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ドイツのラインメタル社が開発した主力戦車は⇒KF51パンター


解説編集

第二次世界大戦中盤から後半にかけて、ドイツ軍機甲戦力の主力を務めた中戦車

ティーガーI以上の砲火力、強固な正面装甲、優秀な悪路走破性を兼ね備え、また戦中開発のドイツ軍戦車としては最も多く生産されたことで、連合軍にとって最大級の脅威となった。


制式呼称は当初「Pz.kpfw.V Panther」(V号戦車パンター)だったが、1944年2月に「Pz.kpfw.Panther」(パンター戦車)に変更。

特殊車輌番号は「Sd.kfz.171」(指揮戦車型: Sd.kfz.267/268)。


(Pz.kpfw=Panzerkampfwagen、Sd.kfz=Sonderkraftfahrzeug)


開発編集

Panzerkampfwagen III Ausf.Jセンシティブな作品
力不足のIII号戦車強敵T-34

バルバロッサ作戦の発動により独ソ戦が始まった1941年6月。

III号戦車を主力に据えるドイツ戦車隊は、ソ連赤軍T-34中戦車KV-1重戦車を前に、火力・防御力の両方で完全に圧倒されてしまう


そこで、性能不足のIII号戦車を置き換える後継車輌として、計画車重36トンのVK30.02開発が開始された。


IF×3VK3002 [試作パンター]
T-34の影響が大きいVK30.02(DB)MAN社案VK30.02(MAN)

計画はダイムラー・ベンツ社案VK30.02(DB)とMAN社案VK30.02(MAN)の競作となったが、前者の開発遅延を主因に、1942年5月には正式にMAN社案の採用が決定し、同年末にはVK30.02(MAN)試作車が完成。

1943年1月には「V号戦車パンター」として制式化、量産が開始された。


特徴編集

III号戦車の後継として開発されたという経緯ゆえ、一般的には中戦車に分類されるパンター。

しかし、その火力と正面防御力は重戦車に匹敵するものであり、実際にソ連赤軍はパンターを重戦車として識別していた。


(以降の装甲傾斜に関する数値は傾斜角=水平+x度,垂直=90度で統一表記)


火力編集

鋼鉄の豹

パンターが搭載した70口径75mm砲「KwK 42」は、前任のIV号戦車(F2型以降)が搭載したKwK 40と砲口径こそ同一ながら、装薬量の増大や1.5倍近い砲身長の長さから、通常の徹甲弾でも900m/s以上の高初速を発揮。

より大口径なティーガーIの56口径8.8cm砲「KwK 36」以上の性能を示した。

弾名弾種初速傾斜角60度の装甲に対する貫徹力(射距離)
Pzgr 39/42被帽付徹甲榴弾920m/s138mm(100m),111mm(1,000m),89mm(2,000m)
Pzgr 40/42硬芯徹甲弾1,120m/s194mm(100m),149mm(1,000m),106mm(2,000m)

防御力編集

T-34に倣い、大戦期のドイツ戦車としては初めて傾斜構成の装甲配置を取り入れて設計された。

battle of the bulge豹式!前進!
標準的な防盾アゴ付き防盾

  • 防盾・砲塔
部位実装甲厚/傾斜角実質装甲厚
防盾100mm/曲面100mm~
側面45mm/65度49mm
背面45mm/65度49mm

砲塔正面の大部分を覆う半円筒状のパーツの防盾は、大戦初期の75mm級戦車砲ならほぼ無力化できる程度には強固だったが、問題も抱えていた。

それが、下部の局面に命中した弾が跳弾、車体天板装甲を貫通してしまうショットトラップ現象。

これの対策として、後期型には下部に張り出しの設けられたアゴ付き防盾が導入されている。


  • 車体
部位実装甲厚/傾斜角実質装甲厚
正面80mm/35度139mm
側面上部(A/D型)40mm/50度52mm
側面上部(G型)50mm/60度57mm
側面下部40mm/90度40mm
背面40mm/60度46mm

車体正面は80mm厚ながら、傾斜の効果により実質140mm厚程度とティーガーIを凌駕する車体正面防御力を示し、連合軍戦車砲の中でこれを射貫できるものは高初速を発揮する英国の17ポンド砲、一撃の投射量が大きいソ連のD-25T 122mm砲など、一部の強力なものに限られた。


他方、側面・背面装甲厚は40mm~50mmと非常に薄く、弱点だった。

また、車体側面下部に関しては歩兵が携行可能な対戦車ライフルでさえも有効打を与えることができるほどで、これを防ぐため、側面下部にはシュルツェンと呼ばれる追加装甲が施されている。


