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ゲム・カモフ

げむかもふ

ゲム・カモフ(GM Camouf.)は、漫画『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』の1エピソード「蝙蝠はソロモンにはばたく」に登場する架空の兵器。 ジオン公国軍のモビルスーツ(MS)。
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鹵獲機体ゲファンゲナー・ゲムを含め、ソロモン宙域において運用せし本機体は

連邦軍機RGM-79との誤認率が高いことを確認

それゆえ同士討ちの危険性が高確率で発生することが予想される

このような兵器の開発の意義を問う


宇宙世紀0079年12月14日 オリヴァー・マイ技術中尉


機体データ編集

型式番号抹消
所属ジオン公国軍技術本部・第603技術試験隊
開発ジオン公国軍
生産形態少数生産機
全高17.9m
本体重量51t
ジェネレーター出力976kW
スラスター総推力47,800kg
携行武装135mm対艦ライフル、120mmマシンガン、バズーカ、対艦成形炸薬弾、シュツルムファウスト、チェーンマイン、シールド

概要編集

地球連邦軍のMSジムとして誤認させる為だけに製造されたジオンのMS。

名称の綴りは『GM Camouf.』。GM(ジム)をドイツ語読みした「ゲム」に、同じくドイツ語のカモフラージュを略した言葉の組み合わせであり、その名の通り『偽ジム』と呼べる機体である。


武装はヅダで試験されていた135mm対艦ライフルの他、ザクマシンガン、ザクバズーカ、スパイクシールド。実戦投入の際はそれぞれがビームライフル、ハイパーバズーカ、ガンダムシールドに似せた、ハリボテじみた改造を施したうえで装備されている。なお、ランドセル左のビームサーベルに見える棒は外見を装うためのダミーである。


電磁波を阻害するミノフスキー粒子散布下ではレーダーが使用出来ず、有視界での戦闘が前提となる事から、外見による欺瞞を用いて連邦軍艦隊に接近・潜入・後方撹乱する事を主な目的としている。作中では、偽装によって相手に近づいた上で友軍機と誤認させ、油断させた後に襲い掛かって破壊している。

この運用方法から本機は正式な型式番号を与えられておらず、その特殊な活動の為すべての公式記録は削除されている。

生産数も少なく、鹵獲したジム(通称ゲファンゲナー・ゲム)との混成で用いられている。

また、この機体のパイロットは、地球連邦軍から亡命したアースノイドの義勇兵によって構成されている。彼らは元から整備もろくに行われていない旧ザクを使用する「捨て駒」的な扱いを受けており、パイロットに関する公式記録も削除されている。


まったくの新規開発ではなく原型となるMSが存在するようなのだが、機体の前面はその判別が困難なほど全身に渡る改造が施されており、後方も股間ブロックで左右に分断されたスカート周辺やスリムな脚部はヅダを、ランドセルから伸びる動力パイプはザクⅡグフを彷彿とさせるなど流用元がハッキリしない。偽装用の装甲も強引にボルトで固定されている即席感の漂うものであった。

元々内装部品の容積が大きくなりがちなジオン系の流体パルス駆動方式において、ジムに似るまでシルエットを絞るということは装甲を極限まで削減していることを意味し、耐弾性能は望むべくもなくパイロットの生存確率を著しく低下させている。

一方で、この無茶な装甲削減は機体の軽量化による運動性の向上という副次効果を生み出している。極限まで装甲を削り回避性能を重視するというスタイルはグリプス戦役期には当たれば必殺のビーム兵器が主流となっていく中で、百式のように実用的な意味を得ている。ただしあれらは初めから回避を前提とした設計思想となっているため、あくまで副次的なものであり、機動戦ではなく接近しての奇襲が用途であるゲム・カモフの構造が後の時代の設計思想に影響を与えた可能性は低い。


作戦行動を行う際は僚機のゲファンゲナー・ゲム共々識別信号を無効にしているため、これについて追及された際は通信での会話によって誤魔化す必要がある。

また、その形状から友軍からも攻撃される危険性も伴っている。その為、作中でもパイロットのエンマ・ライヒ(ライチェ)中尉は、この機体を「戦場の狂気そのもの」と呼んでいた。


