KV-2
かーゔぇーどゔぁー
KV-2(КВ-2)は、第二次世界大戦・大祖国戦争期の1940年に実用化したソ連製重戦車。
KVの接頭語は、当時のソ連国防人民委員クリメント・ヴォロシーロフ(Климент Ворошилов, КВ: KV)に由来する。
KV-1重戦車を原型に大型砲塔と152mm榴弾砲を搭載した車輌で、ソ連赤軍がフィンランドとの冬戦争の際に苦戦を強いられた堅牢な防御陣地・マンネルヘイム線を突破すべく開発された。
なお、敵対するドイツ軍側での表記はKW-2もしくはKW-II。
KV-2の搭載するM-10T 152mm榴弾砲は、比喩抜きに当時の戦車搭載砲として最強の火力を発揮。
原型のKV-1と同様、50mm級以下の火砲をものともしない圧倒的な防御力をも有した。
ただし、規格外の巨砲を搭載した影響により、車重は驚天動地の52トンに到達。
機動力が貧弱となった上、過大すぎる車重に耐えきれずにトランスミッションが破壊されるという事案も発生したらしく、信頼性は最悪レベルのものだった。
さらに、重量40~50kgに達する大型砲弾の装填は生身の人間が担当するため、必然的に砲撃一発あたりに要する時間が長くなった結果、一般的な戦車と比べて時間当たりの砲撃可能回数、すなわち手数に劣った。
とはいえ、その性能は間違いなく強力なもの。
1940年春、試作車2輌が冬戦争の前線へ投入されるとフィンランドの防衛陣地に対抗する移動砲台としてよく機能。
うち1輌は、37mm対戦車砲の攻撃を48発受けても動作に支障をきたさなかったという。
それでも、KV-2の用途が非常に限定されていることは明らかだった。
赤軍における評価も「強力ながら汎用性に乏しい一種の特殊兵器」といったところから脱することは無く、冬戦争終結後の1941年6月に独ソ戦が始まる頃、その量産は204輌で打ち切られた。だが...
バルバロッサ作戦によってソ連領内に侵攻を開始したドイツ軍はしかし、未だに有力な7.5cm対戦車砲や突破戦車を持たず、ソ連赤軍の保有する高性能戦車に対して大苦戦。
時には、たった1輌の戦車を前に一個師団が進撃の停止を強いられることもあった...
1941年6月24日、1輌のKV戦車がドイツの前線と第6戦車師団の補給線を繋ぐリトアニア・ラセイニャイ市近郊の街道の分岐点に出現。ここを単騎で封鎖した。
これに対し、ドイツ軍は4門のPaK 38 5cm対戦車砲を投入するも、攻撃は通じず反撃を受けてあえなく壊滅。
続いて、ドイツ軍は当時最強格の対戦車火力を有する8.8cm高射砲での撃破を狙うも、設営中に砲撃を受け、これも返り討ちとされてしまった。
その夜、ドイツ軍は工兵隊を夜闇に紛れさせてKVに接近させて爆薬を装着。
爆破による撃破を試みるも、戦果は履帯の破壊に留まった。
25日、ドイツ軍は38(t)戦車を主力とする戦車隊を囮とし、8.8cm高射砲をKVの死角で設営。
この試みは成功し、8.8cm高射砲はKVの側面に幾度にも及ぶ砲撃を加え、遂に2発を貫通させた...
