第二世代からの変更点
第三世代MBTは第二世代に比べ、外見が全体として角ばったものとなっている。これは装甲の材質の進化によるものだが、具体的な変更点は以下に挙げていく。
装甲
もっとも重要な変更点は装甲である。
WW2後期から戦後第二世代までは、戦車の形状は「避弾経始」という概念が広く取り入れられていた。
これは、敵の砲弾に被弾した時、進入角度が浅くなれば見かけ上の装甲の厚さが増し、まるで水を石が跳ねるように砲弾を逸らす効果が期待できた。
したがって、砲弾の着弾角度を浅くできる丸みを帯びた砲塔や、傾斜をつけた車体などが第二世代までの基本的な形状であった。
しかし、技術の進歩によりAPDC(装弾筒付徹甲弾)やAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)のような強力な砲弾が開発されるようなると、浅い角度でも装甲が貫通されるようになり避弾経始がまるで通用しなくなってしまった。また、歩兵の対戦車ミサイル等が大きな脅威となっていたため、より機動力を重視していた。(避けて守るという考え方)
さらに、第二世代までの装甲は鋼鉄などの単一の材料で作られていることが多く、鋳造時にセラミック等を鋳込むとしても製造時に大きな制限となるために難しく、装甲を厚くすることで防御を高めるのは限界にきていた。
そこで開発されたのが「複合装甲」である。
これは、従来の装甲の間に性質の違う装甲を何層にも重ねあわせ、それぞれの特性を互いに補うことで防御力を高めた装甲である。
複合装甲の内部に使用される材料は、拘束セラミック、劣化ウラン、チタニウム合金、繊維強化プラスチック、合成ゴムなどである。
これによりAPFSDSやHEAT(成形炸薬弾)、HESH(粘着榴弾)のような強力な攻撃手段にある程度耐えることが可能となった。
しかし、複合装甲は性質の異なる材質が利用されているため曲面形に形成するのは難しく、第三世代は角ばった形状となった。
また、APFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)に対しては、傾斜装甲による避弾経始の思想が通用しないので、レオパルト2や90式戦車のように、ほとんど避弾経始を考慮しない車体形状になっているものも少なくはない(M1エイブラムスやチャレンジャーはある程度避弾経始を考慮したデザインになっている)
火砲
第二世代では105mmライフル砲(西側)または115mm砲(東側)が主流であった。
ライフル砲とはその名の通り「ライフリング」という溝が刻まれた砲である。
ライフリングは19世紀後半に普及した技術であり、弾丸に回転エネルギーを与えることでジャイロ効果を発生させ、弾丸の直進性を安定させるものである。
これにより射程、威力、命中精度は飛躍的に向上し、19世紀以降はほとんどの銃器・火砲がライフル化された。
しかし、APFSDSやHEATという砲弾が使用されるようになると別の問題が生じるようになった。これらの砲弾は回転が加わると、着弾時に直進するエネルギーが周りに拡散してしまって貫徹力が弱まってしまうのである。
そのため、ライフリングが施されていない滑腔砲へ「先祖帰り」することになった。
東側は第二世代の時点ですでに滑腔砲を採用しており、西側諸国でも第三世代から滑腔砲が標準となった。(唯一滑腔砲を採用していないのは、イギリスだけである。これにはちゃんとした理由があり、他国では砲弾の殆どがAPFSDSやHEATになっているのに対し、イギリスではライフル砲の方が精度が上がる粘着榴弾を使い続けているからである。)
口径も西側120mm、東側125mmと大口径化している。
暗視装置
第二世代では「アクティブ型」暗視装置が採用されていた。
これは、不可視の赤外線ライトで辺りを照らし、赤外線カメラで暗所でも視覚を確保する装置である。しかし、相手も同様に赤外線カメラを装備していた場合、逆にこちらの位置を教えてしまう弱点があった。
その後技術が発達し、第三世代では照射した赤外線のみならず敵の発したほんの僅かな光や熱赤外線を受容し感知できる「パッシブ型」暗視装置が採用されるようになった。
第二世代と第三世代では夜間の交戦可能距離に十倍以上の差がある。
ただし、これについては第2世代MBTでも改修などで第3世代MBTと同等の能力を得たものもある。
エンジン
第二世代では、主に700~800馬力級のディーゼルエンジンが採用されていた。
第三世代では、複合装甲や長大化した砲により増加した重量でも十分な機動力を確保できるよう、1200~1500馬力級のエンジンが搭載されている。
また、エンジンの種類もディーゼルエンジンのほか、ガスタービンエンジンが採用されたものもある。
次世代への動き
次世代となる第四世代戦車については、まだ明確な方向性が定まっていない。
共通しているのは、現代の戦車は装備を追加していった事でモリモリ重量が増していき、単純なサイズ拡大などによる性能向上に限界が見え始めているという事だけである。
日本の陸上自衛隊が保有する最新戦車である10式戦車は、第四世代戦車と公式に呼称している。実際10式は他の第三世代MBTと比較して、大幅な小型化など多数の改良及び新機能の追加を行っている。
その性能も第三世代から大きく向上しており、名実ともに第四世代MBTと呼ばれても不思議ではない性能を誇る。
ロシアの最新戦車であるT-14は従来のロシア製戦車より大型化した一方で砲塔を無人化するという斬新な設計を採用しており、第四世代戦車どころか第五世代戦車と呼ばれる事さえある。
主な第三世代
アメリカ | M1エイブラムス |
---|---|
イギリス | チャレンジャー1/チャレンジャー2 |
イスラエル | メルカバ |
ドイツ | レオパルト2 |
日本 | 90式戦車 |
フランス | ルクレール |
ロシア | T-80/T-90 |
中国 | 99式戦車 |
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