解説
主に、戦車の設計に取り入れられたものを指す。
1辺50mmの正方形の対角線は約70mmある。つまり、厚さ50mmの装甲板を45度傾けて設置できた場合、水平に飛んでくる弾丸に対しては実質的に厚さ70mm分の装甲となる。
また、命中した弾丸が傾斜に沿って逸れるため、同じ厚みの垂直装甲と比べて防御力が増す。
この効果は傾斜角の大きさに比例して二次関数的に増加するため、傾斜の度合いが水平に近いほど防御力の向上が見込める。
ただし、垂直装甲を取り入れた場合と比べて内部が狭くなりやすく、この場合は機器類の搭載や乗員の活動しやすさに悪影響を及ぼす。
戦車史において
第二次世界大戦前のT-34中戦車(メイン画像)で初めて本格的に取り入れられて以降、世界各国で一般化。
戦争後期から60年代の間、戦車の正面装甲は傾斜配置が基本となった。
しかし、60年代後期から70年代にかけて、根本的に異なる物理現象で装甲を貫徹してくる装弾筒付翼安定徹甲弾や成形炸薬弾など、傾斜装甲による「逸らし」を無効化し、傾けた分の厚さ向上程度では防ぎきれない新型砲弾が実用化。その効果は限定的となった。
とはいえ、現代戦車でも傾斜装甲の概念は健在で、垂直装甲のような外見をしていても、内側には装甲材が斜めに配置されていることが多い。
また、上下方向には垂直でも左右方向に傾けた配置も見られる。