概要
攻撃力や輸送力、或いは低コストや操縦性などを追求しすぎた結果、防御力をどっかに落っことしてしまって「撃たれたら即アウト」の防御力になってしまった姿を形容する言葉である。
「紙のような脆い装甲」という意味である。
ただ、特に兵器の場合は決して思想や設計のミスばかりが紙装甲となる理由ではなく、「わけあって防御力を後回しにした」という場合もあるので一概に紙装甲=悪とはいえない。
兵器を含めた機械を開発する際それに割り振られるリソースは有限のものであるため、そのリソースを「どんな目的の製品を作るか」で割り振り、結果的に防御力に割り振るはずのリソースを他の面に回すことにより紙装甲となる場合もよくある。
「大戦略」や「ファイアーエムブレム」などの戦争を題材にしたSLGをプレイした経験のある方ならイメージが湧きやすいだろうが、ある箇所に問題があるならその問題点を補える者とチームを組めばいいだけであり、お互いの「長所」を活かすことにより結果的に効率のよい運用が可能になる(コンバインドアームズ)。
要するに、防御力が無いなら「防御力を犠牲にしてまで手にした高火力で火力支援に徹する」とか、「強力な輸送能力で後方支援に徹する」といった運用をすればいいだけの話ということである。
また、旅客機のように「民間向けのものとして当然のあり方を追求した結果、紙装甲となる」ような場合もある。そもそも民間用途では鉄砲玉やミサイルがこっちに飛んでくることなんて普通はないのである。だから防御力皆無なのが当然だし、機体強度は必要最小限で十分、ということだ。
紙装甲の例
三次元
- 旅客機
- 乗客の快適性や経済性に重きをおいており、たいていは紙装甲である。そもそも平時に運用するものであり、過剰な装甲は輸送力と燃費の低下を招くため無用である。軍用機に分類される空中給油機や早期警戒管制機は大抵旅客機をベースにしているが、これらの機体は敵から攻撃を受ける事のない後方での運用を想定しているため問題はない。ただし、大韓航空機撃墜事件など、どこかでまかり間違って撃墜されてしまった場合、紙装甲が仇となって機体はほぼ確実に墜落し、乗組員も全滅することになる(唯一の例外はミサイルが直撃せずに近接信管が作動し、弾頭の破片で損傷を負って不時着した大韓航空機銃撃事件くらいか)。またTWA800便墜落事故や大韓航空機爆破事件など、なんらかの要因で機内で爆発が起こった場合、なすすべもなく空中分解して墜落してしまうこともある。
- 零式艦上戦闘機
- 海軍の無茶な要求に応じて攻撃力・運動性・航続力を重視して設計されており、その代償に防御力は皆無であった。後期の型では運動性能を若干犠牲にして防弾・消火装備が追加され、重武装の連合国軍機にある程度対抗できるようになっていたが、運動性能と防弾性能を両立したP-51などには歯が立たず、多くのベテランパイロットを失った。
- 一式陸上攻撃機
- 豆戦車
- 戦車同士の戦闘ではなく、暴徒の鎮圧や植民地の警備を主任務とする。装甲や武装は威圧効果を狙ったハッタリに近いもので、暴徒の火炎瓶や投石に耐えられれば良いとされた。
- 特三号戦車
- 「戦車を飛行させる」というネジが数本フッ飛んだ発想を実現させるため、車体を軽量化。そのため防御力皆無という本末転倒の車両に仕上がった。
- 空挺戦車
- 「航空機による戦車の輸送」という目的のために車体を軽量化しており、防御力は低い。一応追加装甲による防御力向上が可能なものも。
創作において
- TIEファイター(STARWARS)
- 「戦闘機と言うよりは宇宙戦闘フレーム」と評されるように、防御力は皆無。
- ストームトルーパーアーマー(同上)
- アーマーとはいうがこいつがトルーパーの命を救った例は皆無……というか原住民の投石とか食らっても普通にやられる。それどころか視界が悪くてブラスターがまともに当たらんわ動き辛いわ着心地は悪いわで、早い話が装甲服とは名ばかりの拘束具である。設定上防具としては優秀らしいのだが、耐久性が高い描写が無いせいで紙装甲と揶揄されたケース。
- バカガラス(風の谷のナウシカ)
- 「なんちゅー脆い船じゃ…」のセリフが表すように、ペジテのガンシップの機銃掃射で撃墜される程度の防御力。おまけに回避行動も絶望的な機動力。恐らく輸送力重視の設計と思われる。
- なお、原作コミックではペジテのガンシップだけでなく、ヘビケラ(の群れ)にも食い破られて落とされている。なんちゅう脆い船じゃ・・・。
- ケンプファー(機動戦士ガンダム ポケットの中の戦争)
- ジオン公国軍の試作型強襲用モビルスーツ。
