『これもいきもののサガか…』
概要
平和だったのも今は昔、モンスターなどが跳梁跋扈する荒れ果てた環境になっていた。そんな中でも人々の間で「世界の中央に建つ塔の頂上に登れば楽園が待っている」という言い伝えがあり、希望を胸に塔へと挑戦した冒険者が後を絶たなかった。しかしそのいずれも帰ってはこなかった…。
そんな中、一組の冒険者だけは違っていた。
「大陸世界」では三種の宝をめぐる戦争に終止符を打って元凶となった玄武を倒し、
「海洋世界」では竜王を追放した青龍を撃退し、
「空中世界」ではミレイユとジャンヌの悲劇の再会の原因となった白虎を駆逐、
「都市世界」では荒廃した街並の中で血気盛んでありながら確かな信念を持った暴走族達と協力し、総長の壮絶な犠牲の上に朱雀を撃破。
遂に塔の最上階へと足を進める。待っていたのは巨大な魔神「アシュラ」。
玄武・青龍・白虎・朱雀に代わって世界を支配しないかと取引を持ちかけられる。しかしここまで来て他人の言いなりになるのはまっぴらである主人公はこれを一蹴し、全面対決に発展、死闘の末にアシュラすらも打ち破った。
だが…これら全てが、かみである彼によって仕組まれたものだった。
この冒険では各地にはたびたび謎のシルクハットの男が現れ、冒険者達にアドバイスをしてきたのだが、その男こそが「かみ」だったのである。
楽園にとうとう足を踏み入れた冒険者たちが尋ねる。これはどういう事なのかと。
真相は、創造神たる彼がこの世界を創り上げたことから始まった。自ら作った世界だったが、長く続いた平和に飽き飽きしていたがために退屈しのぎを思いついたのである。世界を混乱に陥れるためにアシュラを呼び出し、玄武・青龍・白虎・朱雀といった四天王を従え荒れ果てて争いの絶えない世界へと変貌させ、その様子を楽しんでいた。しかも、やがてはこの状況にすら飽き足らなくなり、今度はアシュラを倒すヒーローを欲し、「塔の上に楽園が広がっているという噂」を広めて、人々を冒険へと駆り立てさせた。主人公らがこれまで体験してきた、生まれながらに過酷な運命を背負った姉妹の物語も、子供たちだけは救ってほしいと最期まで祈りながら叶わなかった父子の悲劇も、友情と正義のために命を懸けて壮絶に散った男の生き様も、すべて彼の掌の上だったのだ。
平和だった治安を大きく乱し、世界中の人々の命を弄んだ。さらに、塔を登らせるという彼が用意した「ゲーム」に駆りたてさせるため、乱れた世に苦しむ人々へ「塔の上の楽園」という偽りの希望まで吹き込んだ。それを信じて塔を登る冒険者が現れると、記録室の書物に名前を書き、あとは死亡記録を書くのみの状態にして、自身は「冒険者を助ける謎のシルクハット男」を演じつつ、彼らがいつどこで死ぬかを楽しみにしながら、楽園を求めて必死にあがく姿を見物していた。これの繰り返しである。それもこれもすべては「自分の退屈を紛らわせたい」という、ちっぽけな欲望を満たす、ただそれだけのために。
他のゲームでもしばしば登場する「強大で身勝手な神」ですら、ここまで「全く大義名分なく世界を暴力と混沌の渦に巻き込んだ人物」は、そうそういない。しかも罪悪感などは欠片もなく、それゆえに救いようの無い正真正銘の外道と言えるだろう。
自分のいる楽園へとやってきた主人公らに対し、こんなに自分を感動させてくれた者は初めてだと感激し、礼を述べる。それさえも「死すべき運命を背負ったちっぽけな存在が必死に生き抜いていく姿」と、彼らを虫けらのごとく見下しきったものであった。
お礼にどんな望みも叶えてあげようと告げる「かみ」。しかし、真相を知った主人公らが、彼を許すはずもなかった。
…ここまで書くとまごうことなき邪悪そのものなのだが、チェーンソーによって一撃で倒せてしまうインパクトは、その悪行すら忘れさせてしまうほど。
各所でネタにされているが、シリーズの別の作品ではセルフパロディにすらされているし、半熟英雄でも同じくネタとして登場。
ここまで外道なことをやっておきながら、笑いの種になってしまうのがなんとも珍しい存在ではないだろうか。
一応擁護しておくとチェーンソー抜きで戦うとかなり苦戦する強さで、神の力をまざまざと見せ付けてくれる(そもそも即死攻撃であるチェーンソーが効くのは、初代Sa・Gaにおいてのプログラムの設定ミスの産物。それ以後は有名になりすぎた為にあえて修正されずに残されている)。苦戦する原因は、主に異様とも言える防御力であり、したがって大抵の武器の攻撃が殆ど通らない。つまり、雑魚戦の延長上の戦い方では歯が立たず、戦ってみるといきなり途方に暮れることになる。さらに、全ての属性に耐性を持っているので、魔法攻撃も満足に通らない。加えて、無属性の熾烈な攻撃と多彩な状態異常でパーティを簡単に窮地へと陥れる。とどめは、苦戦しながらも追い詰めるとHP全回復という離れ業を用いて、これまでの努力をパーにしてくれる。彼は名実ともに、魔界塔士Sa・Gaの最終ボスである。
余談だが仮の姿であるシルクハットの男が最初に登場するのはスタート地点の町である。
その時点で戦えるわけではないとはいえ、ゲーム開始直後にラスボスに会える(しかも、最初に話しかける相手がラスボスになるという可能性もある)ゲームはかなり珍しいのではないだろうか。
その後
インペリアルサガおよび同エクリプス、またロマンシングサガリ・ユニバースなど、SaGaシリーズのオールスター作品に登場。これら3作品ではいずれもプレイアブルとしても使用可能。
リ・ユニバースでは原作で見せた両方の姿が登場している。シルクハットの男の姿は、現在Pixivで出回っているイラストよりも髪のボリュームが大幅に多く足元近くまで髪が伸びている。
関連タグ
The Creator:海外版での呼称。日本だと馴染みがないが、普通に創造主の事を指す。
南波翔:ゲームの世界に入り込んで戦うホビー漫画『ロックンゲームボーイ』で、魔界塔士SaGa編において本稿のかみを演じた人物。主人公の兄で悪の組織に洗脳されている。1階からいきなりラスボスのネタバレをしている。