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M1エイブラムス

えむわんえいぶらむす

アメリカ合衆国軍の第三世代主力戦車。一度は生産ラインが破棄されたものの、2020年に再生産を開始。現在も第一線で活躍している。開発はジェネラル・ダイナミクス社。エイブラムスの名は、この戦車の開発を推進した人物であり、バルジの戦いの英雄でもあるクレイトン・エイブラムス大将に由来する。
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概要編集

M1エイブラムスは、M60パットンの後継として1980年に正式採用されたアメリカ合衆国戦後第3世代主力戦車である。主にアメリカ陸軍及びアメリカ海兵隊が採用した。

名前の由来は第二次世界大戦朝鮮戦争で活躍したクレイトン・エイブラムス陸軍大将。


元々アメリカはM60の後継として1960年代後期より西ドイツと共同で次世代主力戦車開発計画であるMBT-70計画を進めていたのだが、開発段階からアメリカと西ドイツは対立し、対立する度に妥協案を作って盛り込んだために開発費と開発期間が著しく伸びてしまい、結局1971年にMBT-70計画は中止されてしまった。

西ドイツが代替としてレオパルト2の開発に着手する中、アメリカは当初MBT-70をベースに低コスト策を講じたXM803を試作するものの、思ったよりもコスト削減に失敗したことなどが原因でこちらも頓挫。結局1973年に全く新しい戦車開発計画であるXM815として再スタートすることとなり、クライスラー・ディフェンス社(後にジェネラル・ダイナミクス社に売却)とゼネラルモーターズ社の競争試作の結果、1976年にクライスラー社案が採用されて計画名をXM1に変更、1980年に晴れて正式採用となった。


従来のアメリカ戦車と同様に発展余裕に富んだ設計で、制式化後も度重なる改良が施された。

約12年あまりの間に8,322両が生産され、オーストラリアエジプトサウジアラビアクウェートモロッコ、イラク戦争後のイラク台湾にも輸出されている。

以降も度重なる改良が行われており、現在でも世界最高水準の戦車であると世界的に評価されている。強い分かなりの金食い虫だが


なお本車両は輸出向けを除いて1992年に生産が停止されており、以降の性能向上は全て既存車両の改造によってなされている。破損してスクラップになった車両もリサイクルされる。

改造はしばしば車両全体に及び、もう新車作った方が良いんじゃないかと言いたくなるレベルで大規模な改修が行われることもあるが、アメリカではよくあること。そして2020年末、遂に再生産が始まる事になった。


詳細編集

乗員編集

装填手が存在するため乗員は4名。自動装填装置が搭載されていないため主砲発射速度には限界があるものの、整備や見張りなど戦闘以外の場面では3人よりも楽になる。

車体容積に余裕があるため乗り心地は良い方だと言われるが、戦車の割にはマシというだけで、装填手以外は機材の隙間にギリギリ収まっている状態。


乗員の生存性にはかなり気を配っており、砲塔弾薬庫と乗員室は完全に分離されている。さらに弾薬に引火した場合はブローオフパネルが先に吹き飛んで上方へ熱を逃がすようになっている。

そのためM1エイブラムスの運用マニュアルには、砲塔弾薬庫火災時は攻撃を受けない位置まで後退し、自然鎮火するまでガスマスクを装着して車内に留まることが推奨されている。下手に脱出を試みるより対策が万全の車内にいた方が却って安全ということだ(後退できない場合はこの限りではないが)。

