曖昧さ回避
- ローマ軍団の階級の一つ、百人隊長の英語表記「Centurion」。近代軍隊における小隊長に相当する。(原義)
- 冷戦期のイギリス製主力戦車。→本記事で解説
- バンダイナムコゲームスが発売しているRPG「テイルズ オブ シンフォニア ラタトスクの騎士」に登場する存在。→ラタトスクの騎士
- 遊戯王OCGのテーマ。1.と2.の双方がモチーフ。→センチュリオン(遊戯王)
新時代の先駆者
センチュリオンは、第二次世界大戦の直後に実用化したイギリスの重巡航戦車、もしくは主力戦車。乗員は4名(車長、砲手、装填手、運転手)。
最も初期の戦後第1世代主力戦車で、優れた砲火力、強固な装甲、必要十分な機動力を高水準に併せ持ち、戦後の西側世界における主力戦車の先駆け的な存在となった。
イギリス本国では後継車輌としてFV4201チーフテンが登場する1965年までの20年間に渡ってイギリス陸軍主戦力としての役割を果たした。
また、輸出車輌はオーストラリアや南アフリカなどイギリス連邦各国のほかイスラエルやスウェーデンにおいても運用され、朝鮮戦争やベトナム戦争、第二次から第四次までの中東戦争などで実戦投入された。
搭載砲・火力
- 17ポンド砲(口径76.2mm, Mk.I~Mk.II)
弾種 | 砲口初速 | 射貫装甲厚/距離(装甲傾斜+30度) |
---|---|---|
徹甲弾(AP) | 884m/s | 161mm/100m,115mm/1,000m,79mm/2,000m |
被帽付徹甲弾(APC) | 884m/s | 140mm/100m,119mm/1,000m,99mm/2,000m |
装弾筒付徹甲弾(APDS) | 1,284m/s | 221mm/100m,185mm/1,000m,151mm/2,000m |
(※:APDSは装弾筒の分離が安定せず射撃精度が低かった)
当時最優秀とも評せる高性能戦車砲。戦中には対戦車砲やシャーマン・ファイアフライの搭載砲として実績を挙げている。
第二次世界大戦最強の独ティーガーII重戦車の重装甲を正面から射貫可能な高威力を有しつつ、取り回しも良好だった。
- 20ポンド砲(口径84mm, Mk.III~Mk.VIII)
弾種 | 砲口初速 | 射貫装甲厚/距離(装甲傾斜なし) |
---|---|---|
装弾筒付徹甲弾(APDS) | 1,465m/s | 330mm/914m,290mm/1,828m |
17ポンド砲の順当進化版といった砲。
1956年のハンガリー動乱後、ワルシャワ条約機構の主力を務めるソ連製T-54戦車が有する大傾斜の装甲に対し、威力不足ということが判明した。
- L7 105mm砲(Mk.IX~Mk.XIII)
対T-54を意識して搭載された砲。高精度・高威力でソ連戦車を圧倒し得た。
1960年代、ソ連が115mm滑腔砲搭載の第二世代MBT・T-62戦車を実用化させると、その優位性は失われた。
防御力
正面の最大装甲厚は型式によって異なるものの、おおむね砲塔で152mm、車体で76mm。
このうち、車体は30度程度の傾斜が付与された傾斜装甲となっており、実質的に152mm厚ほどの防御力を発揮した。
これらの値は当初の仮想敵たるドイツのパンター中戦車の75mm砲に対しては十分だったが、戦後のソ連製T-54戦車が搭載する100mm砲が相手では分が悪かった。
なお、1950年代のMk.5/1から車体上面に50mmの増加装甲が付与され、部位の防御力が実質254mm厚程度に増大したほか、第二世代MBTが登場して以降のイスラエルやスウェーデン、南アフリカでは爆発反応装甲などの追加装甲が施されている。
機動力
車重は大戦中期の重戦車にも匹敵する約50トンに達し、最高速度も34km/h程度と同時期の戦車と比べて遅かったが、搭載されたロールス・ロイス製液冷V12ガソリンエンジン「ミーティア」が発揮する650馬力もの大出力に加え、新型のホルストマン式サスペンションの恩恵により走破性は良好だった。
しかし、そんな長所すら打ち消してしまうほどに致命的だったのがミーティアエンジンの劣悪な燃費で、これに起因して航続距離は整地でも100km程度、山岳の多い朝鮮半島では50kmすら切ってしまったというほど。
当初、これは牽引式の追加燃料タンクで改善が図られたが、抜本的な改良としては1954年実用化のMk.7で車内燃料タンクの容量が増大され、最終的には160~190kmの航続距離が確保された。
