私たちは、たぶん、宇宙と地上にひきさかれる恋人の、最初の世代だ。
概要
『ほしのこえ -The voices of a distant star-』は『彼女と彼女の猫』に続く2作目の作品。
小説版、漫画版、ドラマCDも制作されている。
25分のフルデジタルアニメーションの監督・脚本・演出・作画・美術・編集を新海誠自身が殆ど一人で行なった。
受賞歴
- 新世紀東京国際アニメフェア21「公募部門優秀賞」
- 第6回文化庁メディア芸術祭「デジタルアート部門特別賞」
- 第8回AMD AWARD「Best Director賞」受賞
- 第34回星雲賞「メディア部門・アート部門」受賞
物語
2039年。火星タルシス台地でNASAはクレーター中に異文明の遺跡を発見。この発見に歓喜するなか、突如出現した異生命体タルシアンによって調査隊が全滅する。
その後、タルシス遺跡で発見されたテクノロジーで科学力が飛躍的に向上した人類は、いずこかへ去ったタルシアン調査のために国連宇宙軍の「リシテア」含む4隻のコスモナートと1000名以上の選抜メンバーを集めたリシテア艦隊を組織する。
2046年。関東某県のある中学3年の夏。帰りがけに空を飛ぶリシテア号でタルシアン調査隊を思い返す長峰美加子は唐突に、国連軍の選抜メンバーに選ばれたことを寺尾昇に告げる。
2047年冬、美加子は地球を後にし、昇は高校に進学。リシテア号が外宇宙へ向かうにつれて、携帯メールで連絡をとりあう二人の時間は次第に開いていく。
昇は美加子からの返事だけを心待ちにしている自身に苛立つが、遂に艦隊は太陽系外へワープ。
8年という長い年月のズレが、二人の時間差を決定的なものとする・・・。
登場人物
オリジナル版
長峰 美加子(ながみね みかこ)
埼玉県の中学3年生。
本作の主人公。真面目で成績も優秀、同級生の昇と同じ高校に進学することも叶わず、中学卒業式前に国連宇宙軍の選抜メンバーとして宇宙へ飛び立つ。外宇宙へ向かうにつれて、メールでやり取りする昇との時間がズレてしまうことに寂しさを感じており、本音として、調査隊が何も発見できず地球に帰還する事を願っていた。
トレーサーとしての成績は短期間ながらも優秀で、生きて帰るためにアガルタ戦で奮闘した。
なお、アニメでは描写されていないが、小説版並びに漫画板では最年少。
寺尾 昇(てらお のぼる)
高校最期の夏、友達以上恋人未満の美加子と離れ離れとなるもう一人の主人公。
メールでやり取りする毎日を過ごすが、次第に時間が空いていき、それを待つだけの自分に苛立ちを覚えてやり場のない生活を送る。
小説版と漫画版では美佳子の居ない高校生活で一時、女子生徒と交際をしていたが、諦めていた美佳子のメールが届いたことで再会するために宇宙を目指す。
途中で一度は諦めかけたが、自分を信じて待ち続けてくれる美佳子の気持ちに応えるべく、後を追うように国連軍へ入隊。小説版では救援艦隊の通信士となる。
リシテア艦オペレーター
声 - Donna Burke (ドナ・バーク)
小説版
北條 里美(ほうじょう さとみ)
小説版のオリジナルキャラクター。17歳。
正直にものを言うタイプだが、優しく思いやりのある性格。
タルシアン調査隊の選抜メンバーとして選ばれて高校中退。火星基地の訓練後に偶然居合わせた美加子と友人になる。美加子と昇の間柄を応援している。
ギルバート・ロコモフ
小説版のリシテア艦隊司令官。
年齢50代と年配で、青い目をした男性。
出来る限りは戦闘を避けたい様子が窺えるタルシアンとの初戦闘時に活躍した美加子に感謝を意を述べる。
高鳥 瑤子(たかとり ようこ)
小説版の昇の交際相手。文学系少女。
きっちりとした性格で、詩を読んでいる。
また年齢に比してかなり大人びており、心に壁を作っている昇に「私が開いてあげる」と何から何までデートプランを立て、流れとして交際する事になる。
「これ以上付き合えない」と告白した昇の心が別の相手(美加子)にあると気付き、そのまま別れてしまった。
漫画版
真枝 若菜(まえだ わかな)
漫画版の昇の交際相手。弓道部所属。
一学期に昇と一緒に委員会を務めた(昇は忘れていたが)事で意識を向けていたようで、剣道部を止めた昇を弓道へ誘った事から、交際が始まる。
1年あまり交際を続けたものの、美加子の為に宇宙へ上がる決意を昇に告白され、想われ続けている美加子を「いいなぁ、その人・・・」と羨んでいた。
ヒサ
美加子より一つ上の漫画版オリジナルキャラクター。
