲弾型のAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)、HEAT(対戦車榴弾)、HE(榴弾)のほか、T-80で採用された『9M119M レフレクス対戦車ミサイル』を発射できる。

この様に主砲からミサイルを発射できるのは旧東側戦車の特徴で、レフレクスはレーザーを戦車から目標に照射し、その反射を捉えてミサイルを誘導するセミアクティブレーザー方式を採用している。弾頭重量は17.2kg、砲弾より軽く、レーザーは妨害を防ぐようにコード化されている。飛翔速度はマッハ2、射程は約5000m。最大750mmから800mm程度の鉄板を貫通し、爆発反応装甲を装着した戦車や低空を飛行中のヘリコプターに対しても効果を発揮した。

これによって一世代前のレオパルト1M6074式戦車クラスの第二世代主力戦車や、レオパルト2の初期型など第三世代主力戦車も撃破が可能になったが、このミサイル30発でもう1両のT-90を購入可能なほど高価な代物である。それでも輸出商品としてT-90の価値を高めることは間違いないだろう。

また、T-90の1A4GT統合射撃管制システムはレフレクス用の1G46照準・距離測定システムと2E42-4スタビライザー、1V528弾道計算コンピューターやDVE-BS風向測定器などから構成され、走行中の射撃でも高い命中率を誇っている。砲塔には自動装填装置と砲手用の1A43昼間射撃管制装置とTO1-KO1熱線映像装置を装備しているので、夜間でも1.2km~1.5kmの視界を得ることが可能である。


防御性能

装甲などの防御装備も改良されており、5層に重ねられた積層装甲(複合装甲)と新型の爆発反応装甲コンタクト5を採用している。この新型装甲はあまりよくわかっていないが、HEAT弾などの化学エネルギー弾のほかに徹甲弾などの運動エネルギー弾にも効果を発揮する。

さらに、敵戦闘車両や航空機などのFLIR(赤外線監視装置)や赤外線誘導方式の対戦車ミサイルに対するジャミング装置『TShU-1-7シュトーラ-1』を搭載している。従来のロシア戦車にない新機軸として搭載しているこのアクティブ防護システムは、赤外線ジャマー、レーザー警告システム、4つのレーザー検知装置で構成され、敵の照準用レーザーを検知し、ミサイルの発射機に強力な赤外線照射を浴びせ、無力化を狙うシステムである。一言で言えば赤外線に対する目くらましである。

どれも技術的に冒険し過ぎない堅実なシステムである一方、爆発反応装甲は作動時に周囲の味方歩兵やトラック等のソフトスキンに危害を及ぼす可能性があり、アクティブ防護システムは夜間では強力な赤外線が逆にこちらを照準している敵以外にまで存在を知らせてしまう可能性がある(もっとも、赤外線照射をしなかろうが攻撃を受けている時点で他の敵に発見されるのも時間の問題である)。


機動性能

搭載しているエンジンは当初、T-72系列のエンジンを改良したV-84MSディーゼルエンジンであったが、出力が840馬力とやや不足気味で、諸外国の主力戦車よりも軽量であるT-90にとっても必ずしも満足できるパワーではなかった。そのため、輸出向けのT-90Sでは1000馬力のV-92S2を装備し、ロシアでもT-90Aから装備された。最新型のT-90Mでは1130馬力のV-92S2Fとなり、さらに強化されている。

その他、標準装備としてNBC防護システム、消火システム、潜水渡渉システム等を装備し、車体前部にはドーザー・ブレードやKMT-7、KMT-8といった地雷処理機材も装着できる。


売買価格

調達価格は各種オプションによるがT-80U戦車の50~70%(100~140万ドル)で内容の割に低い設定となっており、また既存のT-72戦車シリーズからのアップグレード・サービスも商品化されている。(フフーフ)

2000年10月にインドが310両のT-90S戦車と回収型を購入、190両はインドでノックダウン生産が行われ、2006年にT-90S戦車のライセンス生産権を購入、ビーシュマ(Bhishma)の名称で同年に330両、2007年に347両を発注して、330両がモロッコに輸出される。さらに、ロシア本国のT-90戦車もアルジェリアに180両(T-90SA戦車)輸出されることが決定し、サウジアラビアが150両の導入に向け交渉中、トルクメニスタンが10両採用したという情報も流れている。


総合評価

T-90戦車は安価で堅牢確実なT-72戦車のコンポーネントを利用してT-80U戦車並みの新型MBTとして実用化された優秀な第3世代主力戦車の一つであることは間違いない。