(参考:ガルパン劇場版のセンチュリオン、稼働時間の短さという弱点を抱えていた説 - Togetter、@Geroko氏 センチュリオン戦車めも:まとめ - Togetter)
なお、イスラエルやスウェーデン、南アフリカの後期型では750馬力、さらに南アフリカの最終型では950馬力の強力なエンジンへ換装されており、最高速度も前者で48~50km/h、後者で58km/hにまで向上している。
派生型
- Mk.5 AVRE
165mm破砕砲を搭載する工兵戦車。
- FV4004コンウェイ
センチュリオンの車体にL11 120mm戦車砲搭載の新砲塔を載せた試作対戦車自走砲。
センチュリオン車体を流用、183mm戦車砲搭載の新砲塔を載せた試作対戦車自走砲。
- ショット(ヘブライ語表記:שוט, アルファベット表記:Sho't)
イスラエル国防軍における仕様で、1963年から運用開始。
当初はMk.3やMk.5、Mk.8そのままの状態で運用されていたが、ガソリンエンジンの引火率の高さが指摘されたや他の戦車との互換性の関係から後にディーゼルエンジンへ換装された。
なお、砲塔を撤去した装甲兵員輸送車型が現用となっている。(詳細はナグマホンを参照)
- オリファント(Olifant)
かつて人種隔離政策アパルトヘイトのためにイギリスを含む先進国から兵器の禁輸措置を受けていた南アフリカは、各地から中古のセンチュリオンを300輌ほどかき集め、エンジンや主砲に加え、サスペンションまで変更するという大規模な近代化改修を施した。
なお、当時の南アフリカは同じく兵器の禁輸措置を受けているイスラエルと軍事分野で協力関係にあり、オリファントにもイスラエルの技術が導入されている。
余談
- 紅茶戦車
紅茶用の湯沸かし器(Boiling Vesselと呼ばれる)が標準装備となった初の英国戦車で、これ以降の戦車・戦闘車輌の多くに同様の装備が搭載されるようになった。
もちろんイギリスにおける現行主力戦車のチャレンジャー2にも搭載されている。
電気で湯を沸かすだけでなく、調理(といってもレトルトパックを温めたり、パンをトーストする程度だが)にも使える。余熱を使えば、冷戦中の駐屯先となった北ドイツの極寒をやわらげる申し訳程度の暖房にもなったらしい。
きっとパスタも茹でられるだろうが、英国人は多分やらない。
ちなみにこれは一見して単なる面白機能と捉えられがちだが、「降車する機会が減れば戦車兵の死傷を減らせるのではないか」という至極まっとうな理由から開発が要求された装備である。
この装備が登場するまで、前線の戦車兵は燃料缶で作ったコンロなどで湯を沸かして紅茶を淹れていた(当然車内では使えない)。そのため、WW2においては機甲部隊の将兵が休憩中に攻撃を受けて死傷する事案が多く発生していた。
なお、この装置の運用は各車輌の最年少が担当となるとか。
登場作品
映画
イギリス軍の戦車として登場。扱いは概ね邦画における自衛隊戦車と同じである。
デンマーク軍の戦車として登場。
アニメ
作中でのラスボスこと島田愛里寿が車長を担う乗車として先行試作型(P14相当)が登場。
終盤で大洗チームを単騎で蹴散らし、副官のM26パーシング2輌を従えて主人公西住みほが搭乗するIV号戦車、その姉西住まほのティーガーIとの最終決戦に臨む。
第4話である高校に転入した島田愛里寿の乗車として登場。同校の切り札的存在として運用される。
愛里寿以外の乗員は同校の生徒が代役を務めているらしく、劇場版より若干挙動が鈍い。
ゲーム
- コンバットチョロQ
- コンバットチョロQ:作戦32「逆襲、氷上の対決」に登場。総合的に性能の高い強力なタンク。
- 新コンバットチョロQ:「センチュリオンMk.3」として登場。同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーの武装を装備できる。敵・味方タンクとしては登場せず、バトルアリーナ「スモール」で交戦する。イスラエル仕様のショットも当時西側メディアに付けられた通称「ベングリオン」として登場。こちらはプロトン王国の同盟国ニビリア共和国の兵士として登場。「爆撃の閃光都市」と「越えろ!大防衛線」で参戦している。エキスパートアリーナ「フォールラウンド」で対戦し、勝利すると使用可能になる。
イギリスとスウェーデンの戦車として登場。
イギリスとスウェーデン、イスラエルの戦車として登場。
関連イラスト
前述の「ガールズ&パンツァー」関連の投稿も少なくない。