また車体弾薬庫にもブローオフパネルは装備されており、こちらで火災が起こった場合の対処は気にせず戦うである。


弾薬庫の分離とブローオフパネルの搭載は、その後登場した西側第3世代の標準的な仕様となった。


動力編集

現代戦車の主流であるディーゼルエンジンではなく、ハネウェルAGT1500ガスタービンエンジンを採用している。


ガスタービンには「出力が高い」「信頼性も高い」「多種の燃料が使える」「動作温度範囲が広く、冷却水が不要」「エンジン自体は軽量」という長所がある。

一方で「燃費が悪い」「応答性が悪い」「高温の排気が発生する」「減速機が複雑」「付属品の重量のおかげでエンジンの軽さは帳消し」といった短所もある。


総合的には「馬鹿食いする燃料さえ何とかしてやれば長所が活かせる」と言ったところ。

他国にもガスタービンエンジンを採用した戦車は存在するが、特に大出力が欲しい場合のブースト用だったり、コストがかかりすぎて全面配備に至らなかったりと言った具合で、主力として大量配備できたのは米軍のみである。


装甲編集

第三世代戦車の特徴でもある平面的な装甲形状をしているが、一方で旧来のような傾斜も見られる。

初期型は空間装甲、M1A1は無拘束セラミックを含む複合装甲を使用し、M1A1HA以降は劣化ウランプレートが挿入されている。当然防御力は後のものほど高い。


第三世代戦車のトレンドとなっているセラミック素材は割れやすく、被弾の度に防御力が落ちていく。拘束セラミック化することでこの欠点はある程度補えるが、要求される技術力は高い。

一方劣化ウランは被弾による防御力低下が起こりにくく、防御力に関して言えば装甲材としては非常に優秀。なにせ敵戦車に囲まれてタコ殴りにされてなお反撃して生き残り、鹵獲されないよう処分すべく別のM1エイブラムスに撃たせたら自動消火装置が作動。結局回収車両を持ってきて回収したら主砲は未だ射撃可能という堅牢さを誇る逸話があるくらいである。


ただしかなり重いという欠点がある。

戦車の大部分を占める装甲材に重量素材を使用するということは、戦車全体の重量も増加するということであり、足回りへの負担や燃費性能の更なる悪化は避けられない。これまた兵站能力に優れたアメリカならではの選択と言えよう。

また、劣化ウランは重金属であり、放射性物質でもある。

元々そこまで強い放射線を放っていない事もあってしっかりと対策はされており、乗っているだけで致命的な放射線を浴びるほどではないが、劣化ウランが露出すると人体に無視できない悪影響が出てくる。これは重金属という面でも同様で、損傷により微細化した破片は人体に悪影響を及ぼす。このため損傷の程度によっては修理の際に防護服が必要。

このような事情もあって、輸出向けではセラミックに変更されたりとウラン装甲はオミットされている場合がほとんど。


携行対戦車兵器の発達や市街戦の増加により側面の装甲の重要度も上がっており、爆発反応装甲を装着した車両もある。

M1A2Abrams


武装編集

初期型ではM60パットンと同じ、西側第2世代主力戦車の標準装備と言える51口径105mmライフル砲M68A1を装備していたが、A1で44口径120mm滑腔砲M256に換装されている。

当初から最先端機器を用いた高度な射撃統制装置(FCS)を採用した事で、高い命中率を誇っており、改修により命中率は更に向上している。

弾種は定番のAPFSDSHEAT-MPに加え、対空能力を持った改良型のHEAT弾や対人用の散弾なども運用している。更に新型の多目的弾、更には誘導弾まで開発中。


副武装としては主砲同軸に7.62mm機関銃が搭載されており、主砲と同じFCSによりこちらも高精度な射撃が可能。


砲塔上には車長用の12.7mm機関銃M2と装填手用にもう一挺M240が搭載されている。

こちらはFCSと連動していないため精度は射手に完全に依存していたが、RWS(遠隔操作式銃塔)化が施された車両は車内から操作可能で、安全を保ちながらも非常に高精度の射撃ができる。


