解説
第二次世界大戦後期の1943年に実用化した、ソ連国防人民委員クリメント・ヴォロシーロフ(Kliment Voroshilov)の名を冠するソ連赤軍の重戦車。
脅威のティーガー | 原型となったKV-1S |
ドイツは1942年に「VI号戦車ティーガーI」を戦線へ投入。
その8.8cm砲は赤軍戦車を一撃で葬り、逆に赤軍戦車の76.2mm砲は10cm厚の装甲で容易に防がれた。
そこで赤軍が開発したのが、ティーガーの装甲を貫通できる85mm戦車砲を搭載した、新型のヨシフ・スターリン重戦車「IS-1」。
しかし、IS-1の生産体制を確立させている間にも、前線の赤軍戦車兵は一刻も早いティーガーを倒せる戦車の到着を待っている...
そこで、旧式重戦車「KV-1S」の車体を改造、そこに車体の完成を待っていたIS-1の砲塔を搭載するという方法がとられ、ここに急場しのぎの暫定的な新型戦車「KV-85」が生まれることとなった。
原型から車重が増大し(+4トン)悪化した機動力・旧式車体の薄い装甲が簡単に貫通されるといった問題点を抱える上、あくまでIS-1実戦投入までのつなぎだったKV-85は、1943年9月から11月までの短い生産期間で総数143輌に終わった。
これは、数万の戦車がひしめく独ソ戦の規模からすれば非常に微々たる数でしかないが、それまでティーガーに立ち向かうすべを持たなかった赤軍戦車兵にとって、その存在は意義あるものとなったのかもしれない。