作中では欺瞞効果により連邦軍艦船を撃沈し、ジムとの誤認率が高い事を証明するものの、事情を知らない友軍のムサイから攻撃され機体は大破、パイロットのライヒ中尉も戦死している。


ライヒ中尉は機体に蝙蝠をあしらったエンブレムを描いており、これが、題名「蝙蝠はソロモンにはばたく」の由来となっている。

このエンブレムは、連邦を裏切り、ジオンからも認められない自分たち義勇兵を、イソップ寓話の一つ『卑怯なコウモリ』に重ねたものであり、その末路を暗示するものでもあった。


法的な危うさ編集

当時のジオン軍に限らず「敵の姿に似せて騙せば簡単に奇襲できる」という発想は誰でも思いつくものだが、一般な価値観に照らせば卑怯卑劣の誹りは免れない

また、仮に卑怯もラッキョウもないなどと開き直ったとしても、そのような作戦は野放図にやれば敵味方どちらにも致命的な混乱が生じるのが判り切っている。劇中のゲム・カモフの末路は正にその典型である。


現実の国際法においては、ジュネーヴ諸条約第1追加議定書(1977年)の第37条(背信行為の禁止)と第44条(戦闘員の識別義務)に該当するものであり、第39条では『中立国その他の紛争当事者でない国の旗、軍の標章、記章又は制服を武力紛争において使用することは、禁止する』と明示されている戦争犯罪である。

おおまかな言い方になるが、正規の戦闘員として活動するなら制服やエンブレムなどで所属を明示する必要があるし、「無害な存在や、相手組織の姿に見せかけて戦闘する」とか、嘘の降伏や亡命の宣言などで相手の信頼を裏切り(背信して)攻撃を止めさせるといった行為をしてはならない。

これらの行為が明らかになれば戦争犯罪として訴追され、国際刑事裁判所(ICC)で重い処分を受けることになる。


宇宙世紀において現実の国際法がどのように扱われているかは明確ではないが、設定資料集に掲載されている3Dモデルでは連邦宇宙軍の標章(EFSF)がマーキングされており、このように所属を偽って奇襲を仕掛けることを「戦争犯罪」としている宇宙世紀の作品も多い(後述)。


ゲム・カモフの運用はこうした条件にモロに該当しているため、仮に表ざたになった場合、関係者が裁判にかけられ重罰を言い渡される可能性はかなり高いと考えられる。

特にライヒ中尉は最後の攻撃の際、亡命の意思を見せて相手の攻撃を封じたうえで騙し討ちを行っているため、生き残っていれば悪質な背信行為として重罪なのでは…という推測も見られる。


一年戦争における所属偽装編集

一年戦争時において、鹵獲した兵器を使って敵軍に対し奇襲を仕掛ける描写がいくつかの作品で確認できる。


上の項目でも述べたように、宇宙世紀にもジュネーヴ条約と似たような価値観や法整備があるようなので、余程やむを得ない状態だった場合を除けば、基本的に悪質な背信行為として訴追や処罰の対象になると考えられる。

ただし、戦争犯罪は平時の刑事法と違い量刑が定められていないため「故意性、不正行為の範囲、被害者の数、破壊の範囲、指導的地位」などを総合的に判断されることになるので、「所属をわからないようにしている」だけでどれほどの罪状になるかははっきりと言い切れない部分もある。被害人数や繰り返した回数、命令の出所による責任の所在などが絡んでくることになるだろう。


連邦軍編集

セモベンテ隊(OVA『機動戦士ガンダム MS IGLOO』)編集

第2話「遠吠えは落日に染まった」において、正規の連邦軍人であるフェデリコ・ツァリアーノ率いる連邦軍コマンド部隊「セモベンテ隊」が、連邦軍が鹵獲したザクの外見を変更せずに使用し、ジオン軍に誤認させる戦法で戦果を挙げている。小説版では一人の生存者も残さず、生身の歩兵に直接ザクマシンガンを撃ち込むなど、苛烈な戦法が描写されていた。