...が、既に重度の損傷を受けているにもかかわらず、KVは応戦を継続。
最終的に、歩兵の肉薄によって投入された手榴弾がKVの車内で爆発し、ようやく完全に沈黙したという...。
この単騎のKVによってドイツ軍第6戦車師団は2日間にも渡って補給を寸断され、進撃停止を余儀なくされた。
最期の瞬間まで死力を尽くした伝説的な戦車兵とその乗車についての詳細については、未だ謎に包まれている。これから先、新たにそれが明かされることも無いだろう。
しかし、それこそが大祖国戦争序盤の絶望的な戦況で命を失い、2度とその名を知られることのない無名の英雄たちの代表的な存在として、この逸話が語り継がれる確固たる理由なのではなかろうか。
ゲーム
- コンバットチョロQ
- コンバットチョロQ:最重量級の戦車として作戦11「裏切りの装甲列車」から登場。被弾時のノックバックが発生しない唯一の戦車だった。
- 新コンバットチョロQ:より重量級のマウスなどが使用可能となったためお株を取られた感があったが、「砂に潜む悪魔」でなんと砂の中に潜んでいる敵タンクとして登場し、強力な爆裂榴弾を放って来る。「秘密基地潜入」クリアで使用可能となり、車体機関銃タイプ「B」カテゴリーの武装を装備できる。
- コンバットチョロQ アドバンス大作戦:敵タンク「KV-2重戦車」として登場。あるステージではQシュタイン帝国軍によって壊滅したヴァイナー連邦軍の将校としても登場する。「152ミリカノン」と「重戦車タンク」で再現可能。機動力は低いが重装甲で防御力に優れる。しかし搭載する152ミリカノンは範囲攻撃武器ながらも「範囲内の1ヘクスにランダムに着弾する」という仕様のため敵が密集した状況でないとミスになりやすいという弱点がある。敵タンクとして登場する際にはマーキング弾を装備している。
- World_of_Tanks・World_of_Tanks_Blitz
ソ連重戦車として登場。
ソ連重戦車として登場。
アニメ
全国大会でプラウダ高校所属車が登場。
隊長のカチューシャは頼れる同志と呼んでいたが、再装填の合間をあんこうチームのIV号戦車F2型とカバさんチームのIII号突撃砲F型に攻撃され、呆気なく走行不能に陥った。
本編では乗員の描写はなかったが、BD特典OVAで同車乗員のニーナとアリーナが登場した。
TVシリーズに引き続き同プラウダ高校所属車が登場。TVシリーズよりも大幅に見せ場が増えている。
エキシビションマッチでは何故か海中から現れ、流れ弾でホテルの壁面を破壊して152mm砲の強烈な威力を見せ付けるも、バランスの悪い地形で砲塔を旋回させたために転倒。走行不能となってしまった。
大学選抜チームとの試合ではカチューシャを逃がすための盾となって立ちふさがり、『街道上の怪物をなめるな!』との名台詞も登場。
最終的にはクラーラのT-34/85、ノンナのIS-2と共に被撃破までの間でM26パーシング数輌を撃破した。
同じくプラウダ高校所属車が登場。
第3話での黒森峰女学園戦では味方車と共に丘陵上の陣地からパンツァーカイルで迫る黒森峰の軍勢を攻撃、先陣を担っていた超重戦車マウスをショットトラップで仕留める大活躍を見せた。
第5話に登場。
雁淵ひかり、下原定子、ジョーゼット・ルマールの3人がネウロイが発する猛吹雪をしのぐため放棄されていたKV-2に一時避難した。
また、KV-2に残されていた燃料と砲弾を利用してネウロイを撃破された。
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皆さん小説の方でお久しぶりです。PJです。今回お送りしますのはかなり前から妄想だけは進んでいたお話。皆さんは街道上の怪物、と呼ばれた一両のKV-2の逸話をご存知でしょうか。1941年6月22日から25日の間、リトアニアのラシェイニャイという町で起こった、たった一両の戦車と一個機甲師団の激闘。一つの師団を足止めし、一つの師団に進路を変更せざるを得ない状況に追い込んだ本物の怪物が数十年前に存在しました。今回はそんな逸話をモチーフとしたお話となっています。書き終えてみるとちょっとばかりこの話を美化しすぎてしまっている節があるかもしれないと思った部分もあります。そのあたりも踏まえて読んでいただければ幸いです。31,004文字pixiv小説作品頼れる同志
「まんず無茶ばっかりさせられてきた」らしいので、その妄想です。6万文字とありますが文頭下げとかスペースとかルビとか、一度やってみたかったあとがきとかでかなりかさ増しされているので、多分体感的には6千文字くらいです。大丈夫です(?) 百合要素ないです。戦車ばっかり。 オリキャラが脇役で出ます。 「・」をルビに置くことで傍点の代わりにしてますが、環境によってズレるみたいです。ご了承ください。 誤字脱字あれば、どんな細かいものでも指摘していただけると非常に助かります。 フィクションです。戦車の仕様や歴史の中に、一部想像や変更があります。 スペシャルサンクス(順不同) 鹿狩人さん(http://www.pixiv.net/member.php?id=53845) 重森さん(http://www.pixiv.net/member.php?id=164631) つくしさん(http://www.pixiv.net/member.php?id=352703) 素晴らしい助言をいただきました。ありがとうございます。 参考書籍 『KV‐1&KV‐2重戦車1939‐1945』 (オスプレイ・ミリタリー・シリーズ―世界の戦車イラストレイテッド) 『戦車の戦う技術 マッハ5の徹甲弾が飛び交う戦場で生き残る 』(サイエンス・アイ新書) 『タンクバトル』(潮書房光人社)64,392文字pixiv小説作品