- 終戦間近になって作られた高性能MSではあるが、強襲用という目的のため、現地でも組み立てが可能な簡素な構造になっている。高速で目標に辿り着く機動性と、一撃離脱で大ダメージを与えられる重火器による攻撃力を合わせ持つ一方で、装甲がかなり薄く設計されており、マシンガンでさえ致命傷になるという脆さを持つ。まさに火力とスピードのみに極振りした機体である。
- ただしコクピット周辺の装甲に関しては同時期のゲルググJと同等の防御力を確保していたとされ、それを容易く貫通したガンダムNT-1の90mmガトリングガンは一年戦争当時のどのMSでも直撃を受ければ撃墜されていたという説もある。
- ドラッツェ(機動戦士ガンダム0083)
- コルレル(機動新世紀ガンダムX)
- ムラサメ(機動戦士ガンダムSEEDDESTINY)
- オーブの量産機M1アストレイの後継機。そもそも現行機であるM1アストレイが高機動性と柔軟な関節可動の代償として装甲が薄い機体であり、いくつかの関節部は内部装甲むき出しの状態となっている。
- 後継機であるムラサメはM1アストレイの機動性に加えて変形機構を取り入れており、ついでにさらなる軽量化を実現している。もう装甲が脆いというかラックカバーの如くペラペラである。
- 国防用の機体が高機動低耐久ってどうなの……と思うかもしれないが、国内の治安維持や防災活動にも活用されている為一概に悪手とも言い難い。パイロットも優秀なのが多いので腕でカバーよ。
- ストライクフリーダムガンダム(機動戦士ガンダムSEED DESTINY)
- 本編では機動性重視のため、装甲の細分化による副作用で装甲の防御力が低下していると説明があるが……実際はフレーム関節が金色のPS装甲になっているなど、物理的な耐弾性はむしろ高い。そもそもパイロットがあのキラ・ヤマトなので、初出撃でグフイグナイテッドのスレイヤーウィップを食らった以外、劇中で目立った被弾や機体ダメージは無い。まさしく「当たらなければどうということはない」という展開であった。
- この機体が紙装甲と呼ばれる所以は「EXVS」シリーズをはじめとしたゲーム作品にある。基本的に高火力・高機動・多彩な武装を持つ本機は、総じて他の機体よりも耐久力が低く設定されがちであり、万能機体であるがゆえに紙装甲だけが目立っているのかもしれない。
- バイパーII サイファー マイザー(電脳戦機バーチャロンシリーズ)
- 主役機であるテムジンの装甲を削って高速化した機体。いずれも機動力(特に空中での)を重視して設計されており、徹底的に装甲を薄くする事で軽量化を実現させている。
- ゲーム中においては、メイン射撃2発で撃墜されるなどとんでもない脆さを誇り、変形時に三角飛行機になる事から紙飛行機と揶揄された。
- アーマードトルーパー(装甲騎兵ボトムズ)
- 生産性特化で人命を“換えの効くパーツ”程度にしか考えない、アストラギウス銀河の戦争の在り方を如実に体現した兵器。コックピットがそのまま胸部として設計された辺り、一発の被弾がどれだけ危ういか御理解いただけよう。
- 別名「動く棺桶」。
- 南方棲戦鬼(艦隊これくしょん)
- 耐久値は鬼・姫クラスだが装甲値たったの10。上位種の南方棲戦姫はちゃんとした装甲値に。
- ボスボロット(マジンガーZシリーズ)
- ガラクタを材料に作られたため。毎話毎話ギャグ的にさっくり壊される。もうマジンガーZの頑丈さを強調する為の存在でしかない。
- ただしコクピットのある頭部は意外と頑丈であり、ギャグ要員なのか毎回頭だけは無傷である。
- ダイ・ガード(地球防衛企業ダイ・ガード)
- 民間企業が運用してるためか、初期は「トタンよりマシ」程度の装甲だった(経費節約のため)。物語が進むにつれちゃんとした装甲に強化された。
- ファミコンウォーズシリーズの偵察車・軽戦車
- STGの自機の大半
- イングラムを含む大半のパトレイバー(機動警察パトレイバー)
- 用途が警察用であり、重火器を有する勢力を相手にすることを考えていない為。装甲材はFRPやプラスチック等。
- ゴルタリオンXIII世(ラストオリジン)
- Sランクの保護機(いわば盾役)…なのだが素の回避力は0%、属性耐性も全て0%、防御力は回避盾よりはマシ…とも言えない程度、極めつけにHPはレベルアップすると最大HPが減少するという前代未聞の性能。
- さらには限界突破に相当するコアリンクではどのキャラでも上昇するはずの最大HPが一切上昇せず、専用装備は攻撃力を大きく上げる代わりに最大HPと防御力を下げるという徹底ぶり。装備次第では防御力0どころかマイナスの域にまで達してしまう。