最終的にセモベンテ隊はジオン軍のモビルタンク「ヒルドルブ」と相討ちの形で壊滅を遂げる。


このザクは連邦軍が鹵獲したザクを研究・解析した後に、改めて戦力として投入されたものである。

IGLOOを含め、このようなザクによる攻撃が行われたのは主に連邦がMSの量産に入れていない時期であり、舞台も連邦が追い詰められていた地上でのことであった。

一年戦争終盤に宇宙で運用されたゲム・カモフの登場は、偽装機での戦闘という一年戦争の勢力の逆転を表しているとも言える。


なお、「鹵獲機を戦闘に使う」ことがすぐに戦争犯罪行為になるわけではない。

機動戦士ガンダム0080のイラスト集「MS ERA」では、盾にジオン軍章が描かれザク同様のグリーン系にリペイントされた鹵獲ジムの画像が掲載されている。

第二次大戦でもソ連、ドイツ、フィンランドなどが鹵獲兵器に自軍のマークを描き(友軍からの誤射を防ぐためでもある)、多数使用していた。

セモベンテ隊の場合、少なくともコクピット内のツァリアーノは連邦軍の軍服を着用しており、偽名を名乗ってもいないが、ザクにはジオン軍のマークをつけたままで、物資集積所の警備兵にあたかも味方であるかのように声をかけてから襲撃していたため、その点で「所属を偽った」と見做せるだろう。

同部隊のザクは通信傍受を防ぐために無線機を連邦製に換装するなどの改造が施されているため、現地で鹵獲した機体に緊急避難的に乗り込んでいただけ…という訳でもないのが見て取れる。

ツァリアーノのモデルにグライフ作戦を指揮したオットー・スコルツェニーが挙がる(顎の傷跡がそっくり)こともあり、やはり計画的な欺瞞作戦か。


研究材料として分析済みのザク、かつ無線機の乗せ換えまで済ませている上で、連邦軍カラーへの塗り替えやエンブレムへの書き換えなどが行われていないため、ツァリアーノ個人が好き勝手にやっているというより部隊ぐるみでの行動だったようで、この辺りは「上から偽装の指示が降りて来た」のか「現場のアイデアが採用された」のか等によって罪状も変わって来るだろう。いずれにせよ、これも明るみに出ればセモベンテ隊単独やツァリアーノ個人の責任という事にはならなそうである。


鹵獲ザクによる騙し討ち部隊(ゲーム『機動戦士ガンダム バトルオペレーション Code Fairy』)編集

第1話において、主人公アルマ・シュティルナーが所属するジオン軍の機密拠点「ティルナノーグ」の領地にザクⅡが侵入。アルマ率いるノイジー・フェアリー隊はザクⅡへ引き返すように勧告するが応答はなく、接近したアルマに対して警告無しに発砲しはじめる。アルマはザクのパイロットが味方ではないことを事前に察知し攻撃を回避し、同部隊のヘレナ・ヘーゲルは「鹵獲機を使った騙し討ちかよ!戦争犯罪ってやつじゃねーか、やることが汚え!」と憤っていた。その後、同じく鹵獲されたと思われるザクⅠ、ザクⅡが現れフェアリー部隊と交戦する。こうした鹵獲ザクによる騙し討ち部隊の情報は、ジオン軍内でも噂という形で流れていたようである。


上述の通り、鹵獲機を使うこと自体は戦争犯罪には当らない。所属を偽るか誤解させる事が戦争犯罪に当たるので、この場合は「ザクがジオン所属か連邦所属かすぐに判別できる外見だったか」が問題。


偽装チベによるグラナダ基地破壊工作(漫画『機動戦士ガンダム 黒衣の狩人』)編集

地球連邦軍の情報部であるサイモン・ヒューズが立案した作戦で、鹵獲したジオン軍の巡洋艦チベに大量の爆弾や電磁パルス弾を搭載し、航行不能を装い救助される形でグラナダ基地に潜入、その後チベを爆破することにより基地の機能を麻痺させ補給線を分断し、戦争を早期に終結させることを目論んだ。乗員はジオン軍の制服を着用し言葉の訛りにも気を払い、通信を求められた際も映像を使わず音声のみで会話するなど徹底していた。しかし、「黒衣の狩人」ことヴォルフガング少佐のムサイと接触した際に不審な点を見抜かれ戦闘に突入する。

