概要
発射すると小さな多数の弾が銃口から散らばって出るように作られた弾薬。その名の通り散弾銃で使われることが一般的。
散弾の弾薬全体を指して「ショットシェル」と呼ぶこともある。
構造
人間用の散弾銃で使われる散弾の場合、プラスチックや紙でできた円筒形の外装で包まれ、後端に金属製の雷管部分がついている。
中に粒状の弾と発射用の火薬が詰まっているが、その間には「ワッズ(ワッディング)」と呼ばれる仕切りが入っている。ワッズは厚い布などでできていて、火薬の燃焼で生じるガスを受け止め、散弾をまとめて押し出しすことで効率よく撃ち出す。
散弾の材質には鉛がよく使われてきたが、重金属中毒を起こす有害物質のため、近年では鉄やビスマス、タングステンに置き換えられつつある。特に野外で弾をばらまくことになる狩猟用の散弾では鉛不使用が重要な課題とされる。
榴弾砲や戦車砲などで使用する散弾は「キャニスター弾」とも呼ばれ、基本的な構造は人間用のものと同じ。canister(容器)の名前の通り、筒状のケース内に散弾とワッズが装填されている。
こちらはキャニスターごと撃ち出された直後に外装が空気抵抗で割れて剥がれ落ち、ワッズと散弾の塊が飛んでいく。
スーパースロー映像などで散弾の発射をよく見てみると、弾と一緒にワッズも飛んでいるのが確認できる。また、銃口からいきなり放射状に広がるのではなく、どちらかと言えば一塊で飛んで行きながら距離にしたがって拡散していく。
イラストや漫画で散弾銃の発砲を描写する時は、こうした特徴を一考してみると芸コマなワンシーンになるかもしれない。
特徴
発射後は銃口を頂点にした円錐状に散らばる。ライフル弾のように弾に回転安定が与えられないので飛距離があまり伸びず、有効射程はおおよそ50m程度。
銃身で方向性がついているので弾はある程度まとまって飛んでいくが、流石に遠距離への狙撃には向ない。また、散弾一発は小さく軽く、球形なので貫通力も低い。
その反面、動く対象への射撃や面に対しての破壊に向く。散弾の粒の大きさを変えることで当たりやすさや威力を変えることもできるので、狩猟用では小粒な散弾を使っての鳥撃ち、大粒の散弾でのシカ撃ちやイノシシ撃ちまで様々なターゲットに使われる。
形状やガス圧力の具合が通常の銃弾とは異なるので、基本的には散弾を撃つことを前提に設計されたショットガンで使用されるが、毒蛇など小型の害獣を退治する目的で拳銃から発射する「スネークショット」と呼ばれる散弾もある。
戦闘目的だと、近距離での遭遇戦が発生しやすい第一次世界大戦期の塹壕戦で使われたほか、一点を貫通するのではなく叩き壊すような破壊力があるので、室内への突入作戦でドアの蝶番を破砕して突破するといった使い方もされる。
榴弾砲用の散弾は歩兵に接近された際の自衛用だったが、後にショットシェル状の砲弾をまるごと遠距離まで飛ばし、敵の頭上で起爆させて散弾を浴びせる「榴散弾」も開発された。
榴散弾は信管による起爆コントロール技術が進歩していくと榴弾に統合されるかたちで廃れてしまったが、2000年代に入って小型ドローンが軍事利用されはじめると、小さな目標をまとめて叩き落す対空射撃用として、大型砲と榴散弾に近い弾薬の組み合わせが再び研究されるようになった。
戦車用のキャニスター弾は人海戦術対策で開発されたと言わる。人間用と比べて巨大なだけあって射程も破壊力も桁違いで、ちょっとしたブロック塀ぐらいなら撃ち崩してしまうほどの威力がある。歩兵の一群に撃ち込んだらどうなるかは想像に難くない。