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零距離射撃

ぜろきょりしゃげき

主にフィクション内で使われる用語。過去に軍事用語として用いられていた例も確認されているが、そちらは現在ではほとんど死語となっている。 また一時期この語にまつわるデマ情報がネット上で流布されていたため、語句の意味を間違って覚えている軍事マニアもいる。
目次 [非表示]

零距離射撃とは

信管を持つ砲弾を撃った直後に目の前で爆発させる射撃法のこと。

信管距離を零にする射撃だから零距離射撃。


榴散弾という砲弾を用いて行う。この砲弾は爆発すると前方に散弾をバラまくようにできているため、これを撃った直後に爆発させると散弾銃のように近距離広範囲射撃になるのである。

もちろん普通の砲弾(榴弾とか)でそんなことをやったら撃った方も弾片が飛んできて死ぬので、榴散弾以外で零距離射撃は行われることはまず無い。それに所詮は散弾なので戦車とかには効かない。

砲兵が敵の歩兵に近接されてしまった時などに緊急に行われた。

第二次世界大戦では日本軍がこの射撃で敵を追い払った記録が残っているものの、現在では肝心の榴散弾が様々な理由で使われなくなったため軍隊で零距離射撃の名前を見る機会は全く無くなってしまった。

また大戦当時の米軍は日本軍歩兵の肉薄攻撃に対処するために、戦車砲などにキャニスター弾(一種の散弾)を配備・使用していた(こちらは必ずしも零距離射撃されたわけではないが、南方の密林などでは近距離で戦闘が始まることも多かった)。



そもそも零距離とは

距離が零のこと、あるいは限りなくそれに近い状態を指して使われる言葉。

大正時代には既に密着状態を指して零距離という言葉が使われているのが確認されており、創作や文芸では専らこっちの意味で使われる。

大戦当時のソロモン水域の水上夜戦では乱戦になる事もあり、主砲や両用砲どころか機銃まで撃つほどの近距離で叩き合う事態になったとか。当然だが大戦当時の戦闘艦艇は既に、これ程の近距離で撃ち合うようには造られておらず(軍艦というより戦車などの戦闘距離である)、こうした「その兵器の想定した戦闘距離より明らかに近すぎる近距離戦闘」のケースを説明する時に「零距離」が出てくる事も。

ちなみに中国語でも同様の意味で通じる。




創作における用法

※ここでは主に兵器同士の零距離射撃について扱う。人間同士の零距離射撃については接射の項へ


本来長大な射程から遠距離での砲撃戦を行うはずの兵器が、ほぼ密着状態の至近距離から射撃を行う射法のこと。

発射した砲弾や被弾した兵器の装甲破片、衝撃波や熱風がデリケートな砲身を直撃し、本体にも被害が及ぶ危険があるため、現実に行われることはない。帰還不能となった戦艦、戦車等の破壊処分についても相応の安全距離を取った上で行われる。


ましてや戦闘中に零距離射撃を行う理由は全くない。

兵器というのは、創作で描写される射程をはるかに上回る射程を持っており、

88式地対艦誘導弾150~200km(推定)
99式空対空誘導弾100km前後(推定)
155mm榴弾砲24~30km
90式空対空誘導弾5~10km
120mm滑腔砲3km
M61バルカン810m(空対空射撃)

とまあこんな感じ。現実の軍隊では彼我の距離が1000mを切ったあたりから至近距離という言葉が使われ始め、零距離射撃など発生しようがない。


だがこれをリアルに描写すると敵が常に米粒状態で形状すら判別できない、それどころか地平線の向こうに隠れて見えないなんてことが頻発し、フィクションとしては非常にやりにくい。

そのためフィクションに登場する兵器は、多くの場合現実的な射程をはるかに下回る実用射程を設定されると同時に、動きを派手にするために非現実的な機動性を付与される。

その結果異常な至近距離での戦闘が頻発し、零距離射撃が発生する余地も生まれる。

零距離射撃となれば、互いの武器、車体(機体)をワンシーンの中に収めることが容易となり、印象的なシーンとなることも多い。


偶発的な発生だけでなく、零距離射撃が特に求められる場合もあり、敵のバリアの内側に銃口を差し込んで発射したり、距離が開くと弾速が空気抵抗で損なわれるためほぼ零距離でなければ効果がなかったり、遠距離では狙えない小さな急所を狙ったり、長砲身砲の懐に潜り込んだり。この辺は設定、演出次第。

「零距離ですら効果がない」という敵の硬さを表現するための演出としても用いられ、直後に撤退を余儀なくされる場合も多い。


仰角零度?

その他俗語的な使われ方として、主に海戦で砲に仰角を付けず0度の状態で発射する射撃を指して零距離射撃と言われる場合がある。

出典はおそらくPoint-blank rangeを零距離と訳した事に由来すると思われ、使われ方も一緒なのだが、防衛省公式HPの同様の状況では直接(照準)射撃水平射撃という用語を使用しており、またPoint-blank rangeの防衛省公式訳は直線弾道距離(旧軍では直射距離とも)なのでこのような使い方は正式なものではない。


誤用

本来であれば榴散弾の射法に関する旧軍の用語であり、「創作における用法」は厳密には誤用と言える。

その訂正として「接射」がよく持ち出されるのだが、こちらは「素肌に銃口が密着した状態での銃創」を指す言葉からの派生であるからこれも正しくない。


そもそも現実に零距離での砲撃が行われることなどあり得ないのだから、零距離での砲撃を指し示す用語があるわけもない。

そのため「密着射(砲)撃」「超近距離射撃」「距離零射撃」等の言葉を使うべき……なのであろうが、「本来の用法」は既に絶滅しているのだし、創作作品で細かいことを気にしても仕方ない。

「零距離射撃」という語感の良さ、分かりやすさなどから、どれだけ訂正しようが今後もこの用法は発生し続けると思われるので、フィクションではこういう用法なのだと割り切った方がいい。


自分の作品に対する批判を避けたい場合は「この世界観ではこの射法を零距離射撃と呼んでいる」とでも注釈をつければいいだろう。


関連項目

接近戦 銃撃戦

零距離射撃

この距離ならバリアは張れないな!

零距離ミサイルマイト

ヒートトリガー

デンドロビウム



誤用


外部リンク

  • 労苦体験手記 「支那事変 野戦重砲兵の初陣」

http://www.heiwakinen.jp/library/shiryokan/onketsu08.html

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