あの遠い日に 僕たちは、かなえられない約束をした。
概要
2004年に公開された新海誠によるアニメーション映画。第59回毎日映画コンクールアニメーション映画賞受賞作品。
「彼女と彼女の猫」、「ほしのこえ」に次ぐアニメ作品第三作であり、新海作品としては初の一時間超えの長編映画となった。
本作は、南北に分断された日本を舞台に、飛行機作りに情熱を燃やす高校生の青春模様を描いた作品となっているが、その一方で平行宇宙論をはじめとするSFガジェットが物語の根幹を成しており、本作のシンボルとも言える「ユニオンの塔」はその象徴とも呼べる存在であると言える。
物語
日本が南北に分断された、もう一つの戦後の世界。米軍統治下の青森の少年・藤沢ヒロキと白川タクヤは、同級生の沢渡サユリに憧れていた。彼らの瞳が見つめる先は彼女と、そしてもうひとつ。津軽海峡を走る国境線の向こう側、ユニオン占領下の北海道に建設された、謎の巨大な「塔」。いつか自分たちの力であの「塔」まで飛ぼうと、小型飛行機を組み立てる二人。
だが中学三年の夏、サユリは突然、東京に転校してしまう…。言いようのない虚脱感の中で、うやむやのうちに飛行機作りも投げ出され、ヒロキは東京の高校へ、タクヤは青森の高校へとそれぞれ別の道を歩き始める。
三年後、ヒロキは偶然、サユリがあの夏からずっと原因不明の病により、眠り続けたままなのだということを知る。サユリを永遠の眠りから救おうと決意し、タクヤに協力を求めるヒロキ。そして眠り姫の目を覚まそうとする二人の騎士は、思いもかけず「塔」とこの世界の秘密に近づいていくことになる。
「サユリを救うのか、それとも世界を救うのか」
はたして彼らは、いつかの放課後に交わした約束の場所に立つことができるのか…。
(公式サイトより)
登場人物
本作の主人公。蝦夷に建ったユニオンの塔に憧れを懐き、友人の拓也と作り上げた小型飛行機「ヴェラシーラ」で塔まで向かう計画を立てる。
中学時代のクラスメートの佐由理に想いを寄せ、ヴェラシーラと飛行計画を打ち明けるも、佐由理が彼の前から姿を消したと同時にヴェラシーラや塔から逃げるように東京の高校へ進学するが……。
中学時代は弓道部に所属していたが、高校進学後は佐由理の影響でヴァイオリンを弾き始める。
- 白川拓也(CV:萩原聖人)
浩紀と共にヴェラシーラ制作に精を出す親友。子供っぽい浩紀とは異なり、理知的な性格の持ち主。
物理学に対して造詣が深く、高校進学後は岡部の紹介で富澤の研究室に外部研究員として塔の研究をするようになる。
浩紀と拓也が密かに想いを寄せている同級生。二人の作り上げたヴェラシーラがユニオンの塔まで飛ぶのを楽しみにしていたが、中学3年の時に発症した睡眠障害によって、東京の病院に入院。二人の前から姿を消す。
- 岡部(CV:石塚運昇)
浩紀と拓也がアルバイトをしている「蝦夷製作所」の社長。バツイチ。
米軍の下請けでミサイルの組み立て等を行っているが、その一方で南北統一を掲げる「ウィルタ解放戦線」のリーダーでもある。
富澤とは旧知の仲であり、彼の研究所に拓也を紹介したのも岡部の伝手によるもの。
- 富澤(CV:井上和彦)
青森アーミーカレッジに所属する「戦時下特殊情報処理研究室」の室長。ユニオン側に大きく後れを取る平行宇宙と塔に関わる研究を続けている。
岡部とは旧知の仲であり、彼がウィルタのリーダーである事を知っている人物。かつては共にハンドメイドの飛行機を制作していた。
- 笠原真希(CV:水野理紗)
富澤の研究所で脳科学を研究する女性研究員。
年下の拓也に対してその実力を認めると共に、想いを寄せるようになる。
- エクスン・ツキノエ
ユニオン圏の物理学者。日本の出身で、家族とは南北分断によって引き離された。
塔の設計を行ったその分野の第一人者。
用語
- ユニオン
戦後、日本の蝦夷(北海道)を占領・統治し、米軍と対立している国。
具体的にどういった勢力なのか、詳細な事は不明。
- ウィルタ解放戦線
岡部が率いるテログループ。蝦夷製作所の工員もウィルタのメンバーである。
日本と蝦夷の併合を掲げており、ユニオンの役人の買収を行う他、裏で米軍に伝手を持ち武器・弾薬の提供を受けている。
- 塔
日本の南北分断後、ユニオンの統治下に置かれた蝦夷に建造された巨大な白亜の塔。
建造から25年の間にその存在は日常に溶け込み、国家や戦争や民族、絶望や憧れといった様々な物の象徴として扱われた。
その正体は平行宇宙を観測する為の巨大なアンテナ施設であり、塔の機能によってその周辺空間は平行宇宙へと置換されていく。