概要
ロボットアニメに登場する機動兵器は、主役メカのような華々しい活躍ができる高性能機ばかりではなく、資源の枯渇や国力の疲弊などの事情からやむを得ず高性能化を諦め、数を稼ぐために使い捨て前提の設計が施された機体も存在する。
当然そのような機体が戦場で生き残ることは難しく、多くが容易く撃破されていく。
『動く棺桶』とは、そのような機体を指してコックピットを死者の入る棺に喩えた蔑称である。
こうした機体は所謂やられ役としての立ち位置にいることが多いが、『装甲騎兵ボトムズ』はそのような量産機を主人公の操る主役機として位置づけ、廃棄されていたスクラップを修復して乗機として用いたり、機体が破損すれば躊躇いなく乗り捨てたりという演出を多用することで、ロボットを消耗品の兵器として徹底的に描写した画期的な作品であった。
なお元ネタである「鉄の棺桶」は第二次世界大戦の頃からあった模様。
オタク業界的にはそれを舞台とした漫画『黒騎士物語』からの派生であろう。
「黒騎士中隊の戦士達に休息はない。あるのは鉄の棺桶だけだ」
一例
創作
- TIEファイター(スターウォーズ)
- ボール(機動戦士ガンダム)
- オッゴ、ザニー(機動戦士ガンダムMSIGLOO)
- ドラッツェ(機動戦士ガンダム0083)
- ティエレン(機動戦士ガンダム00)
- モビルワーカー(機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ)
- スコープドッグ(装甲騎兵ボトムズ)
- ガッツォー+(魔装機神)
- パラメイル※(クロスアンジュ)
※ 他の機体たちとは異なりシートベルトどころかコックピットに風防すら無いというふざけた設計。
実在兵器
- IV号戦車:アフリカ戦線においてはF2型が「マークⅣスペシャル」と呼ばれ活躍するなど当時としては決して低くない性能でありながら、主要敵であるソ連中戦車T-34が極めて強力な中戦車であったため相対的に性能不足であった。
- M3中戦車:下記のM4が登場するまでの繋ぎとして連合軍を支えたが、性能、特に防御力の低さから七人兄弟の棺桶とまで揶揄されていた。
- M4シャーマン:主要敵であるドイツ戦車に対してはやはり性能不足であり、ティーガーのような重戦車は勿論同じ中戦車であるパンターにも、一台に対し複数台での交戦を迫られた。それらを撃破可能な火力強化型(防御は据え置き)のファイアフライは目立つ為優先して狙われた。
- 九七式中戦車:第二次大戦時には既に旧式だったこともあり、逆にM4シャーマン相手に複数が必要だった。
- しかも国力の差により数で圧倒する事も出来なかった。
- 一応47mm砲に換装された新砲塔型は米軍からも評価されている程度には性能が改善されていた。
- しかも国力の差により数で圧倒する事も出来なかった。
- 九九式艦上爆撃機:真珠湾攻撃にも利用された急降下爆撃機。九九棺桶と呼ばれた。(参照記事)
強すぎる棺桶
このように『動く棺桶』シリーズは弱い兵器というイメージがあるが、逆に強すぎるがゆえにパイロットが持たないという意味での棺桶も存在する。
例
- ヅダ(機動戦士ガンダムMSIGLOO):加速性能は物凄いが、肝心の躯体強度が見合っておらず、些細なことで空中分解を起こす危険すぎるMS。おまけに製作費がザクの1.8倍では…。
- トールギス(新機動戦記ガンダムW):殺人的な加速によりパイロットが圧死してしまうため、欠陥兵器扱いされていた。
- フォビドゥンブルー(機動戦士ガンダムSEED_MSV):ゲシュマイディッヒパンツァーと呼ばれる特殊装甲と、トランスフェイズ装甲(TP装甲)を両立させる事で水圧から耐える構造になっている水中戦用モビルスーツ。性能自体はいい方だが、海中でバッテリー切れを起こしたり、ゲシュマイディッヒ・パンツァーが故障した瞬間、水圧によって機体その物が圧潰し、パイロットが死ぬという曰く付きの設計になっていた為、フォビドゥン・コフィン(禁断の棺桶)という仇名で呼ばれた。
- ガンダム・キャリバーン(機動戦士ガンダム水星の魔女):乗り続けると疲弊を起こし、パーメット流入量を上げれば廃人化、場合によっては死に至る危険性を秘めたGUND-ARMの中でも、特にキャリバーン(キャリバン)は搭乗者の安全性を無視して機体性能を極限にまで追求した、作中最も呪われたガンダム。ある人物が搭乗したのだが、常に息を切らしていた。
