解説
大雑把に言えば、対立勢力同士に宇宙と関わりがあって起こる戦争を指す。
もちろん、歴史上まだ起こっておらず、フィクションの世界のみの物語である。
戦う場所は宇宙空間だけでなく、地球上=惑星上での戦闘も含まれ、敵対者も宇宙人だけでなく人類同士での戦いも含まれる。
SF作品では当たり前な題材であり、小説・漫画・演劇・映画・特撮・アニメ・ゲームなど無数に扱われてきた。
その元祖とも言うべきは、1898年にH・G・ウェルズが書いた『宇宙戦争(原題:The War of the Worlds)』である。
日本の古典『竹取物語』のクライマックスで、かぐや姫を迎えに来た月の使者を侍達が迎撃しようとして謎の光に当てられ動けなくなる場面があり、とある意見では「世界最古の宇宙戦争」とすら言われている。
ウェルズの宇宙戦争
物語の設定は執筆当時の19世紀であるため、作中の技術や風俗も当時のもの。
ある日、イングランドの地方に謎の円筒形の金属物体が落下。主人公が見守る中、物体からタコ型の火星人が現れ、怪光熱線で周囲の人や建物を焼き尽くした。
逃げ出した主人公は家に戻って避難するも、火星人は三本脚の兵器・トライポッドを操って街を攻撃し始めた。軍隊が出撃するも全く歯が立たず、ロンドンまでも襲撃された。
数日後、なんとか生き延びた主人公は、火星人たちが勝手に死んでいったことを知る。火星人を倒したのは地球人ではなく地球の微生物で、免疫のない火星人は病気で全滅した。一方の主人公は家族と再会できた。
ちなみにこの作品、避難民をヨーロッパ大陸に送り届けるための輸送船団がトライポッドに襲撃された際にイギリス海軍所属の水雷衝角艦『サンダーチャイルド』(作中では駆逐艦)がトライポッド相手に衝角攻撃(=体当たり)で無双するという名(迷?)場面がある。
●『サンダーチャイルド』の雄姿と攻撃イメージ
史実の水雷衝角艦は体当たりと魚雷攻撃のみに特化した沿岸防御・港湾襲撃用の艦艇であったがトリッキーすぎて実際の戦闘には用いられなかった。
このため水雷衝角艦のWikipedia記事は「水雷衝角艦が示した限定的な軍用上の価値からすれば、文学の古典に登場し、ウェルズを不滅としたことが水雷衝角艦の最大の業績であるとも言える。」と散々な評価をしている。
元祖・地球なめんなファンタジーな上に英国面ガン増し仮想戦記でもあるとはたまげたなぁ……
反響
この作品はドラマや映画などで何度も作られたが、1938年にアメリカで起こった事件は有名な逸話となった。
当時放送されたラジオドラマの「宇宙戦争」はリアルな実況中継風に作られたが、視聴していた市民が実際に起こっているのだと思い込んで、警察やラジオ局に電話が殺到した。
後に社会パニックとなったと言われるが、現在は新聞社が大げさに扱ったため都市伝説化している。
1953年の映画では三脚型ではなく浮遊するエイ型宇宙船が登場し、原爆も通じないという設定になっている。
1996年の『インデペンデンス・デイ』ではコンピューターウィルスが宇宙人打倒の決め手となった。
2005年に公開されたスティーブン・スピルバーグ監督、トム・クルーズ主演の映画『宇宙戦争』では作中で「大阪では(トライポッドを)何体か倒したらしい」という台詞があり、監督によると「日本人はアニメやおもちゃでロボットに詳しいから」とのことで、日本への敬意の表れでもあった。
2018年には月刊コミックビームにて横島一によるコミカライズが連載開始。
過去のメディア作品ではその折々の現代風にアレンジされていた事を踏まえ、本作では原典に忠実な漫画を目指している。
主人公である写真家は、家族とはぐれ、火星人に蹂躙されるイギリスを放浪しながら各地の光景を写真に収める中で、部隊からはぐれた砲兵や、信仰心を打ち砕かれた牧師と出会う。
また主人公の弟の視点で、トライポッドによって襲われるロンドンや、奮闘する軍艦サンダーチャイルド号といった過去作であまり扱われなかった場面も描かれている。
2021年に第三巻が発売され、奇しくも原作の火星人同様、地球人類が疫病の脅威に晒されている中での完結となった。
現実での宇宙戦争
上述した通りまだ宇宙戦争は起こっていないが、これまでもその可能性はあり、これからも起こりうる状況にある。
冷戦期に核技術とミサイル技術とともにロケット技術が急速に発達し人工衛星も多く打ち上げられたが、偵察を目的とした軍事衛星も多く存在した。
1980年代にロナルド・レーガン大統領はレーザービームやキラー衛星などで敵の衛星やミサイルを攻撃できる「戦略防衛構想(SDI)、通称スターウォーズ計画」を立て、「宇宙軍」を創設。ソ連でも宇宙空間での戦闘を想定した兵器開発を進めていた。
冷戦が終わると戦略防衛構想は凍結し宇宙軍も廃止されたが、21世紀になり台頭を始めたロシアや中国が宇宙軍を創設し宇宙空間での軍拡を始めている。2019年にアメリカのドナルド・トランプ大統領は新たに宇宙軍を再編成。日本も2020年に航空自衛隊に「宇宙作戦隊」を発足させた。
「宇宙戦争」を扱った作品
海外作品
「シャーロック・ホームズの宇宙戦争」 - パスティーシュ小説作品
「スタートレック」
「ペリー・ローダンシリーズ」
「HALOシリーズ」
:同作の原作アメコミ「リーグ・オブ・エクストラオーディナリー・ジェントルメン」の二巻には、「宇宙戦争」の火星人が地球に侵略。
日本作品
「アルドノア・ゼロ」
「宇宙戦艦ヤマトシリーズ」
「宇宙大戦争」
「機動戦艦ナデシコ」
「銀河英雄伝説」
「グラディウス」
「スターフォックス」
「星界の紋章」
「ダライアス」
「トップをねらえ!」
「ぼくらの宇宙戦争」
「ほしのこえ」
「みんなで宇宙戦争」
「R-TYPE」
「テラフォーマーズ」
「ウルトラマンシリーズ」(年々その規模が大きくなっている)
「ゴジラシリーズ」(キングギドラ登場以降、しばしば宇宙人や宇宙怪獣が事件に絡んでくるため)
「航空宇宙軍史シリーズ」
※他にもありましたら追加お願いします。