機動力編集

厚い装甲と重戦車並みの巨体が相まって車重が45トンにまで嵩んだパンターだが、700馬力の高出力を発揮するマイバッハ社製「HL230P30」水冷4ストロークV型12気筒ガソリンエンジンの恩恵もあり、その出力重量比は他国中戦車と同等だった。

(1943年11月以降の生産車では機械的信頼性確保のため最大出力が600馬力に制限されている)


そして、パンターの最大の特徴ともいえるのが当時の戦車としては走行装置が非常に凝っている、ということ。

大型で重く複雑だが優秀な悪路走破性を提供するダブルトーションバー方式のサスペンション、接地圧が低減される挟み込み式転輪の組み合わせにより、その走行性能は10トン以上軽量なM4シャーマンやT-34にも全く引けをとらなかったのだ。


ただし、パンターの整備の困難さ・故障のしやすさ走行装置が主因だったりする。

特に、ダブルトーションバー方式サスペンションに関しては後継のパンターIIをはじめ、以降のドイツ戦車に全く採用されていないことから凝り過ぎた、ということがうかがえる。


運用・実戦と評価編集

1943年夏、クルスクの戦いで初めて実戦で用いられたパンターは数多くの初期不良に見舞われ、その性能を活かせないまま多数が放棄されてしまった。


その後、改良により信頼性が向上して以降も、単純な数的劣勢、ヤーボ(戦闘爆撃機)・シュトゥルモヴィク(襲撃機)による航空攻撃、搭乗員の質の低下などにより、連合軍戦車に対する性能の優位を生かないまま多数が撃破された。

古い資料にある「1台のパンターを撃破するのに5台のM4シャーマンが撃破された」という逸話は、元をたどればパンターに対する米英軍側の予想・見立てをそのまま受け取った、実質的なデマである。


それでも、パンターはIV号戦車やIII号突撃砲と並んでドイツ機甲戦力の中核的存在として活躍し、大戦後期の連合軍にとって最も警戒すべき敵であり続けた。

そして、その戦局への寄与は、紛れもなくティーガーを上回るものだった。


ケルン大聖堂の決闘! パンター vs M26パーシング編集

ケルン大聖堂(1945)

ー1945年3月6日、滅びゆく第三帝国西の要衝ケルン。荘厳なゴシック聖堂の影に潜む、1輌のパンター。


6日午後、大聖堂前の中央広場を目指す米軍戦車隊。

先鋒を務めるM4シャーマンは進路を塞ぐ瓦礫を前に立ち往生していた。


突如、砲撃音。パンターの攻撃はシャーマンの装甲を容易く撃ち抜き、これを仕留めた。


次の獲物を求め、前進を開始したパンター。

すると、交差点の右手にM26パーシングが現れ、パンターの車体右側面に一撃、二撃、そして三撃。

パンターは炎上し、そして沈黙した。


このケルンの戦いにおけるパンターとM26パーシングの交戦は第二次世界大戦において数少ない映像記録のある戦車戦となっている。

「Cologne Tank Battle」「Cologne Tank Duel」「Cologne Panther」と検索すればこれを閲覧することができるが、そこに捉えられているのは本当の戦場。残酷なシーンに耐性が無い場合は多少の注意が必要だ。


型式編集

パンターの型式は開発順にD型→A型→G型→F型とアルファベット順になっておらず、この理由は謎に包まれている。

なお、他のドイツ戦車同様、同じ型式であっても生産中のマイナーチェンジ、現地改修などが実施されたため、後述する特徴は必ずしも全ての車輌に当てはまるものではない。


各型式を合わせた総生産数はIII号突撃砲の約10,000輌、IV号戦車の約8,500輌に次いで多い約6,000輌。


D型(Ausführung D)編集

panther D tank

1943年1月~同年9月にかけて約850両が生産された。


他の型と異なりキューポラが円筒形ということ、キューポラ外周に防弾ガラス越しの直接視察口があること、キューポラ上面車長ハッチの開閉が跳ね上げ式ということ、車体前方右側の機銃口が長方形の開閉式カバーとなっていることが特徴。


A型(Ausführung A)編集

パンターA(雪無し差分)