形式編集

細かな仕様の違いによってたくさんの型式があるが、ここでは代表的なものだけ記載。

M1編集

初期型。

装甲、火砲共に第二世代水準ではあるが、この時点で世界最高峰の機動力と射撃精度を確保している。湾岸戦争で無双した車両も一部は初期型準拠のままであった。

M1A1編集

火砲を44口径120mmに換装、電子機器類も新型に入れ替えた。弾薬の変更に伴いブローオフパネルも改修され、NBC防護のための空調設備も追加された。

劣化ウラン装甲が追加されたものはM1A1HAと呼ばれる。

M1A2編集

C4Iシステムが搭載されて連携を強化、車長用熱線映像装置が搭載され、装甲も強化された。第3.5世代主力戦車に分類される。

M1E3編集

現在開発中。当初はM1A2の改修で済ませる予定だったが、ウクライナ侵攻の戦訓を踏まえてより大きなアップデートが必要との判断から新規開発となった。実用化は2030年代になる予定。

エイブラムス X編集

General Dynamics Land Systemsが自主開発しているコンセプトモデル。自動装填装置と無人砲塔により乗員を3名に削減し砲塔を軽量小型化、エンジンはハイブリッドディーゼル電気推進に換装され、無人機連携とAIによる戦闘補助システムを導入し、砲塔上部には空中炸裂させてドローンに対処できる30mmチェーンガンが乗っている。あくまで自主的なコンセプトモデルなのでコレそのものが導入されることはないが、要素技術はE3の開発に影響を与えるかも知れない。


運用編集

湾岸戦争編集

T-72(モンキーモデル)の125mm砲の成形炸薬弾や徹甲弾(鋼鉄弾芯)を正面からはじく、熱映像装置(サーマルサイト)により悪天候時や砂丘など遮蔽物に隠れた目標の撃破に成功、撃破されても乗員の被害は少なく車体自体も損害軽微、等とその優秀性をこの戦争で実証することとなった。

また、GPSを用いたランドナビゲーションを用いたことで砂漠と言う天然の防壁を越えた侵攻を可能とする事を証明した。

低解像度なサーマルサイトでは敵味方の識別ができず同士討ちが多かったため、後に敵味方識別装置(IFF)が搭載されることとなった。

イラク戦争以降編集

一般的な建築物内の敵スナイパー等を排除する際に主砲のHEAT弾を用いての排除は機関砲と違い貫通弾による余計な被害を生じさせることは無い、強固な装甲は歩兵の盾となるとして、非対称戦においても戦車が有効であることを証明している。

しかし目標建築物至近で発砲して建築物を崩すのはやりすぎだと思います。

一方、IED(即席爆発物装置)で撃破される事態が発生している。IEDは何でもアリで、榴砲弾を束ねたものはおろか、1000ポンド航空爆弾を使ったりなど威力に際限がなく、主力戦車の防御力でも抗しがたい。

また、装甲の外に上半身を出している車長が狙撃等によって狙われる、同軸機銃が非力すぎると言った問題点も判明。

その為、非対称戦に対応したTUSK(Tank Urban Survival Kit:戦車市街地生存キット)によって車長保護用の装甲、爆発反応装甲、主砲上に12.7mm重機関銃、底部追加装甲、等が追加された。

民兵が撃ったRPG-7をもろに食らって被弾したが、なぜか損傷軽微で反撃という事例があったりもしたという。

ただ、イラク治安部隊に配備された車両はイラク側が西側製戦車の運用に慣れていないために稼働率が低い上、劣化ウラン装甲がオミットされている事もあってその性能を十分に発揮できているとはいえず、ISILとの戦闘では対戦車ミサイルによって多数の損害を出し、鹵獲されてしまった車両もある。そのため、かつてM1エイブラムスにコテンパンにされたT-72を今でも運用し続けており、その発展型T-90の導入にも踏み切るという事態になっている


後継車両編集

米陸軍機甲兵器の総入れ替えを図る「Next Generation Combat Vehicle(次世代先頭車両)」計画の一環として、M1エイブラムスの後継となる「Decisive Lethality Platform(決戦致死性プラットフォーム)」が計画されており、無人化すら視野に入れた検討がされている。

しかしながら、歩兵戦闘車軽戦車兵員輸送車無人地上車両まで開発内容は目白押しであり、DLPにリソースが振り向けられるのは2040年頃、運用開始は2050年あたりと目されている。