- ネオゲッターロボ(真ゲッターロボ対ネオゲッターロボ):常人なら合体時の衝撃だけでペシャンコになる。
- 00-ARETHA(アーマード・コア4):プロトタイプ・ネクストと呼ばれる、人間の限界を遥かに超える負荷と、致命的な環境汚染を引き起こす悪魔の機体。ネクストACのプロトタイプだけあって、性能は高いのだが、これに乗って出撃した時点で死が確定している曰く付きの代物である事が劇中で語られている。
- 仮面ライダーG4:装着者の安全性をガン無視した設計となっており、G4システムに組み込まれているAIが勝手に動かしているので、装着者の負担が尋常ではない。その余りの危険性から、G3Xの装着者から呪われたシステムと唾棄されている。
文字通りの動く棺桶
比喩ではなく本当に棺桶を据え付けている例。
- ドレッドノート(WARHAMMER40000):超人兵士スペースマリーンが瀕死の重傷を負った際、最低限の生体機関と生命維持装置を装甲化された棺桶であるコックピットに接続したサイボーグ兵器。スラングとしての「動く棺桶」とは異なり優れた火力と装甲を備え、何より接続されたスペースマリーンは事実上の不死となり戦場で散るその瞬間まで生き続ける他、ドレッドノートに納められることはスペースマリーンにとって大きな名誉と捉えられている。
- モーティファイア(WARHAMMER40000):修道会の軍勢アデプタ・ソロリタスの保有する歩行兵器であり、こちらもコックピットは装甲化された棺桶となっている。しかしこちらはドレッドノートとは対照的に、修道会における最低クラスの異端者、罪人を処罰する拷問具という目的も備えており、常時投与される薬剤によってもたらされた罪人の苦痛を動力としている。装甲化されたコックピットというのも、「死」という救済と安息を奪う為に設けられており、モーティファイアが破壊される瞬間まで罪人は苦痛とともに贖罪を強いられる(この兵器の原型となった「ペニテント・エンジン」はパイロットが剥き出しとなっている)。
- ギヴァス(ウルトラマンアーク):搭乗者のメグマ星人は移住先の惑星が見つからなかった場合、この愛機と心中する思いであった。
その他の動く棺桶
例
- 未亡人製造機:基本的に「事故率の高い欠陥機」の事。つまり強い弱い以前の問題。
- ドラゴンクエストII:死亡したメンバーが入った棺桶が生存しているメンバーの後ろを付いていく様子からそう呼ばれている(「鉄の棺桶」ではない)。
- デルフィナスを含むコフィンシステム搭載機(エースコンバット3):透明キャノピー(ガラス窓)を持たず、更には中で横たわる姿勢のコックピットシステムから「エアロコフィン(空飛ぶ棺桶)」と呼ばれている。
- そもそもシステム名からして棺桶(コフィン)を名乗っている。
- ジアース(ぼくらの):パイロットの命と引き換えに動くので、一度動かしたら絶対に死ぬ。
- 棺桶(とある科学の一方通行):名前が既に棺桶、死亡した能力者の脳に機械で出来た巨体を「自身の肉体である」と錯覚をさせる事で能力のレベルを2段階ほど引き上げる兵器。レベル2ならレベル4、レベル3ならレベル5クラスまで増幅できる。すでに死亡している者が中にいる為正しく棺桶をしている。
- ガンダム・ヴィダール:死亡したアインの脳をMSのパーツとして阿頼耶識に利用していると尊厳もへったくれもないガンダム。こちらも既に死亡している為正しく棺桶をしている。搭乗者いるけど…しかもその上生き残っている(元を正すと、その友人の所以)。
- ファンタズマ:特に完成型は搭乗するのに人間を辞めなければならない曰く付きの兵器。
- R戦闘機:特に裏設定は人機一体という狂気の設計となっている。
- バルトール:この機体に搭載されているODEシステムは、パイロットを部品をして稼働する狂気の機体。この機体に乗せられると絶対に助からない。
もはや棺桶「ですらない」代物
- ファフナー(蒼穹のファフナー):性能はともかく乗り続けているとパイロットが砕け散り、死体も残らない人食いの邪龍。
- おまけに子供でなければ動かせないという役満っぷり。
- M1A4ジャガーノート(86-エイティシックス-):蓋(キャノピー)の密閉が甘くてしっかり閉まらないアルミの『桶』。おまけに名目上は無人機なのでハナっから棺桶を名乗ってない。