- こんなのが本当に保護機なのかと思ってしまうだろうが、彼は特定の編成時に限り「HP90%以上の状態から一撃死するとHP91%以上の状態で復活。回数は無制限」というこれまた前代未聞のパッシブスキルを有している。紙装甲なのは悩みの種ではなく、むしろ紙装甲でないと困るタイプ。カスダメを与えてくる敵が天敵。
番外
- 無敵星人(日常(あらゐけいいち))
- 見ればわかるが文字通りの紙装甲。
- チップ=ザナフ(ギルティギアシリーズ)
- 豪鬼(ストリートファイターシリーズ)
- もともとは「ストリートファイターⅡ」に登場したリュウの強いバージョン。単純に強いキャラがいてもいいじゃないかという発想で生まれた強キャラなのだが……後世の作品では全キャラのバランスをなるべく均等にする措置が取られ、技のバリエーションが多く、攻撃性能が高かったこのキャラは差別化の為に防御力が落とされた。
- 世代が進むにつれ、この防御力の低さはどんどん顕著になっていき、最終的に紙と言えば豪鬼と言われるほどになった。作品によっては「殺意の波動に目覚めたリュウ」「セス」「神人豪鬼」など更に低体力なキャラがいる場合もある。
- 北上(艦隊これくしょん)
- カミツルギ
- かみ(魔界塔士Sa・Ga)
- 作中では神ではなく「かみ」と表記される。名前の通り世界の創造主にしてラスボスなのだが、バグ(製作者の戦闘フラグミス)が原因でよりによって、即死武器チェーンソーが効いてしまう。「かみはバラバラになった」というメッセージと共に、一撃で紙のごとくばらばらになって死亡。意図せず奇跡的に神と紙のダブルミーニングであった事が話題となり、たびたびパロディにされる。
- ちなみにチェーンソーを使わない場合の防御力は高い。
- アドレーヌ/アド(星のカービィシリーズ)
- Mettaton(Undertale)
- 基本形態はDEFが255もあり、こちらの攻撃は一切通用しない。これは全敵キャラ中ブッチギリの最高値なのだが、変身してEX形態になると大幅にDEFが減少しこちらの攻撃が通じるレベルに落ち着いてしまう。
- とある条件を満たすと戦うことになるNEO形態に至っては、全キャラ中第3位の攻撃力を得た代償なのかDEFが9まで減少してしまい、ここでついに紙装甲となり、一撃で破壊可能。この形態の装甲の薄さについては自覚があるようで、創造主のAlphysに対し「もっと装甲に気を遣うべきだよ…」と愚痴っている。
- 弐式炎雷(オーバーロード)
- 前述のチップよろしく紙装甲のニンジャで、紙装甲高速機体の火力特化に魅力を感じ、「防御力とかゴミだよ」と言い切る徹底ぶり。
- その一方「背後から忍び寄って首を掻っ切るのは余裕」と豪語するほどの隠密と攻撃に特化したステータスで、敵を発見するとすぐに仲間に鳴き声で敵襲を知らせるモンスターをどうやってやり過ごしたのか聞かれ、「静かににじり寄って、首を切り裂いて一撃死させれば、仲間に敵襲をしらせたりしないよ」と答え絶句させていた。ばれたら一瞬で死ぬだろうけど、そのギリギリ感がたまらないらしい。
- ちなみに別のロボットゲームでも同様に紙装甲火力特化仕様の高速機体を使っており、そちらもやっていた仲間に呆れられている。
- サリー(痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。)
- サンラク(シャングリラ・フロンティア)
現実における紙装甲
ちなみに古代中国(大体唐~明王朝時代のころ)はマジで紙を鎧に製造し・大規模応用した時期がある。しかも普通の鉄装甲にも負けない頑丈さで軽い、本スラングが表す意味と真逆の逸品である。
その強靭さの秘密は紙や綿布などの繊維を何十枚重なり、さらに油で固定したもので、刃物どころか矢でも撃ち抜くことが困難、オーバーテクノロジーにも見えるものである。
鉄を捨てて紙を使うのは中国南方では湿度・温度とも高く、鉄鎧が錆びやすく、しかも重いからであり、ちゃんと加工した紙鎧であればコストが安くて水に浸かってもボロボロになるどころか乾いたら硬くなる。
その時は「鉄鎧百領を良質な紙鎧五十領に交換する」という一般常識的に有り得ないこともある。
作りが防御力の全てと言っても過言ではない故、紙鎧は政府に厳しくクオリティ監督を行っており、偽造・私造を厳罰する(5領だけでも死刑)ほど、品質管理を徹底している。
欠点は耐久性が低く、強靭であっても頑丈じゃないので壊れやすい。ゲームで防御力が高いが耐久値が低い装備がそういうことであろう。
関連タグ
ATフィールド:鉄壁防禦の代名詞