1943年2月に開発決定、1943年9月~1944年7月にかけて約2,200両が生産された。


超戦車長

キューポラはお椀を伏せたような形に変更、キューポラ外周に7個のペリスコープが埋め込まれ、上部には対空機関銃架となるリングを装備する。

また、キューポラ上面の車長ハッチの開閉はスイング式に変更された。


初期生産型の車体はD型と同一。

1943年11月以降の生産型から車体正面の機銃口がボールマウント方式に変更された。


G型(Ausführung G)編集

パンターG型

1943年5月に開発決定、1944年3月~1945年4月にかけて約3,000両が生産された。

当初は2,650両の生産が予定されていたものの、後継となるF型の開発遅延により計画より多く生産されている。


車体前方左側の操縦手視察口が廃止、代替として車体上面に旋回式のペリスコープが装備され、従来スイング式だった操縦手と無線手のハッチが跳ね上げ式となった。

また、車体側面装甲の傾斜角が10度浅くなっており、防御力減少を防ぐべく装甲厚が増加されている。


なお、一部の後期型にはショットトラップ対策として防盾下部に張り出しが設けられた。


F型(Ausführung F)編集

イケてた戦車(´・ω・`)

戦争終結時、未だ開発段階にあった型。


小型軽量でステレオ式測距儀を装備する新型砲塔のシュマールトゥルム(Schmalturm:小砲塔)が採用された。

これは正確な測距情報に基づき、数的優位の連合軍戦車を遠距離から撃破しようとする試みと考えられる。

車体はG型と同様。


FG 1250暗視装置搭載型編集

どこでもキューポラsdkfz251赤外線暗視装置付き
キューポラに装備されたFG 1250暗視装置Sd.kfz.251(赤外線サーチライト搭載型)

1944年後期に約50輌のG型がアクティブ式赤外線暗視装置FG 1250をキューポラに装備した仕様で生産された。


連合軍航空機の活動がほとんど無い夜間においても効果的な戦闘を可能とした。

目標の捕捉を補助するため、強力な赤外線サーチライトを搭載するSd.kfz.251/20ハーフトラックとの共同運用も想定されていたという。


ガスタービンエンジン搭載型編集

当時のドイツ陸軍は新世代の動力として灯油でも運用できる高効率なガスタービンエンジンを検討しており、その試作品がパンターに搭載、試験された。


搭載されたエンジンは後のアメリカ製主力戦車M1エイブラムスなどに搭載されたものと原理は同一であり、1100馬力以上を発揮したとされる。

しかし、低速域での性能不足、劣悪な燃費とドイツ全体の根本的な燃料欠乏などから、実用化には至らなかった。


パンターII(Panther II)編集

パンターⅡ

未成に終わった、パンターの後継車輌計画。


開発決定は1943年1月でA型よりも早く、D型の問題点改善、ソ連戦車の攻撃力強化や対戦車ライフル対策としての装甲増厚(車体正面100mm、車体側面60mm)、ティーガーIIとの走行装置共通化、砲塔の小型化など、様々な改良が予定された。


1943年秋の生産開始を目標としていたが、当時は既存車輌の生産および小規模な改良で手一杯であり、供給の低下は得策ではないと判断され、A型の生産開始以前に計画は放棄された。

その後、パンターIIに施されるはずだった改良点はA型とG型に順次導入されている。


なお、ゲームやプラモデルではシュマールトゥルムと「KwK 43」71口径8.8cm砲(ティーガーIIのものと同型)の組み合わせで登場することがあるが、これはおおよそ実現しえない設計だった。

KwK 43は非常に大型で、シュマールトゥルムに収めるには物理的に大きすぎるのだ。


派生型編集

ヤークトパンター(Jagdpanther)編集

Jagdpanther Tank destroyer

駆逐戦車型。詳細はリンク先を参照。


パンター指揮戦車(Befehlspanzer Panther)編集

パンター指揮戦車(´・ω・`)

無線通信機能が強化された型。


中隊指揮官・副官以上用に350輛が生産された他、既存のパンターから改修されることもあった。


ベルゲパンター(Bergepanther)編集

山岳戦車

(画像のような運用は想定されていない点に注意)


パンター戦車回収車とも呼ばれる戦車回収車型(行動不能となった戦車を回収するための車輌)。279輌が生産された。


それまで一般に用いられていたハーフトラック戦車回収車では50トン近いパンターやティーガーを回収するのは困難だったため、より牽引力に優れるパンター車体がこの用途に流用されることとなった。

