概要
漫画版『機動戦士ガンダム MS IGLOO 603』のエピソードのひとつ「蝙蝠はソロモンにはばたく」に登場。
人物
元は地球市民(アースノイド)で、本名はエンマ・ライチェ(ライヒはドイツ語読み)。
連邦側からジオン公国へと亡命した義勇兵の一人。
搾取や傲慢に明け暮れる地球連邦に嫌気が差したらしく、ジオンの思想に感銘してジオン公国へと亡命したが、そこで待っていたのは連邦時代以上の「地獄」だった。
元連邦市民…それもトーマス・クルツの様なスペースノイドでは無く生粋のアースノイドであった彼女を始めとする義勇兵達に対してのジオンからの信用は皆無に等しく、それでも少しは使い道があると兵士として利用されていたが、碌に整備もされていないボロボロな旧ザクで戦わさせられる等、完全に捨て駒の如き扱いを常に受けていた。
しかし、ライチェのモビルスーツパイロットとしての操縦技術は高く、第603技術試験隊に配属された際にもじゃじゃ馬のヅダを初見で乗りこなしている。
次々と仲間を失い、それでも戦いを続けたライチェに上層部から新型の試作MSゲム・カモフが与えられた。だが、ジムに偽装したその機体もパイロットの生存確率が考慮されておらず、友軍からの誤射も当然にありうるような「戦場の狂気」と呼ぶべき代物であった。
劇中の様相
ゲム・カモフのパイロットとしての任務の際に(描写から恐らく初出撃)地球市民時代の友人を殺害してしまう不幸に見舞われ、ジオン兵としての覚悟が揺らぐものの、総帥府の指令により第603技術試験隊に編入された後も着実に成果を挙げていく(ゲム・カモフ受領から603に入るまでの間にどの程度任務を行っていたかは不明)。
やがて、ジオン兵として生きていく覚悟を決め、第603技術試験隊のメンバーとも打ち解けたが、事情を知らない通りがかりの友軍に攻撃されあっけなく戦死。
自らの命と引き換えに、「ゲム・カモフの狙いである誤認率の高さを証明する」という皮肉な結果を生んだ。
なお、作中におけるライチェの行動が美談の様に描かれているが、所属を故意に偽り、見破られると亡命の意思を示しながらして戦艦の乗員を多数死傷させるなど、
彼女の活躍は現実の国際法では絶対に許されない「背信行為」で戦争犯罪による虐殺である。
簡単に言えば「救急車にミサイルを撃つ」位にやばい行いで、仮に生還しても戦争終結後に裁判にかけられれば銃殺刑は避けられず、生き延び続けるには脱走兵にでもなるしかなかっただろう。
現実の国際法が宇宙世紀においてどの程度有効なのかは不明だが、少なくとも所属偽装を戦争犯罪とする描写がある宇宙世紀作品が存在している。
そもそも彼女が作中で地球にいたころ連邦の正規兵であるのか、ジオンの正規兵と認められていたのかどうかすら明記されておらず、下手をすれば正式な型式番号がないゲムカモフと同様に捕虜の資格のない「傭兵」「便衣兵」扱いされていた可能性もある。
ある意味、南極条約における「捕虜の人権を守る」という条約内容を無視する行為よりも非道な仕打ちを受けたライチェの存在は、ジオン側の上層部がたとえ自分達に協力する義勇兵であっても、アースノイドの人権をいかに軽んじていたのかが垣間見えるものであるといえる(自分達に逆らう人間はスペースノイドであっても「コロニー潰し」によって虐殺している)。
しかしながら、本人も独断で敵に亡命を求めながら騙し討ちするという悪質な戦争犯罪を行っているので同じ穴のムジナで同情に値しないだろう。(現実の国際法では亡命の意思を示しているものを撃ってはならない)
余談
設定資料に掲載されたゲム・カモフの3Dモデルでは、「EFSF」と右肩にマーキングされているため悪質さが増している。
関連タグ
トーマス・クルツ:同じく連邦からの亡命者であるのだが、アースノイドであるライチェと違い、スペースノイドであった彼の扱いは、まさしく雲泥の差となっていた。
ケン・ビーダーシュタット、ユウキ・ナカサト:同じくサイド3以外の場所出身のジオン軍人だがこちらは地球では無く他のサイドから来た外人兵士。
機動戦士ガンダムアグレッサー:こっちではエンマ達とは逆にザビ家の独裁に反発して地球連邦軍に寝返った元ジオン兵士が主役の物語。