最強の鉾
FV4005は、1950年代のイギリスで開発された試作対戦車自走砲。
ソ連のIS-3をはじめとするヨシフ・スターリン重戦車に対抗すべく、センチュリオン中戦車の車体に最大14mm厚の紙装甲で覆われた歴史上に類を見ない脅威の大口径183mm砲を搭載。
ソ連重戦車を遠距離狙撃、一方的に破壊するという運用を想定しており、防御力の低さは問題視されなかった。
しかし、ソ連重戦車の配備数が想定より少なかったことや、代替となりうる高威力の対戦車ミサイルが登場したことにより、開発計画は1957年に終了した。
183mm砲とHESH
FV4005が搭載した戦車史上最大級の183mm砲、制式呼称「Ordnance, Quick-Firing, 183mm, Tank, L4 Gun」には謎が多く、その詳細な性能は不明となっている。
しかし、既知の事実として挙げられるのが、この砲が発射できる砲弾が弾頭重量33kg・砲口初速716m/sの粘着榴弾(HESH)のみということ。
もちろん、その威力は凄まじいもので、実際の射撃試験ではセンチュリオン中戦車の砲塔(10トン以上)を吹き飛ばす、コンカラー重戦車の砲塔装甲・防盾部(239mm厚)を叩き割るなどといった驚異的な記録を残している。
80年来の復活
1970年、イギリスのボーヴィントン戦車博物館がFV4005の砲塔のみを入手。
センチュリオンMk.12の車体と組み合わせ、試験時とほぼ同じ姿で静態展示されていた。
しかし、2020年代に入ってボーヴィントン戦車博物館はクラウドファンディングなどの支援を受けつつ、FV4005の本格的な修復作業を開始。
2024年7月1日に開催されたTANKFESTで、半世紀以上の時を越えて再び自走する姿が披露された。
登場作品
実戦参加や後世に与えた影響がほとんど無いためあまり有名ではないFV4005。
しかし、圧倒的な巨砲のインパクトか、あるいは2010年代からゲームでの登場が増えたことなどに起因してか、その知名度はこれまでと比べて徐々に向上している。
World of Tanks
183mm砲を搭載するが、史実と異なりHESH以外にもAPとHEが使用可能。
装甲に関しては史実同様に紙装甲のため、どちらかというと玄人向け。
World of Tanks Blitz
搭載砲は史実と異なり123mm砲。一度の装填で4連射が可能なため183mm砲より瞬間火力が高い。
War Thunder
史実に準じ、183mm砲搭載で使用可能な砲弾はHESHのみ。
砲塔の装甲厚が致命的に薄いことから航空攻撃や車載機銃による掃射で即戦闘能力を喪失することが多いが、通常の装甲部に命中させれば敵戦車を確実に爆散させることが出来る。
余談
FV4005は上記のゲーム界隈においてイギリス製ということから「アルティメット紅茶キャノン」、あるいは外見揶揄から「アルティメット仮設トイレ」などと呼ばれることがある。
関連タグ
仮想敵:IS-3
対IS-3の同志:FV214コンカラー M103重戦車