当初は車体に簡易クレーンをつけただけの暫定的なものだったが、次第に回収用ウィンチや車体固定用アウトリガーも装備した本格的な戦車回収車となった。


なお、一部の車輌は自衛用に55口径20mm機関砲「KwK 30」を搭載していた。


M10偽装車(Ersatz M10)編集

たまにはアメリカーナ・・・

アメリカ陸軍M10GMC戦車駆逐車に似せて偽装されたパンターG型。グライフ作戦に伴い、5輌がこの仕様に改装された。


1944年のバルジの戦いの際、米軍に偽装した第150装甲旅団が運用した。

可能な限りM10に外見を近づけるべく装甲板を被せてシルエットを変え、キューポラは撤去、米軍風に塗装するなど、徹底した偽装が施されている。


最終的に、バルジの戦いで全5輌が失われた。


IV号戦車砲塔搭載型ベルゲパンター編集

Ⅳ号戦車砲塔搭載型ベルゲパンターとは

IV号戦車の砲塔を載せたベルゲパンター。第653重戦車駆逐大隊で1輌が改造された。


用途は指揮戦車であり、砲塔は固定搭載のため旋回できない。


ケーリアン対空戦車(Flakpanzer Coelian)編集

シュトルモヴィク

対空戦車型。計画のみ。


パンターの車体に3.7 cm Flak 44 機関砲を連装した全周旋回式密閉砲塔を組み合わせたもの。

木製模型が製作されたが、生産コスト比の火力効率の低さや戦局の逼迫により未成に終わった。


E-50編集

E-50 1946

50~65トン級の計画車輌で、E計画におけるパンターの後継。


1944年には試験段階のサスペンションのみ完成していたが、それ以上の進展無しに終戦を迎えている。

また、設計図は車体のみで、砲塔・武装に関しては具体的な情報が「ティーガーII後継のE-75と共用する」というものしか無く、その完成形は謎に包まれている。


登場作品編集

主人公クルツ・ウェーバーおよびエルンスト・フォン・バウアーが搭乗。


  • 『ベルリン1945』

ハルス中隊に半ば強奪する形で一時配備される。


野良中戦車同好会の車輌としてF型が登場。


主人公らがスクラップの中からA型車輌を修理して搭乗。


ガルパン劇場版

黒森峰女学園が運用するG型が多数登場。


アーヘンでの戦闘にレオパルト1を改造したパンター戦車が登場するが、あまり似ていない。

同年制作の『女王陛下の戦士』ではマズルブレーキを取り付け塗装を変更した同型車が登場している。


パリ市内で自由フランス軍やレジスタンスと交戦。撮影に使用されたのはM24を改造した車輌。


中盤から後半にかけ、主人公たちと対峙するドイツ軍戦車として登場。主人公の宿敵イェーガーの搭乗車は暗視装置搭載型となっている。

撮影にはT-54をパンター風に改装した車輌が用いられており、再現度は高い。III号戦車と共に主役級の活躍を見せた。


シリーズ皆勤の戦車。初代PS「コンバットチョロQ」のみ英語の「パンサー」表記。

「コンバットチョロQ」ではD型とG型、パンターII、さらにはケーリアン対空戦車が登場。D型とケーリアンはバトルアリーナ「ミドルクラス」で交戦するのみだが、G型とパンターIIは中盤の強敵として立ちはだかる。

PS2「新コンバットチョロQ」ではD型・A型・G型・F型・パンターIIが登場。中盤以降のステージで登場する。D型は「ザンブニール攻防戦」、パンターIIは「爆撃の閃光都市」クリアで使用可能となる。

A型とF型はステージ中には登場せず、A型はエキスパートアリーナ「マスボンバー」で、F型はバトルアリーナ「ウォーター」で対決、勝利すると使用可能となる。

G型もエキスパートアリーナ「テクニカルウェイ」で対決、勝利すると使用可能となる。

いずれも同軸機関銃タイプ「T」カテゴリーと車体機関銃タイプ「B」カテゴリーの武装を装備できる。

GBA「コンバットチョロQ アドバンス大作戦」ではG型らしき車輌が「V号戦車パンター」として登場。「75ミリカノン」と「汎用バトルタンク」で再現可能。

クセがなく扱いやすい75ミリカノンと、そこそこな機動力を誇る汎用バトルタンクによる中堅クラスの戦車。敵タンクとして登場する際にはクラッシュ効果(一撃必殺)を防ぐことが出来る「お守り」を装備している。

敵勢力Qシュタイン帝国の主力戦車であり、「エリートタンク」と名乗る強化タイプも登場。タイプごとに異なるサブウェポン・オプションを持つが、「エリートタンクIV」と「エリートタンクV」は主砲を換装している(IVは「ロケット砲」、Vは「15.2センチ砲」)ためパンターからかけ離れた外観になっている。


関連イラスト編集

鋼鉄の豹武装SSの精鋭たちバルクマン・コーナーパンター


関連タグ編集

ドイツ陸軍 戦車 中戦車 重戦車 駆逐戦車 対空戦車 自走砲

I号戦車 II号戦車 III号戦車 IV号戦車 V号戦車 ティーガーI ティーガーII

パンサー

KF51パンター - パンターの名を冠するドイツ戦車その2。最新型の主力戦車

pzkwv - 名前がパンターの型番と類似している。

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