というわけでもう30年ほどM1エイブラムスに頑張ってもらわなきゃいけないので、支えられるだけのアップグレードを施して行かなければならず、20年代後半には新たな強化パッケージであるM1A2 SEPv4の開発がスタートする予定……だったのだが、2022年に勃発したウクライナ侵攻で大規模な戦車戦が頻発、エイブラムスより遥かに軽量なT-72系列の戦車ですら泥濘に苦慮する状況を見て陸軍は足し算方式でのアップデートを見直しM1E3が開発されることとなった。


まだ正式な要求は固まっていないが、計画の経緯から見て軽量化のために設計に手が入れられることは確実視されている他、兵站負担軽減のためのハイブリッド電気駆動の導入も強く求められている模様。

その他に自動装填の新型主砲、誘導弾への対応、装甲の換装、戦闘補佐AI、上述した無人地上車両との連携などなど。

20年スパンで戦車を入れ替えている陸自を見てると「ゼロから作ったほうが早いのでは?」と思ってしまうところだが、彼の国にはよくあること。


登場作品編集

湾岸戦争やイラク戦争を題材にした作品のほか、近年ではアメリカの怪獣映画の常連兵器となっている。

  • 戦火の勇気

アルパスラの戦いで主人公ナサニエル・サーリング中佐らが搭乗する「セイバー6」と戦友ボイヤー大尉らが搭乗する「クーガー6」を含む多数がイラク軍と交戦する。

友軍同士の誤射を題材にした作品の性質上アメリカ軍の協力を得られず、撮影にはセンチュリオンを改造したレプリカを使用している。

イラクでの戦闘で登場。

撮影はモロッコで行われており、モロッコ軍で運用されるM60戦車にCG合成してM1に加工している。

アメリカ海兵隊所属の車両がトライポッドを攻撃する。

ニューヨークで「何か」と交戦する。

撮影に使用されたのはチーフテン戦車を改造したレプリカ。

ゴールデン・ゲート・ブリッジでゴジラを迎撃する。

撮影に使用されたのはチーフテン戦車を改造したレプリカ。

アフガニスタンでリオレウスと交戦する。

G.U.A.R.D環太平洋部隊の戦車として登場。アリゾナ州に現れたゾンネルⅡを攻撃する。

M1・M1A1・IPM1・M1A1HC・M1A2・M1A2SEPがアメリカ軍中戦車として登場。

『2』でクーデター軍の戦車として登場して以降、敵味方双方の戦車として頻繁に登場している。

オーシア国防陸軍では主力戦車として運用している模様。

米軍の戦車として登場。

米軍の戦車として登場。

初代PS「コンバットチョロQ」とPS2「新コンバットチョロQ」に登場。いずれの作品も「M1A1エイブラムス」表記。

「コンバットチョロQ」では作戦39「グレートレース」に登場。火力・射程・耐久力ともに優れる強敵だが、交戦するステージは息抜きのレースステージであり撃破しなくてもクリアは可能。

「新コンバットチョロQ」では主人公の所属するプロトン王国陸軍の指揮官ロドスシルト少佐として登場。多くのステージで友軍タンクとして活躍する。

プレイヤーは「砂に潜む悪魔」をクリアすると使用可能になる。

同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備できる。

第2話以降モブ戦車として登場。新兵器の標的にされている場面もあるが一応味方側の戦力である様子。

DS版ゲームではアメリカから来た90式先輩の友達エイブラムスさんとして登場。普段はカタコトながらも丁寧に話すが、気が短くすぐに兄者たちを「シャラ~ップ!」と怒鳴り付け、最終的には兄者にダイナマイトを括りつけて自爆攻撃を強要する。

海兵隊の戦車として登場。某科学者はバールで破壊できるという。おそらく紙装甲である。

関連タグ編集

M1 M1A1 M1A2 M1A2SEP

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