昇と一緒に進学しようとした高校の生徒。制服の交換や、揃って講義をサボるなど美加子とは仲が良い。
初戦で味方機に誤射されて負傷(顔の左目から頬辺り、左腕などに、火傷を負っている)。
帰りを待つために強制帰還後も国連軍に残り続け、後に美加子らの救援隊として参加した。
ミワ
部隊長を務める漫画版オリジナルキャラクター。
面倒見がよく、思いやりがある美加子とヒサのお姉さん的存在。規則に縛られるよりも自分らしく生きていた方が良いと思っているが、地球に残した彼氏と空いていく時間のズレから再会するのが怖いと感じている。第二次タルシアン・プロジェクトから参加しているためかトレーサーとしての腕は高く、腕を負傷しながらもアガルタ戦を生き延びた。
ミワの彼
漫画版オリジナルキャラクター。
年配の医師としてヒサから「先生」と呼ばれている。
冥王星での負傷から回復したヒサに通常生活に戻るか、国連軍の地上勤務を続けるか、と選択を提示した。
実は時間のズレで先に年老いてしまったミワの彼氏。
ミワとのツーショット写真が傍らに置いてあることからも、今もなお思い続けていると思われる。
メカ
トレーサー
国連宇宙軍の主力兵器。タルシス遺跡の技術で開発したDARPAのラム駆動式真空エネルギーエンジンを搭載し、宇宙空間、大気圏内行動(飛行)も可能とする宇宙空間用汎用兵器。
固定武装は背部バックパックの六連装ミサイルランチャー2基、両腕部にバルカン砲2基、左腕部にビーム・ブレード。タルシアンのビーム攻撃を防ぐ電磁バリアも搭載しているが、アガルタ戦では猛攻で過半数が失われた。
この万能機の原型は火星探査用の人型探査機であり、プロトタイプは、J・ナッコーズらローレンス・リバモア研究所が2044年にロールアウト。2050年代には次世代の開発計画も進行しているようだ。
コスモナート
国連宇宙軍が運用する純白の塗装で楔形に近い流線形の恒星間宇宙戦艦。
一般的に「コスモナート」と呼称され、タルシス遺跡の科学力を取り込み、大気圏内飛行やハイパードライブを用いた超光速航法を行う新鋭艦である。
トレーサー同様にバリヤーらしきものを備え、艦体両舷に格納された多数のビーム砲(片舷につき15~17門近い)を有する(発射時に左右に伸びて、途中で発射角を変える)。
トレーサー用のカタパルトを計10基備える小説版の乗組員は操艦スタッフ約30名、パイロット100名程(明確にされていないが)と推測される。
劇中に登場する「リシテア」は、太陽系外のタルシアン追跡調査の為に編成された「リシテア艦隊」の旗艦。
劇中には木星のヒマリア群に分類される衛星から取られた「エララ」「ヒマリア」「レダ」の三隻(小説版では十隻)が同型艦として登場するが、アニメ・小説・漫画いずれの劇中においてもアガルタ戦で轟沈する。
タルシアン
西暦2039年1月に人類が初めて接触した地球外知的生命体。火星タルシス台地での確認以後はタルシアンと呼称され、火星に在ったタルシス遺跡を築いたと推測されることから「タルシス人」とも呼ばれる。
体表は銀色の金属のような質感。内部の体組織は血液のような赤い液体で満たされている。
人類に攻撃を行っているのは、トレーサーとほぼ同等の大きさで飛行や宇宙空間での戦闘機動などもする「小タルシアン」と、コスモナートクラスの大きさを誇る「大タルシアン」が確認されている。主な攻撃手段は体当たりと赤色のビーム。触手を伸ばして相手を絡め取り、体内に隠された巨大な目で相手の心を読もうとするなど、テレパシー能力に近いものを持つと考えられるが、コミュニケーション手段が不明確であるため、人類側としても対処のしようがない。
各メディアの差
結末
漫画版ではアガルタ戦で生き残り、救助を待ち続ける美加子が救助艦隊の名簿にヒサと昇の名前を見つけて思わず涙する。
アニメ・漫画版のラストシーンから続く小説版エピローグでは、24歳の昇が救助艦隊に乗り込んで19歳の美加子と再会。地球に帰還した後も交際を続けている。
余談
「離れていても気持ちをリアルタイムで伝え合えるツールが使えるのに、距離がありすぎてお互いの気持ちを伝え合うことのできないもどかしさと切なさ」が主題。
メールの送受信に8年かかり、大人になった昇がメールを受け取った時の美加子がまだ送信当時のままである(大人になった美加子を一切見せない)演出で、「トップをねらえ」のように双方の肉体年齢や経過時間がずれている(ウラシマ効果)のように見えるが、実際の二人は同じ時間軸で生きており、救援先には(生存していれば)昇と同じ年齢になった美加子がいる。