機体説明
『機動戦士ガンダム MS IGLOO』第2話の主役メカを務めるジオン公国軍の兵器。
戦車にモビルスーツ (MS) の利点を組み合わせることにより、地球侵攻作戦の要として試作された超弩級戦闘車両である。
モビルアーマーではなく、モビルタンクと呼ばれる独自のカテゴリーに属する。
本機はジオン公国が軍事力による地球制圧を国家戦略と位置付け、大気圏内用兵器としてマゼラアタック等のAFVを開発する中で、要塞やビッグトレー級陸戦艇のような戦術目標を攻撃する超弩級戦車として宇宙世紀0072年に開発計画がスタートした。
当初は核融合炉と巨砲搭載の超弩級戦車として開発が進められていた(この時点で腕などの搭載は考えられていなかった)が、宇宙世紀0074年のザクIのロールアウトにより、汎用性の低い本機はその存在価値が疑問視されるようになった。
その疑念を払拭する為に開発計画の見直しを余儀なくされ、MSのような上半身やMSの兵装を流用可能なマニピュレーターを増設するなどの高性能化が進められた。
その結果、宇宙世紀0077年に本機が完成する。
実用化へと向けて急速に完成度を高めるMS開発からの影響は大きく、本機はモノアイやショベル・アームユニットを採用し、さらに試作後期段階ではザクⅡのマニピュレーターを流用する事で、MS用火器の使用も可能としていた。
装甲車輌としては破格ともいえる巨体を誇りながら、ほぼ全てを搭乗員1名のオペレートで賄えるという点でも極めてMS的であると言えよう。
これらを利用したモビル形態と呼ばれる半MS形態に変形することで、より高い位置から目視、射撃が可能になり、加えてある程度の対MS接近戦闘もこなすことができた。
ただし、この状態では車高が増し、特にコクピットの被弾率が上昇するというデメリットもある。ただし左右に関しては側部に防弾用装甲があるため防御力はほとんど低下しない。
上半身がターレットそのものとなっている為、主砲の旋回はモビル形態にのみ限られ、通常形態では無砲塔の自走砲や駆逐戦車同様の状態となる。
そのため戦場で相対した地球連邦軍兵士からは当初「巨大な自走砲」と呼ばれていた。
主砲である30cm砲はメガ粒子砲の登場により一線を退いた宇宙戦艦のものを転用したもので、最大射程距離32 - 35km、ミノフスキー粒子散布下においても有視界で20kmの長距離砲撃が可能。
戦局に応じて各種砲弾を必要に応じて装填、射撃が可能となっている。なお、モビル形態では砲身の位置が上がるために重心が上昇し、横向きに発砲すると反動で車体が傾くほどであった。
この大口径砲の威力と核融合機関による高出力とが相まって、本機は地上制圧用の戦力として当初大きな期待がかけられていた。
野心的なコンセプトが多く投入された本機であったが、ジオン軍の地上戦術に対する錯誤は現実の地球進攻に直面する前に是正される事となり、一年戦争の開戦以前の宇宙世紀0077年にサイド3と月で行われていた運用試験は中断。
本機の評価は不採用と確定。
量産・制式化されないままモビルタンク計画は終了した。
制式化されなかった大きな理由としては、同じく地上運用を目的として新開発されたマゼラアタックの数倍の莫大なコストがかかることから、大量生産の可能なマゼラアタックを採用したという説が有力である。
実のところ、本機が期待された地上制圧の目的は、MSとマゼラアタックの連帯運用により十分に賄えるものと判断された事も大きく影響している様である。
そして戦況に応じて兵装を自在に選択できるMSの戦略的価値が高まり、多くの戦車兵がモビルスーツパイロットとして転科してしまったことも、本機の重要性低下に拍車をかけてしまった。
結局、本車はガウ攻撃空母やマゼラアタック同様、ジオン軍が机上のシミュレーションで開発した一連の理論先行型地上兵器であったに尽きるだろう。
結果として唯一試作された機体は開戦より数ヶ月後の宇宙世紀0079年5月9日、膠着した戦況を打破するため実戦投入された。
名目上は再評価試験だったが「試験終了後は回収せず、そのまま現地配備」という指令は、実地試験の名を借りた事実上の使い捨て処置に等しいものであった。