攻撃性、防護性、機動性に関しても世界水準でありながら、極めて安価であるT-90は兵器として高い完成度を誇っていると言ってよいだろう。

敢えて批判することがあるとすれば、同世代のM1エイブラムスよりも小さい車体に押し込まれた多数の機器と低い車高、幅広履帯のため狭くなった車体幅などから、車体内部の居住性能が劣悪で、隠蔽率と引き換えに乗員に負担を強いているという、元となったT-72の短所も受け継いでいることくらいである。

これからもT-90は今日に至るまで旧式戦車を運用している第三世界の国々に輸出が拡大されるだろう。しかし、東欧諸国や旧ソ連構成国がT-72やT-80をベースに西側技術を導入した独自の戦車や改良キットを開発しているため、これらの戦車と激しい輸出競争が繰り広げられることが確実に予想される。

また、ロシアのウクライナ侵攻では、T-72共々対戦車ミサイルで多数の損害を被ったり、鹵獲されたりという事態になっており、輸出評価が変動するかもしれない。もっとも、ウクライナ侵攻により深刻な兵器不足に陥ったロシアは、2024年時点で兵器輸出が半減してしまっているが…。


主なバリエーション

T-72BU

ソ連軍での制式採用時の名称。ソ連崩壊時のゴタゴタで量産型の登場はそれから1年ほどかかった。


T-90

T-72BUの量産型にあたる、初期型。ロシア軍での採用時、T-90となった。現在は改良型がメインのため予備として保管されており、T-90Mなどに改修されている。


T-90S

輸出型。イラク陸軍などで使われている。T-90Cと表記されることがある。


T-90S/M"ビーシュマ"

インド陸軍向けの改良型。主砲を換装し、装甲はインド国産のものが採用されている。エンジンも新型になっている。T-90Mではフランス製アクティブ防御システムを搭載し、インドでライセンス生産されている。

なおロシアは、インドから預かっていたこれらS型を借りパクして戦場に投入した疑惑がある。


T-90K/T-90SK

指揮型。SKは輸出型の指揮型。


T-90A ウラジーミル

T-90Sのロシア陸軍向け。2004年から納入されている。新型砲塔を採用し、見た目が角張っている。ウクライナ侵攻にも投入されたが、やはり多くの被害を出している。


T-90M プラルィヴ

T-14の開発で得られた技術をT-90に反映したもので2023年現在の最新モデル。輸出用に開発されたT-90MSを原型としており、こちらはエジプトが採用を決定したもののウクライナ侵攻の影響か続報がない。

ウクライナ侵攻では初年度から戦闘に参加しており、複数以上の活動や攻撃映像そして撃破写真や鹵獲等の情報がウロ双方から出ている。なお現地改造や工場での別パーツ付加を含めて多様な所謂obr.2022やobr.2023が目撃されている。

ちなみにだが2024年の1月に当該車両がアメリカから供与されたウクライナ軍のM2ブラッドレーに撃破される事態が発生したが、ブラッドレーの搭乗員は「ビデオゲームをやっていたからT-90の弱点はおおよそわかっていた」という(恐らくこのゲームのことだと思われる)。


諸元性能

<T-90戦車>

全長:9.53m

車体長: 6.86m

全幅:3.46m

全高:2.226m

重量:46.5t

乗員:3名

発動機:V-84-MS 4ストロークV型12気筒液冷スーパーチャージド・ディーゼル

最大出力:840馬力

最大速度:60km/h

航続距離:500km


○武装○

51口径125mm滑腔砲2A46M2×1(43発)

12.7mm重機関銃NSVT~Kord×1 (300発)

7.62mm機関銃PKT×1(2,000発)

9K119レフレークス対戦車誘導ミサイル・システム


○装甲○

複合装甲 爆発反応装甲


<T-90S戦車>

全長:9.53m

車体長:6.86m

全幅:3.46m

全高:2.226m

重量:46.5t

乗員:3名

エンジン:V-92-S2 4ストロークV型12気筒液冷ターボチャージド・ディーゼル

最大出力:1000馬力

最大速度:65km/h

航続距離:500km


○武装○

51口径125mm滑腔砲2A46M2×1(43発) 12.7mm重機関銃NSVT~Kord×1(300発)

7.62mm機関銃PKT×1 (2,000発) 9K119レフレークス対戦車誘導ミサイル・システム


○装甲○

複合装甲 爆発反応装甲


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関連タグ

T-72 T-80

M1エイブラムス レオパルト2

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