『ジェイムスン教授』シリーズとは、古典的なスペースオペラの一作。第一作は1931年に発表され、1972年に日本語訳された。
自らの死体を冷凍し、人工衛星の中に保存しておいたジェイムスン教授が、人類滅亡後、異星人であるゾル人に発見され、ゾル人の一般的なサイボーグ体である、周り中に目のある円錐型の頭部、四角柱型の胴体、6本の触手、4本の脚という武骨で異形な姿で再生されてしまい、ゾル人たちと一緒に宇宙各地を冒険するというものである。ちなみにゾル人たちも生身の身体は全然違う姿である。
サイボーグであるだけに、当然不老不死、この時代の作品にはありがちだが、脳細胞の老化は、ほぼ無視されている。手足や胴体が戦闘でやられても、頭さえ無事なら付け替えればOKだけあって、ゾル人たちは命知らずで好奇心に任せて宇宙じゅうを冒険しているという設定である。気前もよく、ジェイムスン教授はじめ気に入った相手なら誰でも自分たちと同じ「龕灯」型のサイボーグにして仲間に加えている。
なお、最後の地球人になってしまった孤独や、人間とかけ離れた姿になった悲しみは描写されない。というか、6本腕の扱いや前後が同時に見える視野に戸惑う描写はあるものの、ジェイムスン教授自身が明るく能天気に、あっけらかんと異世界での冒険が続いてゆく。
ハヤカワ文庫版は、野田昌宏「大元帥」が翻訳し、藤子不二雄(コンビ解消前)が挿絵を付けている。
転生もの?
翻訳からでも、半世紀以上前の作品ではあるけれど、
- いきなり主人公が死ぬところからはじまる。
- 生き返ったと思ったら、全く別の世界観。
- 謎のカリスマと行動力で、物語の中心人物に。
等々、異世界転生ものの基本を押さえていたりする。
龕灯について
読みは「がんどう」、今でいうランタンの事。翻訳当時、既に一般的な単語では無かったが、ランタンも今程一般的ではなかった為に、こうなったと思われる。
腕の本数
本文では6本と書かれているのですが、公式の挿絵では4本に省略される事がやたらと多い。むしろちゃんと6本に描かれているのは、前述の藤子不二雄版(流石!)だけだったりする。
関連タグ
攻殻機動隊:ジェイムスン教授をモデルにしたジェイムスン型義体が登場する。二本の腕と四本の車輪付きの足があり、四角いボディと簡素な手足となっている。S.A.C.で登場するメディテック社の岩崎社長、通称「ジェイムスン社長」が有名で、同シリーズのマスコットキャラの一つとして扱われている。