メタ的な評価だが、人型兵器が出てくるアニメでよく出る「同じ技術で戦車作ったほうがよっぽどコスパがいいし人型は無意味」という無粋な意見に対する宇宙世紀の回答ともとれる。
しかし、長距離砲戦用というコンセプトと機体シルエットの一部にザメルとの共通点があるなど、モビルタンク計画自体は廃案となるも、本機の部分的要素、資材等はMSに統合されるかたちで後続の機体に受継がれていったようである。
本機を起点に、数々の地球用モビルアーマーの開発へと昇華されたという解釈も出来るだろう。
また、紆余曲折を経た中で結果的にそこに辿り着いたものではあるが、戦況に応じて形態を使い分ける宇宙世紀の歴史上で初の可変機動兵器というコンセプトも特筆すべきものである。
『MS IGLOO』の登場メカの多くは第二次世界大戦中のドイツで構想や試作された兵器をモチーフとしているが、ヒルドルブの元ネタは超巨大戦車「ラーテ」と見られる。
なお、ラーテは「1000t級の超巨大戦車」として構想されていたのだが、ヒルドルブの設定上の重量は「220t」である(全長はヒルドルブもラーテも35m)。
よく指摘される事ではあるが、『ガンダム』に限らずロボット作品のメカが現実に即するとあまりにも軽過ぎる事が分かるだろう。
劇中における活躍
劇中では、ジオン公国軍の戦車兵であるデメジエール・ソンネン少佐がテストパイロットを務め、再評価試験の名目で連邦軍に鹵獲されたMS-06による部隊と遭遇戦に突入、テストパイロットの技量も相まってそのことごとくを撃破するが、最終的にヒルドルブは大破、ソンネン少佐も戦死している。
オリヴァー・マイ技術中尉は本機の試験報告書を『過去の不採用評価を払拭せしめたものと信じる』と結んでいる。
ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション CodeFairy』においては上記の試験報告書からヒルドルブが投棄されていることを知ったノイジー・フェアリー隊が、連邦軍の物量に対抗する装備強化のために本機の30サンチ砲を回収している。
その後、ノイジー・フェアリー隊メンバーのミア・ブリンクマン技術少尉がみずからのプランをもとにドム・トロピカルテストタイプをベースに本機の砲塔部分を再利用した機体「ドム・ノーミーデス」が作られた。
尚、漫画『機動戦士ガンダム0083 REBELLION』では機体下部の駆動部が脚部に変形するように改造されたヒルドルブが登場している。
関連動画
ゲーム中でのヒルドルブ
本来はガンダムやザクの倍近いサイズなのだが、ゲームによっては当たり判定などの都合上サイズダウンされていることもある。
ターゲットインサイト
イグルーで唯一の参戦。
連邦編でのミッションに出現する他、ジオン側でも購入して実戦で使うことが可能。
変形も可能だが、変形した所で戦車や航空機を落とす程度の低レートのザクマシンガンが使えるだけ。
その代わり砲撃の威力は随一、というよりそれにステータスを極振りしているロマン性能。
Gジェネレーション
ジオン系タンク型機体の終着点の一つとして登場。系列としては砲撃機体でありながら、格闘もこなせる万能機体。
中でも装弾筒型翼安定徹甲弾は射程・威力がズバ抜けており、位置取りを調整しながら戦えばコレ一つだけでも十分戦える(消費ENがネックだが)。
戦場の絆
遠距離カテゴリーの機体として参戦。陸戦強襲型ガンタンクと並んで、かつては各軍唯一の可変機だった(後に連邦にデルタプラス、ジオンにガザDが実装されたが、それぞれを見比べれば分かるように使い勝手は全く違う)。
また、砲撃系武装の中には手動で射角を調整できるものもあり、これは現時点では絆において唯一、ヒルドルブだけが可能な操作となっている。これによりノーロック砲撃が簡単に行えるほか、拠点をロックオンした後にMSより少し背の高い遮蔽物に密着して最大射角の砲撃を連発し拠点を攻撃しやすくする、最低射角をキープして着弾までの時間を短縮する、不規則に射角を変えてキャッチ戦術をやりづらくする、といった芸当もできる。
また、敵機をロックオンした際に、かつての狙撃カテゴリーと同様にスコープモードを展開する武装も存在する。本格的に戦車の戦いを体感したいと思うならばやってみるのも一興だが、ゲームのシステムやルール上、味方のこともよく考え、自分の技術や状況に合わせて使うようにするのが一番だろう。