また、この作戦には過去に民間船を盾にして攻撃し、ヴォルフガングに民間人殺しの汚名を着せた「エースダック」ことブランドン・ロウ中尉が参加しており、油断してチベに接近したヴォルフガングの部下の学徒兵を格納庫からの不意打ちにより一撃で仕留めている。


鹵獲ザクⅠによる偽旗作戦(漫画『機動戦士ガンダム FAR EAST JAPAN』)編集

敵軍に化けて軍事行動を起こし、「敵がやったように見せかける」のを偽旗作戦と呼ぶ。

同作では連邦軍の部隊から中隊ごと離脱した、骸骨の魔女(Death Witch)のエンブレムを掲げる部隊が行動に及んでいる。彼らは搭乗するザクⅠの額部分にジオンのエンブレムをマーキングしてジオン軍になりすましていた。

主人公であるランディ・メネンデス准尉、リンゼイ・シミズ軍曹、ゴードン・レノックス少尉がコムサイでニホンに不時着した際に、識別信号を出さずに接近し、警告無しの射撃によってコムサイを破壊する。ランディ達は既にコムサイから離れていたが、鹵獲ザクによってこれ以上の被害を出さないために部隊を追跡。その後、彼らがジオンのコロニー落としへの復讐として、鹵獲ザクで核兵器を使用し南極条約違反の罪をジオン軍に被せようとしていることが判明する。


ジオン軍編集

ジオン軍の偽装貨物船(漫画『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』)編集

エピソード『南海に竜は潜む』で、ジオン軍の偽装貨物船「フォルケッシャー号」の艦長デューラーとMSパイロットのギュンター・ローズマンが、過去に運用していた偽装貨物船と搭載機のザクⅠを用いて、ジオン軍の制海権内に侵入した連邦軍の貨物船から積み荷を奪っていた。この際、民間の貨物船を装って接近し、正体を現した後に敵対行為を行うという手法を取っている。


余談編集

ジオンが鹵獲したジムを実戦投入し、それが前線で「ゲム」と呼ばれているという設定は『MS IGLOO 603』のみで用いられている。

鹵獲ジムをジオン軍の公式記録上で「ゲファンゲナー・ゲム」としているのも本作のみである。


OVAであるIGLOOの、さらに漫画版にしか登場していないためマイナーMSと言えるが、ゲーム作品への登場とインパクトのある見た目と使い道からそれなりの知名度がある様子。

戦場の絆』ではレーダーで判別できるため見た目の偽装はそこまで役に立たないが、遠目にはジムっぽく見えるので見逃されたり、逆に混戦時には味方に誤射されるという原作のような話も見られた。

機動戦士ガンダムバトルオペレーション』シリーズでは偽装伝達装置によってレーダー表示を誤魔化すことが可能となっている。


関連項目編集

ヨルムンガンド ヒルドルブ ヅダ ゼーゴック オッゴ ビグ・ラング


ザニー…地球連邦軍がジオニック社から入手したザクのパーツを用い開発したMS。主にMSの研究、パイロット訓練用として使用。見た目はGMに近いが頭部はガンキャノン初期型のものを流用。中身はジオン系MS、見た目は連邦系MSという意味ではゲム・カモフと同様の機体。


パーフェクト・ガンダム南洋同盟サイコ・ザクマークⅡのフレームにガンダムのパーツを取り付けた機体。ジオン系MSが素体で相手を騙すという思想もそのままだが、こちらの装甲の一部や頭部などは本物であり、リユース・P・デバイスの恩恵も手伝い性能も非常に高い。


にせガンダム


パンター

バルジの戦いでグライフ作戦の為にM10ウルヴァリン駆逐戦車に偽装された車両が存在する。用途もアメリカ軍の目をごまかして敵地に潜入し、かく乱、奇襲する為の用途である。


機動戦士GundamGQuuuuuuX:ある理由から『敵対しあうどちらの勢力もジム(に相当する開発経緯の量産機)を使っている』という世界を描く作品。ある意味ゲファンゲナー・ゲムが正式採用され量産に至ったような事態が起こっていて、外見の偽装だけが存在意義であるゲム・カモフとは対照的な状況。

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