機動戦士ガンダム エクストリームバーサス
プレイアブル機として、ヅダと共に同シリーズ無印から参戦。コマンドによりモビル形態とタンク形態を使い分ける、中~遠距離での戦いを得意とする機体。ロックオン適正距離は低コスト機どころか全機体の中でも屈指の長さで、特にタンク形態のでは全機体の中でもトップクラスの性能を誇る。
モビル形態ではメイン射撃のザク・マシンガンと、ショベルアームや主砲による射撃と同時に行う突進などで戦う。この突進は主砲を撃った反動で相手に機体をぶち当てるというものだが、主砲から放たれる弾にもしっかりと当たり判定が存在し、誘導もしているため、場合によってはものすごい軌道で飛んでいくこともある。咄嗟に、かつ適切に撃てれば不意討ちにも使えそうだが、実用性は高くはない。コムサイに引っ張ってもらう形でのジャンプは可能だが、上昇速度は全機体で最低。空中戦は何があっても…というのは言いすぎだが、可能な限り避けたいところ。
タンク形態では、格闘攻撃が一切使えなくなり、そのコマンドが弾種の切り替えに置き換わる。モビル形態と同じサブ射撃の30cm(サンチ)砲の他、格闘ボタンで切り替わる焼夷榴弾・APFSDS弾・榴散弾を使い分けて戦う。また、ジャンプボタンでの動きが超信地旋回に置き換わるため上昇はできなくなるものの、これや各種射撃を織り交ぜることで曲げ撃ちやブーストの瞬時回復も行える。
どちらの形態でも共通して使えるのは、サブの30cm(サンチ)砲と誘導切り効果のあるスモークディスチャージャー(要は煙幕)、そして何故か原作では(連邦に鹵獲されていたため)敵対していたザクⅡをレバー下入れサブで呼び出せるアシスト。覚醒技は超信地旋回しつつ大きく移動し、焼夷榴弾を連射するもので、移動速度もかなりのもの。
あらゆる面において独自性が非常に高く、使いこなすには尋常ではない熟練を求められる。しかしながら極めれば相応に長く付き合えて、他にない強みを発揮してくれる職人気質の人向けの機体である。
450コスト支援機として参戦。陸戦強襲型ガンタンクに次ぐ変形機となるが…
移動しながら撃てる強よろけ、当たったら必ずダウンする格闘、誰にも止められない変形などぶっ壊れであった。今は弱体されて落ち着いてるが、猛者が乗るヒルドルブは止めるのが非常に難しいが慣れてないと簡単に狩られてしまうなどプレイヤーによって強さが大きく変わる機体である。
機動戦士ガンダムオンライン(サービス終了)
ジオン軍の300コスト機体として実装。連邦軍の陸戦強襲型ガンタンクと同様に初の可変機として実装された。
武装は原作に忠実であり、重撃機としてメインの武装が30センチ砲に集約されており、持ち替えによる攻撃不可時間がある中でほとんどの武装が持替無しで撃てたため、瞬間火力に優れていた。
また、アーマー値(他ゲームで言うところのヒットポイント)が最高クラスであり、また戦車ということもありダウンしないため、撃破されにくい火力機として期待されていた。
出撃時にはモビル形態だが、変形でタンク形態になることで速度上昇とMS部分が格納されることで当たり判定を小さくする恩恵があった。(ザクマシンガンやショベルアームが使えなくなるデメリットがあったが、問題はなかった)
ただ、ほとんどの武装が単発武器であり、尚且つ爆発属性のため、至近距離での射撃や友軍誤射による自爆ダメージが発生しやすく、なにより、横幅はジム3機、奥行は7機分という圧倒的な面積を誇るために被弾率は高く、生存率は高くない。(後にナイチンゲールやサイコ・ザクなどの大型機が実装されたが、それでもヒルドルブのほうが大きい)
なにより、対空戦闘ができる武器がないため、上空からの攻撃に対しては無力だったので、火力にロマンを感じても、それ以外が弱すぎたため、使用者は少なかった。
ただ、一部の使い手は最大火力を敵陣に叩き込んだり、格闘機に対するメタ武器のネットガンを持っていたこともあり、暴れまわる格闘技を拘束して勝利に貢献するなど、ひどく乗り手を選ぶ機体ではあったが、サービス終了まで戦場でひっそりと戦い抜いた。